にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

#小説

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-3

一通り事情聴取が終わり、ようやく解放された頃には、すでに太陽は姿を隠す直前で、辺りは暗くなり始めていた。街灯にはすでに明かりが灯り、心なしか昼間よりも浴衣姿の人が多く見える。伊奈妻温泉街は、徐々に夜の姿へと移り変わろうとしていた。 事件を起…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-2

「ふざけんなよテメエ……誰に断ってそんなフザケタことしてんだ? オォ?」 人ごみの中から姿を現したのは、簡潔に表現するなら「ガラの悪い若者」だった。ロックバンドのメンバーのようなド派手な蛍光イエローの髪、片耳だけで十個以上は付いているであろう…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-1

「読んで字のごとく、志を創り出す。それがお前の名前に込めた願いだよ」 いつだったかは思い出せないが、ずっと昔……まだ皆本家が幸せな毎日を送っていた頃。学校の宿題で自分の名前に込められた意味について調べることになり、父親である源治に尋ねると、そ…

鎧さんと悪魔の姉妹 言い訳

久々にいつもの連載小説以外の作品をアップしてみました。 ちょいと機会があって書き始めたんですが、長さの割にはえらい時間がかかり、一応完成させたもののネタ的に同人ともオリジナルとも言えない(パクリ)微妙な感じになってしまったので、一時期お蔵入…

鎧さんと悪魔の姉妹-8

「え……?」 まだ呼吸も整っていない妹は、鎧の言ったことがほとんど飲み込めていないようで、小さく首をかしげるのが精一杯の様子だった。 それは当然だ。私もまだ、自分の身に何が起こったのか、鎧は何をしたのか、そして、何故鎧は自ら破壊されることを望…

鎧さんと悪魔の姉妹-7

「お姉ちゃん怒っちゃったじゃない。鎧さんのうそつき」 「面目ない……」 「謝ったって許してあげない」 「そんな! バラバラは勘弁して下され! 後生ですから!」 口を尖らせて拗ねる妹に、鎧はたまらず平謝りする。妹の説得に成功しスカートめくりの特訓を…

鎧さんと悪魔の姉妹-6

私はあの子とは違う。 背中に生えた翼を見るたびに、何度も言い聞かせていたことだ。 事実、私には一晩にして家畜を殺しつくしたり、巨大な鉄塊を投げたりする常人離れした力はない――いや、あるはずがないと思いこんできた。 (そう。私はあの子とは違う) …

鎧さんと悪魔の姉妹-5

鎧がいなくなってから、一週間が経った。 出会った当日に地下牢に置いてきたため、「出会ってから一週間」という言い方もできるのだが、私としてはさっさと記憶から抹消したいので、いなくなった事実を強調した。 いつも通り朝食を終えた私は、自室からほど…

鎧さんと悪魔の姉妹-4

「あ~あ、お姉ちゃん行っちゃった。次に会えるのはいつだろう……」 姉の背中を見送った妹は、しょぼんと肩を落としながら牢の中へと歩いて行く。 「でも、今日はお姉ちゃんがくれた面白鎧があるから寂しくないもん!」 かと思えば、鎧のほうを見てニコニコと…

鎧さんと悪魔の姉妹-3

剥き出しのレンガで造られた階段は、地下へ向かうにつれて明かりをともす燭台の数が少なくなり、闇が濃さを増していく。それは、罪人は闇の奥底で一生を終えるべきだという建築家の考えを示しているようだった。 どうしてもの用事がない限りは地下には行かな…

鎧さんと悪魔の姉妹-2

「いやいや本当に知らないって。あたしはスカートめくる鎧の幽霊なんてたった今初めて目にしたところだよ」 「証拠」 「あたしの瞳を見てごらんよ」 「……ドブネズミが住み着くくらい濁った色してる」 私の容赦のない一言に、オーソドックスなメイド服を着た…

鎧さんと悪魔の姉妹-1

北の最果てにあるその城には、二人の悪魔が住んでいる―― 暗闇の中で、私は目を覚ました。 毛布の温もりから離れるのが惜しくて、右手だけを伸ばして枕元にあるランプの明かりを点ける。ささやかな暖色の光が瞼に届き、私はようやく体を起こした。 窓の無い部…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-23

◆◆◆ 「すまなかった、シスター」 「……頭を上げてください、正義さん。私は大丈夫ですから」 「いや、今回の件は全て俺の責任だ。シスターを危険な目に合わせて……調査が不十分だった。すまない」 深々と頭を下げたまま、輝王は謝罪の言葉を重ねる。それでも、…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-22

だが、黒服の集団は一向に動きだす気配がない。 「ちょっと! 何やってる――」 怒りが頂点を通り越していたのだろう。地団駄を踏みながら叫んだ幸子だったが、その声が途切れる。 「…………あれ?」 彼女も気付いたのだ。現れた黒服の集団が、フェイク・ラヴァー…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-21

「さーて! 若様からエネルギーも補充してもらったことだし! バリバリ暴れるとしますか!」 肩の感触を確かめるようにぐるぐると回しながら前へと進み出た犬子は、両手を腰に当てて、薄い胸を逸らす。 彼女の前には、信じられないものを見たように立ち尽く…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-20

◆◆◆ 「……気に食わないわね」 屋敷中の人間を味方につけ、圧倒的な優位に立ちながらも、本性を現した長附幸子は不服そうだった。 「……何が?」 「あなたのその涼しい顔よ。場慣れしてるとでも言いたいわけ? 生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから、もっと切羽詰…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-19

――それが、命を奪うために放たれたものなら、だが。 「このタイミングなら!」 ナイトコード<ゲイボルグ>の発動によって放たれる高速の突進は、普通に考えれば標的とのあいだを真っ直ぐに進んでいるはずだ。しかし、その軌道を目で追えない以上、確実にそ…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-18

◆◆◆ ゲイボルグ。 ケルト神話に登場する英雄クー・フーリンが、影の国の女王スカアハから授けられた槍の名であり、その能力については諸説あるが、いずれも刺された相手が致命傷を負っている点では一致している。 その刃で貫かれた者は、確実に命を落とす魔…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-17

「……は?」 戸惑いの声は、響矢と城里どちらの口から漏れたものだったか。 2人の困惑をよそに、はっきりと告げた幸子は、不敵な笑みを浮かべながら続ける。 「ま、城蘭側が持ちかけようとしてる取引の内容なんて、大方見当がついてるけどね。資金と人員を提…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-16

◆◆◆ 会場内が万雷の拍手に包まれ、ステージ上のイルミナ・ライラックは恥ずかしそうに頭を下げた。恥じるような演奏ではなかったと思うのだが、あの謙虚さもまた人気の秘密なのかもしれないな、と響矢は思った。 「……素晴らしい演奏でした。土下座までして頼…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-15

(コード<SC・ブレイカー>。あらゆる防御系の特殊能力を破壊し、一定時間使用不能にする技です。直接的なダメージはありませんが、これで<ストーン>や<ボム>が効くようになるはず) <SC・ブレイカー>。防御や回避のために用いられる術式や魔法・…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-14

(……とはいえ、周りの機械を壊さないように<SC・ボム>の威力を抑え目にしちゃいましたから、期待したほどのダメージは見込めないかもしれません。こないだも威力最大の<ボム>を二発食らわせたのに仕留められなかった<ギガンテック・ファイター>がい…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-13

(治安維持局の捜査官……!? なんでそんなやつがここで出てくるんですか!?) 城蘭金融の社員や、雇われたガードマンならまだ話は分かる。だが、現れた術式使いの男――輝王正義は、治安維持局の人間であることを明かした。嘘をついているのでは、という考え…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-12

貧しい家庭に生まれた犬子は、子供を育てる金銭的余裕がなかったせいで、すぐに孤児院へと預けられた。両親の顔は思い出そうとしても思い出せない。 犬子が預けられた孤児院は、表面上はごく普通だったものの、目の届かない裏では職員が子供たちに暴力を働く…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-11

城里が会社名を口にした途端、傍らに立つ犬子が緊張感を高める。彼は、響矢が人材派遣会社を経営していることを知っている。 「……なるほど。こちらの情報はすでに筒抜けってことですか」 「全てではありませんがね。この業界でやっていく以上、直接の関係は…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-10

◆◆◆ 夜がもたらす暗闇の中で燦然と輝く白亜の宮殿は、ここが科学の発展した近代都市、ネオ童実野シティであることを忘れさせるほどの存在感を放っていた。 シティの郊外に建てられた宮殿――城蘭金融本社は、社屋というよりも社長本人の豪邸といった趣が強く、…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-9

「それでね、響矢君。依頼のことなんだけど……」 「あ、はい」 とりあえず、過去をほじくり返すのは後回しにする。 「借金の形に持っていかれてしまったカードを取り戻してほしいとのことでしたね」 「そうなの」 幸子は神妙な顔つきになり、俯きながらため息…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-8

「時間は……3時15分前か。十分だな」 右手首に巻いた安物の腕時計で時刻を確認した響矢は、改めてカフェ・カナコに向かって歩き始める。 「……すっごい今さらですけど、依頼者と会うのにその服装でよかったんですか?」 すると、響矢の頭から足先までを胡散…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-7

「うーん……種田さんと西岡さんの派遣先は逆にした方がいいかもしれないな」 「何か問題が?」 「問題ってほどじゃないんだけどさ。種田さんの派遣先は奈良島組だろ? あそこは必要以上に内部に立ち入られるのを嫌う傾向があるから、気配り上手な種田さんの親…

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-6

「……2人とも、よくもまあ朝っぱらからそんなもの食べられますね」 食卓についた犬子が、げんなりとしながら言う。こんがりと焼かれたトーストをぼそぼそとかじっているが、食べるペースは明らかに遅い。 「若の仕事は頭脳労働が多いからな。糖分はしっかり…