にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

ゼノブレイド3を遊んで「老い」を実感する

「老い」は、大なり小なり人に変化をもたらす。

 


肉と言えばカルビ、寿司と言えば大トロ、ハンバーガーにはコーラ!
若い頃は大好きだった食べ物を、年齢を重ねるごとに重く感じるようになる。
学生を終え、就職して社会人になったり、結婚して家庭を持ったり、または自分のように年齢にふさわしい振る舞いが出来ず焦りを覚えたり……
そうした環境の変化は、物事に対する向き合い方や、感性を変化させる。

 

 

 

 

もし、10年前の自分がこのゲームをプレイしていたら、どんな感想を抱いただろうか。
そんな「老い」を実感させてくれたゲームが、ゼノブレイド3でした。

 

 

以前から触れたいとは思っていたものの、なかなか手が出せなかった「ゼノブレイド」シリーズ。時間が出来たこともあり、意を決して最新作の3を購入。
1から順々にプレイした方が楽しめることは分かっていたのですが、さすがに全作ぶっ通しでプレイする気力はなかったことと、一応3から遊んでも概ね問題はないことを調べたので、一番興味を惹かれた3から手を出しちゃいました。
何故かというと、作品中で複数カップルが成立する作品好きなんですよ。ちょっと古いですがWORKING!!とか。
なので、「どう考えても3組の男女が最終的にイチャコラするんだろ!」と予想できる3をプレイしてみたかったんです。まあその甘い幻想は作中のあまりに過酷な世界に一瞬で砕かれるんですが。

 

ひとまずメインストーリーは最後までクリアしたので、良かった点悪かった点書いていきたいと思います。
ちなみに、ゼノブレイドシリーズは1、2、クロスどれも未プレイですが、ギアスとサーガは遥か昔にプレイしてます。

 

まず、ネタバレ(ほぼ)無しのシステム面から。


乱暴な書き方ですが、switchって同世代の他ハードと比べるとスペックで劣るというか、グラフィックの美麗さよりも、ゲームとしての面白さで勝負している印象があったんです。
それをゼノブレイド3は一気にひっくり返してくれた。
美麗かつ広大で、作りこまれたフィールドに圧倒され、そこに息づくモンスターたちの数や細かい挙動に圧倒される。
さすがにオープンワールドではないものの、そのままMMOに流用できそうなビジュアルは、素晴らしいの一言に尽きます。
若干処理がカクつくマップはあるものの、ゲームの進行を妨げるような重さはほぼ無し。
失礼ながら「switchでここまで出来るんだ……」と口を開けずにはいられませんでした。


MMOといえば、バトルシステムも「それっぽい」ですよね。
メインメンバー6人+ヒーロー1人の最大7人のパーティと、大小様々な敵が入り乱れるバトルは、各キャラクターの役割(ロール)、攻撃を行う時の位置取り、敵を行動不能にしてから繋げるコンボシステムに、シナリオ上でも大きな意味合いを持つ「インタリンク」、パーティ全員で総攻撃を仕掛ける「チェインアタック」等、とにかくやれることが多く、あれこれ試行錯誤するのが好きな人にはたまらない仕様になっています。
この辺の「最適解は自分で見つけよう」を提示するシステムは、キャラクタービルドに重きを置いた旧世代のMMOを彷彿とさせます。

 

 

が。


上記のゼノブレイド3の特色とも言える要素が、「老いた自分」には重い、はっきり言ってしまえば煩わしく感じてしまったんです。

 


確かにフィールドは綺麗で広いですが、探索して得られるゲーム内のメリットは(メインストーリークリア上は)無いと言っても過言ではなく、目的地にたどり着くまでの時間が苦痛に感じてくるように。
それに拍車をかけているのが、「バトルの長さ」です。やれることを多くしたせいか、ボスどころか雑魚敵も異様に固く、倒すまでに時間がかかる。
フィールド内の至る所にモンスターが配置されているため、少し歩いただけですぐ戦闘が発生。面倒なので逃げようとすると他のモンスターが引っかかってしまい、いわゆるトレイン状態になってしまうこともしばしば。こっちはそこに落ちてるアイテム拾いたいだけなんですけど……
通常フィールドのモンスターはある程度レベル差が開けば無視できるようになりますが、ラストダンジョンの雑魚敵は全部向かってくる。そしてラスダンだけにボス並みに固い。
もう敵に発見されたときのバシーンってSE聞くたびに、イライラを通り越して放心してました。雑魚にいちいちチェインアタックなんてやりたくないよ……
始めた頃は難易度ノーマルで頑張ろうとしてましたが、この仕様に気付いてからすぐイージーに下げましたね。こんな部分でプレイ時間水増しされたくないんじゃ。

 

また、フィールドに落ちているアイテムの収集を頼まれるクエストも、必要個数がやたら多く、落ちている場所はランダムかつ一度フィールドを切り替えないと再配置されない仕様なので、これまたストレスが溜まる。しかも倒した雑魚敵も同時に再配置されてしまうため、さらにやる気を削がれる。
中には推奨レベルよりも遥かに高レベルの雑魚敵が闊歩するフィールドに赴かなければ条件を達成できないようなものもあり、これを「理不尽や不親切」と感じるか「スリルがあって面白い」と感じるかで、評価が真逆になる気がします。

 


総じて、ゼノブレイド3のシステムは、良い点も悪い点も旧世代MMOを煮詰めたような作りだったというのが、正直な感想です。
中盤以降はバトルに楽しさを見出せなくなってしまったのが残念なところ。チェインアタックはBGMが最高にテンション上がる良曲で、ボス戦に限れば爽快で良かっただけに、FF14を連想させるような方向指定とか全部取っ払って、もっと大味にしてほしかったなぁと思ってしまいました。

 

 

 

これはイベントシーン終わりに急に現れたノアの尻のドアップ


続いて、シナリオについて。


ここからはメインストーリーエンディングまでのネタバレを含みますので、これから遊ぶ予定がある方はご注意下さい。

 

 


ゼノブレイド3で一番楽しめた点は、メインキャラであるノア、ミオ、ランツ、セナ、タイオン、ユーニ、そしてリクとマナナの旅を見届けられたことです。
シナリオ上での掘り下げはもちろんですが、フィールドを探索中に何かを見つけたら「あっちに何かあるぜ!」と言ってくれたり、天気や朝昼夜の変化に「雨かぁ」「もう夜かよ」と言及したり、戦闘中は騒がしい程に喋ってくれる。キャラの掛け合いには事欠かない。
休憩ポイントで休んでいるときは、ノアとミオが一緒に笛を吹いたり、ランツとセナが筋トレしていたりと、セリフは無くても仲良くリラックスしている様子を見せてくれる。
また、本作ではクエストの発生に「相談」というシステムが必要となっており、耳にした噂をパーティメンバーで話し合うところが見れます。一つの物事に対して各キャラの考え方やスタンスの違いが垣間見えるので、よりキャラクターに愛着が湧く。


出会いは敵同士、行動を共にしたのは成り行き上仕方なく。それでも旅を続けるうちにお互いを知り、認めあい、支えあうようになっていく。
その一連の流れに説得力を付与すると同時に、どうしようもない「エモさ」を重ねてくる。これをシナリオだけじゃなくてゲームシステムの至る所に組み込んでいるのは、ゼノブレイド3の素晴らしい部分だよなと強く感じました。

 

 

 

作中屈指の萌えシーン


特にお気に入りなのはタイオンとユーニのコンビですかね。


パーティの頭脳として理性的に常識的に振舞おうとするタイオンも、勢いや感情を優先しがちなメンバーと絆を深めるうちに徐々に染まっていき、苦笑いしながらも「君たちならこうするだろう?」「言っても聞かないだろうから仕方がない」と合わせてくれるようになる。メンバーの中では一番変化が分かりやすいキャラでしたね。なんだかんだでタイオンも理性より感情優先しがちなタイプで、愛されいじられキャラのポジションを不動としているところも好きです。マフラーをバカにされてキレるくだりは笑わざるを得ない。


そんなタイオンの相方であるユーニは、口が悪く喧嘩っ早い、ランツと同じく直情タイプのキャラが初見の印象でしたが、過去――再生される前の記憶が蘇り、メビウスに対して恐怖してしまう等、作中で一番「弱さ」を見せてくれたキャラ。ランツもそうでしたが、強がる人ほど自分の弱さを恥じ、隠したがる。


「恐怖に怯まず前に進むこと」はストーリー中のテーマとなっており、共に過去の恐怖に囚われながらも、それでも前に進むことを決めたタイオンとユーニは、アイオニオンでの旅を通じて最も印象に残ったコンビでした。恋愛方面では終始ユーニが上に立っていたのもポイント高し。

 

 

 

 

 


ゼノブレイド3のメインストーリーでは、「悲劇の上に成り立つ永遠」「未来へ進むことへの恐怖」「停滞する今より不確かな未来を望む」等、非常に青臭いテーマが、非常に青臭く描かれます。
誰だって、先に進むことは怖い。今が幸せなら、今を続ければいいじゃないか。
黒幕であるゼットの思想を、ノアたちは否定しません。やり方は間違っていても、その考え事体は間違いじゃないと。
ヨランやシャナイアを通じて描かれた「持たざる者の葛藤」も、明確な回答は示さない。
それでも自分たちは未来を望むと、メビウスが支配する世界からの脱却を訴える。
正しいと思って取った行動が、必ずしも正しい結果に繋がるとは限らない――


メインテーマに対する感じ方は、プレイヤーの世代によって大分異なったんじゃないかと、自分は思いました。
自分の前に無数に広がっていた道は、歳を重ねるごとに狭まっていき、いつしか選ぶことすらできなくなる。
選んだ時点では、その道が正しいかなんて分からないし、選んだ道が崖に繋がっていると分かっても、引き返すことはできない。
かと言ってずっと立ち止まっていても何も変わらないし、急に足元が崩れてしまうこともある。
自分が今どんな道を歩いているのか。どんな選択をしてきたのか。前を向いているのか後ろを振り返っているのか俯いているのか――
プレイヤーの立場によって、ノアたちに共感するのか、エヌの絶望に頷くのか、ゼットの思想に理想を見てしまうのか、感じ方が大きく変わると思います。


かくいう自分は、ノアたちが懸命に足掻く姿を見て「若いなぁ」としみじみ感じてしまい、老いを再認識する結果になりました。
ストーリーに入り込むのではなく、一歩引いた立場から見てしまう辺り、歳を取ったことを強く実感します。
もう、彼らと一緒に夢を見られる歳じゃないんだな、と。

 

 

 

 

 

「老い」を実感したもうひとつの点は、膨大な量のシナリオに対する感じ方でしょうか。
今回、自分はメインストーリーとヒーロー加入に必要なクエスト、そしてメイン6人の覚醒クエストのみをクリアし、その他のサブクエストはほとんど未消化のままクリアしました。
これは別にシナリオがつまらなかったわけではなく、単純に数が多すぎて辟易したからです。
ゼノブレイドはメインキャラだけではなく、各地に住むNPCそれぞれに人生があり、関係性があることを描いてくれます。
サブクエストはそんなアイオニオンという世界に暮らす人々の様子を描き、いわば作品全体の深掘りをしてくれるのですが、あまりにも量が膨大。1つのメインクエストをクリアしたら10個のサブクエストが発生する感じ。
これを「やり込み要素満点で嬉しい!」と感じるか、「やること多過ぎだろ……」と感じるかは人によって違うと思いますが、自分は元々後者の気が強かったのに、オッサンになったことでさらにその傾向が強化されました。


昨今、作品をオススメする際に「〇巻までは読んで!」「〇章まではプレイして!」といった文言をよく見かけますが、それに対しても「どれだけ時間かかるねん」と否定的な感情から入ってしまうんですよね。
「やり込み要素満載!」をセールスポイントだと感じられなくなっている。タイムパフォーマンスを言い訳にしてしまう。


本当に、嫌な歳の取り方をしたもんです。

 

 

 

 

 

最後に、個人的な好き嫌いの感想を。

 

まず、好きポイント。

 

シナリオのボリュームに比例するように、本作ではイベントシーン、カットシーンを眺めている時間が多くなりますが、巧みなカメラワークと演出力が随所に光っていたと感じました。そのまま抜き出せば映像作品として再構成できるんじゃないかと思ったくらいに。
特にバトルシーンではカメラを大きく、かつ細かく動かしてスピード感を際立たせており、この感覚を実際のバトルでも体感出来たらなぁと。勿体ない。
ボリュームがボリュームなので若干演出過多でくどく感じてしまう部分もありましたが、許容範囲内。
カットシーンの演出力は、物語を盛り上げることに一役も二役も買っていたと思います。


細かいところでは、ウロボロス体のデザインが、ゼノブレイド以前のゼノ作品を彷彿とさせるもので嬉しかったですね。ヴェルトールとかKOS-MOSとか。僕は未だにゼノサーガに登場するESアシェルがたまらなく好きです。
ゼノシリーズのSFファンタジーな世界観なりロボデザインは、自分の好みと非常にマッチしていて最高でした。いいぞモノリスソフトもっと性癖出していけ。

 

 

 

 

右が下記で言及するゴンドウ



次に、嫌いポイント。


ストーリー5話から登場する、シティ長老の娘で、ヒーローの一人でもあるゴンドウですが、このキャラがまぁーーーーーーーーーー好きになれなくて。
ノアたちに絡んできた初見の印象からかなり悪かったのに、特に改善することもなくそのまま重要人物のポジションに収まったので、大分プレイ意欲が削がれました。シャナイアの離反ってお前が何とか出来たんじゃねえのかって。まあ親が大分クズだったんで原因はそっちにあるかもですが。


5話の収容所脱出から6話って、この作品におけるひとつのクライシスポイントというか、ここまで仄めかすだけだったエヌとエム、そしてメビウスに関する謎が明かされ、囚われの身のままミオの寿命が来てしまい消滅を見届けることになり、そこからミオとエムが入れ替わっていた事実が明かされる怒涛の展開なんですよ。
その入り口部分である収容所のくだりでゴンドウが出てきて物凄いテンション下げられたので、イマイチ乗り切れなかったのがとても悔しい。
もしかしたらもっと心を揺さぶられて、それまでの不満なんか全部吹き飛ぶくらい感動したかもしれないのに、そうならなかった。冷めた気持ちの方が広がってしまった。
セナのサイドストーリーが実質ゴンドウとシャナイアの話だったことも、すっげー不満でした。セナはメインキャラの中でもちょっと掘り下げが足りないと感じていた分、余計に。これはゴンドウの覚醒クエストでやればいい話だろ……

 

 

 

 

 

総括すると、分かっていて注文したはずなのに、予想以上の特盛っぷりと味付けの濃さを味わうことになり、「若い頃なら完食できていたはずなのに……」と自らの老いを嘆きながら、半分くらい残してしまった感じでした。ゼノブレイド3。
日々の生活もさることながら、こうして「自分が好きなもの」で老化を感じてしまうのは、言いようのない虚しさを覚えます。

 

 

老いた根っこじゃ、充分な水分を吸い上げることは出来ないんだよ。
……悲しいけど、これが現実ってやつさ。