にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

#小説

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-8

寸前。 「――<ジェムナイト・パール>ッ!」 真珠の煌めきを持つ拳が、槍の一撃を押し返した。 (――<ジェムナイト>!? ってことは――) 予想外の攻撃に、<A・O・J ガラドホルグ・シグマ>が怯む。 「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」 その隙…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-7

「<トライフォース>!」 【創志LP2200→1700】 返しのターンで場を一掃――男が相当な実力者であることは、言わずとも分かった。創志は認識の甘さと悔しさで、ギリ、と奥歯を噛みしめる。 <A・ジェネクス・トライフォース>が消え、創志の場は空に。 <A・…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-6

(いや、落ち着け! 輝王が言ってたじゃねえか。<A・O・J>は、イリアステルの兵器のために利用されたって) 輝王は治安維持局上層部からの命令で、一度<A・O・J>デッキを手放している。後進育成のためのデータ収集が理由とのことだったが、裏でイ…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-5

「先攻はもらうぜ! 俺のターン!」 流れに任せてデッキからカードをドローしようとして、寸前で踏みとどまる。一ヶ月ほど前にルールの改定があり先攻プレイヤーは最初のターンカードをドローできなくなったのだ。 ゆえに手札は5枚。枚数に物足りなさは感じ…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-4

◆◆◆ カツン、と。 音をたてないように慎重に歩いたはずだったのだが、静寂に包まれた建物内では、わずかな足音もはっきりと響いた。 レイジ・フェロウが派遣した案内人によって無事にデュエルパレス内に侵入した創志は、人の気配を逃さないように神経を張り…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-3

◆◆◆ (……痛い目を見るだけじゃ済まない、か) 通信を終えた信二は、椅子の背もたれに体を預けながら、自分の言葉を反芻する。 (僕はむしろ、もっと痛い目を見るべきなんだ) 時枝探偵事務所のオフィスには信二以外の人影はなく、机の上に置かれたノートパソ…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-2

◆◆◆ 「あれが建設途中のデュエルパレスか……まじまじと見たのは初めてだが、相当デケエな」 星の光が闇夜に輝き、微かな冷気を含んだ風が吹き抜ける夜。人工の光に照らされたハイウェイの片隅で、双眼鏡から目を離した皆本創志は、感嘆のため息を漏らしながら…

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-1

悲鳴と慟哭が木霊する。 視界の端々で爆煙が上がり、瓦礫の破片が降り注ぐ。 炎の朱色、粉塵の灰色、そして血の赤に彩られた世界―― 「どうして……」 理不尽を覚えずにはいられなかった。答えはなくとも、問わずにはいられなかった。 「どうして……こんな……」 …

プラメモ短編後書きとモバマスSSうp報告

あ、どうもお久しぶりです。 FXで有り金全部溶かしていない俺です。 アニメ感想以外で記事を更新するのはすんごい久々な気がします! そして、後書き記事を書くとかもういつ以来か思い出せないくらい! こういうのって、書こうと思ったときに書かないと大抵…

隙間を埋めるプラスティック-3

◆◆◆ パチリ、と部屋の電気を点ける。暗闇が取り払われ、中の様子がはっきりと見えるようになる。 この日、ノゾミはギフティアの定期メンテナンスのため、SAI社の施設に赴いていた。俺も契約主として同行するはずだったのだが、急な仕事が入ってしまい、やむ…

隙間を埋めるプラスティック-2

◆◆◆ ノゾミが我が家にやってきて、一ヶ月が過ぎた。 ギフティアのいる生活……温もりのある生活。そんなキャッチコピーに惹かれて、リースの契約を結んだ。 確かに、一人で生活している頃よりは寂しさを感じる機会が少なくなった。 しかし、温もりがあるかと問…

隙間を埋めるプラスティック-1

「西山実(にしやまみのる)さんですか? 実は、娘さんが交通事故に遭われて――」 娘である西山友(とも)が、信号無視をした車に轢かれて意識不明の重体になっている……務めていた会社のオフィスでその連絡を受けたとき、私は自分でも驚くくらいに冷静だった…

遊戯王 New stage 番外編 蒼銀の剣士-2

◆◆◆ ふと、左肩の辺りにひんやりとした空気を感じた。冷房の風というよりも、冷凍食品を保管するための冷凍機能を備えたショーケースの近くを通っているような冷たさ。思わず身震いするような空気に、さすがに我に返ったビビアンは、振り返って背後を覗き込…

遊戯王 New stage 番外編 蒼銀の剣士-1

その影は、力を求めて跋扈する。 ◆◆◆ 「人が氷漬けになってる、だって?」 「ああ。この一週間で二件の被害者が出ている」 時枝探偵事務所の看板を掲げるオフィスで、所長である神楽屋輝彦は、寝癖の付いた髪をがしがしと掻きながら、渡された書類に目を通し…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-19

気力を奮い起こすように叫び、おもちゃの拳銃を手にした右腕を振り上げる。 ガキィ! と。 振り下ろされた刃と、振り上げられた銃が、真っ向から激突し、鍔迫り合いの恰好になる。 「何……!?」 白斗が驚きを顕わにする。黒の刀を受け止めているのは、拳銃の…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-18

「な……!?」 混乱する思考で、背中を斬られたのだとかろうじて理解する。 傷口から血が飛び出し、焼けつくような痛みが走る。気を失わないことが不思議なほどの大きな傷だと感覚で分かった。 (後ろに仲間がいたのか!? けど、そんな気配は感じなかった――…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-17

カチリ、とプラスチック特有の軽い音が鳴る。 瞬間、銃口から赤銅色の弾丸が放たれた。 赤星が使ったアナザーコード<電池メン>のような激しい光はない。 静寂の中で発射された弾丸は、空気を切り裂き、一直線に白斗へと向かう。 速度自体は、一般的な小型…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-16

これまでも、創志は幾度となく敗北してきた。それでも、最後には大切なものを取り戻すことができた。巡って来たラストチャンスを逃さず、土壇場で勝ちを拾ってきた。 だが、今回は違う。 人の命は戻らない。例え強い力を持つサイコデュエリストが<死者蘇生…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-15

「ぐっ……!」 そして、創志の脳がついに限界を迎えた。頭蓋が割れてしまわないことが不思議なほどの激しい痛みに襲われ創志はたまらず膝をついてしまう。 「くそっ……くそっ……!」 無理矢理にでも立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。<ジオ・ジェ…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-14

闇雲にモンスターを実体化させても、難なく倒されてしまい頭痛が激しさを増すだけだ。 焦りのせいなのか、回避のために踏み込んだ右足が、ずるりと滑る。裏面が濡れた落ち葉を踏みつけたせいで滑ったのだ。 (まずっ……!) 残った左足で踏ん張りどうにか倒れ…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-13

「……最初に言っとくぜ。お前の攻撃から殺意を感じられなかったら、俺は容赦なく保根菜月を殺す」 「……<トライフォース>ッ!」 白斗の宣言に、創志は行動で応じる。 <A・ジェネクス・トライフォース>の右腕に装着された砲撃ユニットにエネルギーが充填さ…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-12

「赤星さんッ!!」 ようやく事態が飲み込めた創志は、すぐさま倒れた赤星に駆け寄る。助け起こそうとして花月を背負ったままだったことに気付く。傍にあった太い木に花月の体を預けてから、うつ伏せの赤星を起こした。 「…………っ!」 一目見ただけで、深刻さ…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-11

「事あるごとに拳銃をぶっ放す問題児。治安維持局の『狂犬』……平和な田舎暮らしを強制されて鬱憤が溜まってるだろ? 発散したいだろ? 違うとは言わせねえぜ。俺はさっきのアンタの顔、見てるからな」 「…………」 白斗の言う「さっきの顔」とはゾンビたちと戦…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-10

「ハッハァ! 最高だぜェ!」 絶え間なくトリガーを引き続けながら、愚直に前進する赤星が、創志を追いぬく。 光の銃弾を受けて倒れたゾンビたちの体には、パチパチと弾ける電流が残存していた。それを見た創志はふと「レールガン」という単語を思い浮かべる…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-9

「あら。おかえりなさい菜月ちゃん。両手に花ね」 「お、おばさん! からかわないでください!」 旧伊奈妻村に戻ると、ちょうど畑仕事から戻って来たらしい女性の出迎えを受けた。背負った籠には収穫してきた真っ赤なリンゴがたっぷりと詰まっている。 「で…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-8

「はぁ!?」 今度は創志が驚く番だった。確かに互の元へ来たのは術式について教えてもらい、それを会得することが目的だったが、友達に「CD貸してやれ」くらいの気軽さで切り出す話題ではないと思っていたのだ。 「じゅつしき……? って何のことですか?」…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-7

「見えました。あそこが互のおじいさんが住んでいる元休憩所です」 先導していた菜月が、坂の上にある建物を指差す。元々は丸太を組み合わせて建てられたログハウスだったのだろうが、所々に無骨な鉄板が打ち付けてあり、入口付近には壊れた家電製品から単な…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-6

「……眠れねえ」 暗闇の中に浮かび上がる豆電球の明かりを見つめながら、創志はベッドの上で仰向けになっていた。長旅の疲れもあるしすぐに寝られると思ったのだが、色んなことが一度に起こったせいで、目が冴えてしまったらしい。それとも、自分は枕が変わる…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-5

静謐な雰囲気をたたえた保根家の邸内は、面積に対して住人が少ないせいか、余計に広々と感じられた。年代物の桐箪笥や貼り替えられたばかりの真新しい障子など、家具や調度品も和風のものが目立つが、唯一リビングダイニングだけは、床はフローリングで海外…

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-4

「……言っとくけど、ちゃんと電気来てるんだからね。パソコンもある」 「マジで?」 「やっぱり疑ってた! アンタ都会っ子でしょ。雰囲気で分かる。あんまり田舎なめないでよね!」 「す、すまねえ」 花月の剣幕に圧され、思わず謝ってしまう。実際もっと田舎…