にわかオタクの雑記帳

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アークナイツ 【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】 感想 ただ、最大限の感謝を【ネタバレ有】

 

積み上げた仮面は、悲しみの記憶であり、無力さの象徴。
しかし、それは。
彼女の「覚悟」を支える、礎でもあるのだ。

 

 

以前に書いたかもしれませんが、アークナイツのアニメ化を知ったとき、期待と同程度の不安があったんですね。
原作がゲームのアニメ化、特にソシャゲは非常に難しい。
ひとたび舵取りを間違えれば、新規層からは「つまらなくない?」とケチをつけられ、原作ファンからは「原作の面白さが全然伝わらない。もっとこうしろ」と批判される。
自分はソシャゲ原作のアニメを深掘り批評できるほど本数を見ているわけではないのですが、新規既存共に好評な作品は、原作シナリオを大幅にアレンジしている例が多いんじゃないかという印象があります。
退屈な部分はカットする、もしくはアニメ専用にほぼ作り直しレベルの改変を行う。
一方で、キャラクターは原作のイメージを損なわぬよう大切に扱い、出番が偏らないよう配慮する。ゲームで人気だからといって贔屓し過ぎない。
こうした「広く浅く」受け入れてもらえるような作り方が、ソシャゲアニメにとってひとつの正解なんじゃないかと思います。

 


そうやって諸々を考えていくと、アークナイツはかなりアニメ化に向かない作品だった気がします。

 

・特殊な世界観に数々の固有名詞。難解な言い回し。
・作品の雰囲気もシナリオ自体もひたすら暗い。
・戦闘が集団戦メイン。
・人気キャラのほとんどがメインシナリオに絡まない。登場しない。
・主人公が後方援護タイプ。

 

一番最後の項目が特にネックで、ドクターの指揮能力の高さを映像で表現するのって至難の業だと思うんですよ。
分かりやすく戦場に飛び出して行って華麗に誰かを助けてもいけない、しかし後方でぼったちさせているわけにもいかない。
シナリオ中発言する機会は少ないものの、がっつり主軸に絡んでいるので存在を消すわけにも描写を薄くするわけにもいかない。
ソシャゲにありがちな色んなキャラから好き好きアピールされる要素もかなり薄いし、メインシナリオ中にはほぼ皆無。


な……なんて扱いの難しい主人公なんだ……ワルファリンにドーピングしてもらってムキムキになってレユニオンを蹴散らしていくサクセスストーリーの方にしたほうがいいんじゃと考えてしまうレベル……
それは冗談としても、ドクターが登場しないイベントシナリオ――(コラボだということを考えないようにして)初見にも優しく分かりやすくテラの厳しさも描いてくれるオペレーション・オリジニウムダストや、雰囲気が(アークナイツにしては)明るく、水着でサービスシーンもばっちりな密林の長辺りを映像化した方が、より新規層を取り込めるんじゃないかと、素人ながらに考えるくらいには不安でした。

 

 


放送日が近づくにつれて続々と情報解禁され、順当にメインシナリオを描くこと、全8話構成であること、ドクターがちゃんと喋ることを知るにつれ、何か不安の方が割合を占めるようになりました。
今でこそアークナイツの世界観やシナリオにどっぷり浸かっている身ですが、グローバル版のサービス開始日に初めて触ったときは、ストーリーにさっぱり惹かれなかったんですよね。
物語が始まっていきなり敵地からの脱出戦、乱れ飛ぶ固有名詞、続々と現れるキャラクター……
「一回腰を落ち着けて説明してくれないか? たぶん理解できないけど」と言いたくなるような情報の渦に、これはついていけないと早々に離れました。
それを、ゲームよりも遥かに短い尺しかないアニメで? しかも他作品よりも少ない8話で? 普通に無理では?

 

 

 

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……そんな杞憂を、全部吹き飛ばしてくれたアニメ化でした。
ありがとう……本当にそれしか言葉が見つからない……

 


早々に二期決定しましたが、「このスタッフの方々に任せれば安心」と不安ゼロの期待MAXになりましたね、ええ。


一番に感じたのは、とにかく「原作を大事にすること」と「アニメから入った人への配慮」のバランスが絶妙だったこと。


原典の雰囲気を大切にしつつも、その中で最大限アニメ組に伝わりやすいような表現、構成を組み立てていく。
説明すること、やらなければならないことが多い以上、どうしても説明不足になってしまい、予備知識がないと置いてけぼりになってしまうだろうストーリーの中で、脱落する人が少しでも減るように細かく細かく配慮していたのが、ゲーム勢である自分にも伝わってきました。
その上で、決して単なる「モブ」ではない名もなきキャラクターたちの描写や、ロドス艦内で過ごすオペレーターたちのチラ見せ等、原作ファンにも嬉しい目配せも忘れない。これ以上無いと言ってもいいくらい、理想的なアニメ化でした。

 

前述の「広く浅く」ではない、あくまで原作に沿いながら、それをアニメという別媒体で出力するために解きほぐし、再構成していく。原作ファンが夢見る形に近づけつつ、間口は出来る限り開いて。

 

あくまで個人の意見にはなりますが。
このアニメを見て惹かれるものがなければ、原作のシナリオも肌に合わないからプレイをオススメしない、もしくは(勿体ないけど)スキップしてゲーム部分だけを楽しんだほうが良い。そう言えるくらい「アークナイツ」という作品の入り口として、最適なアニメでした。

 

 

 

 


トラウマ……と表現すると過剰かもしれませんが、アークナイツアニメを8話まで見終えるまで「良かった」と言い切れない大きな懸念がありまして。


それは、「露骨過ぎるファンサービスを盛り込む」こと。


以前、グランブルーファンタジー、略してグラブルがアニメ化され、その一期を見ていた時。
原作ゲームを触ったことはあったものの、シナリオはよく言えば王道、悪く言えばありがちで大した印象に残っていなかったのですが、アニメで改めて一から見直すと、予想以上に楽しめていたし、グランを始めとしたメインシナリオのメンバーにも愛着が湧いていたんですよ。
そのままストレートに終わってくれれば「良作だったな」と心中でうんうん頷きつつ、もしかしたら当時すでに触らなくなっていた原作ゲームを再開した可能性があったくらい、いいアニメ化だったんです。


ところが、一期のラスボスであるリヴァイアサン戦にて。
ゲームの人気キャラたちが何の脈絡もなく続々と登場し、助太刀してくれる流れを見て、一気に熱が引いたんです。自分でも驚くくらい白けました。
「そこはメインキャラ達だけで乗り越える場面じゃないの?」と脳内ツッコミをした後、グラブルアニメに対する感情が反転したのを今でも覚えています。
仲間たちが助けに来てくれるシチュエーションはむしろ好きな方なんですが、納得のいく理由付けがないとただの水差しにしかならない。
この経験は随分時が経った今でも、自分の中に小さな傷を残しています。

 

 

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当時の感想記事。5年前……5年前!?

 

 


だから、三章ラストのスカルシュレッダー戦が怖くて仕方なかったんです。
原作を改変したとして、ニアールやドーベルマン教官が救援に来てくれるまでは、まだ許容できる。
シルバーアッシュやらソーンズやらスルトやらサリアやら、原作の強キャラたちがいきなり現れてレユニオンをぶっ飛ばし始めたらどうしようかと。
7話まで見て「ここまで原作を大事にしてくれてるんだからそんなことしないだろ」と信じつつも、最後の最後まで疑念を拭えなかった。「メインシナリオに絡まない人気キャラが大勢いる」、そのたった一つの共通項が、ずっと棘を刺していた。


だから、原作通りに、いや、原作よりも湿度高めで三章を描き切ってくれて、最後の不安の種が消えました。結末を知っていてなお胸を締め付けられる描写。OPのささやかでしかし意地の悪い差異。


ああ、アニメ化してくれて良かったと、心の底から思えたんです。

 

 

 

 

 

 

二期はサブタイトル的に六章まで、と予想しますが果たして。
個人的には五章から加速度的に面白くなるし、フロストノヴァ関連のエピソードは涙を禁じ得ないシーンがたくさんあるので、六章を最後までやってくれることを期待しつつ、放送を心待ちにしたいと思います。