遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-6
(いや、落ち着け! 輝王が言ってたじゃねえか。<A・O・J>は、イリアステルの兵器のために利用されたって)
輝王は治安維持局上層部からの命令で、一度<A・O・J>デッキを手放している。後進育成のためのデータ収集が理由とのことだったが、裏でイリアステルの手に渡り、彼らの作った兵器「ゴースト」が使うデッキのために大量複製されていた。それを知った輝王は、「清浄の地・精霊喰い事件」後、切と共にデッキを取り返している。手放しているあいだは親友から託された<ドラグニティ>デッキを使っていたのだが、「四霊神事変」で術式の力を失った際、メインデッキを<A・O・J>に戻している。
(あのときにゴースト軍団から奪ったカードを使っているのかもしれないし、そもそも<A・O・J>を使うデュエリストは輝王以外にもいる)
さらに言えば、召喚されたモンスターは<A・O・J>のシンクロモンスターによく似た白金の装甲を纏ってはいたが、機械兵というよりも騎士といった印象が強く、兵器がモチーフのモンスター群としてはデザインが小奇麗過ぎる。男が別の世界から来たなら、この世界には存在しない<A・O・J>モンスターなのかもしれない。
それが分かっているのに、何故こんなにも動揺してしまったのか。
答えはほぼ判明しているが、それを口にすることは躊躇われた。
「<サンダーランサー>の効果を使う。相手フィールド上に闇属性モンスターが存在するとき、ライフを500ポイント支払うことで、セットされたカード一枚を破壊する。選択するのは、お前の伏せカードだ」
輝王は治安維持局上層部からの命令で、一度<A・O・J>デッキを手放している。後進育成のためのデータ収集が理由とのことだったが、裏でイリアステルの手に渡り、彼らの作った兵器「ゴースト」が使うデッキのために大量複製されていた。それを知った輝王は、「清浄の地・精霊喰い事件」後、切と共にデッキを取り返している。手放しているあいだは親友から託された<ドラグニティ>デッキを使っていたのだが、「四霊神事変」で術式の力を失った際、メインデッキを<A・O・J>に戻している。
(あのときにゴースト軍団から奪ったカードを使っているのかもしれないし、そもそも<A・O・J>を使うデュエリストは輝王以外にもいる)
さらに言えば、召喚されたモンスターは<A・O・J>のシンクロモンスターによく似た白金の装甲を纏ってはいたが、機械兵というよりも騎士といった印象が強く、兵器がモチーフのモンスター群としてはデザインが小奇麗過ぎる。男が別の世界から来たなら、この世界には存在しない<A・O・J>モンスターなのかもしれない。
それが分かっているのに、何故こんなにも動揺してしまったのか。
答えはほぼ判明しているが、それを口にすることは躊躇われた。
「<サンダーランサー>の効果を使う。相手フィールド上に闇属性モンスターが存在するとき、ライフを500ポイント支払うことで、セットされたカード一枚を破壊する。選択するのは、お前の伏せカードだ」
<A・O・J サンダーランサー> 効果モンスター(オリジナルカード) 星5/光属性/機械族/攻1800/守1500 相手フィールド上にモンスターが存在し、 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、 このカードは手札から特殊召喚できる。 相手フィールド上に闇属性モンスターが存在するとき、 1ターンに1度、500ライフポイントを払うことで、相手フィールド上に存在する セットされたカードを1枚破壊することができる。
【???LP4000→3500】
ピカッ、と眼が眩むほどの閃光が走り、創志の場の伏せカードが雷の槍によって貫かれる。先程創志が間一髪で避けた攻撃と酷似しているエフェクトだ。
「くそっ……」
破壊された伏せカードは<ガード・ブロック>。戦闘ダメージを無効にしつつ、カードをドローできる罠カードだ。長身の男は創志を守る最後の砦とも言うべきカードを、見事に撃ち抜いてみせた。
「くそっ……」
破壊された伏せカードは<ガード・ブロック>。戦闘ダメージを無効にしつつ、カードをドローできる罠カードだ。長身の男は創志を守る最後の砦とも言うべきカードを、見事に撃ち抜いてみせた。
<ガード・ブロック> 通常罠 相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。 その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、 自分のデッキからカードを1枚ドローする。
「この効果を使った<サンダーランサー>はエンドフェイズに破壊されるが……」
「破壊される前にシンクロ召喚しちまえば問題ない、ってことか?」
「……少し、違うな」
意趣返しとばかりに同じ言葉を放った創志に、男はポツリと呟いた。
「<A・O・J レベルデバッカー>を召喚」
男が続いて呼び出したモンスターは、<サンダーランサー>とは違い、創志のよく知る<A・O・J>モンスターと雰囲気が似ている。濃い紫色の球体の表面には意味不明の文字列が無数に走っており、その球体を取り囲むようにうっすらと輝きを放つ星が円軌道を描いている。天球儀を連想させるような形状のモンスターだ。
「<レベルデバッカー>は、自身以外の<A・O・J>モンスターとレベルを同じにする効果を持つ」
「破壊される前にシンクロ召喚しちまえば問題ない、ってことか?」
「……少し、違うな」
意趣返しとばかりに同じ言葉を放った創志に、男はポツリと呟いた。
「<A・O・J レベルデバッカー>を召喚」
男が続いて呼び出したモンスターは、<サンダーランサー>とは違い、創志のよく知る<A・O・J>モンスターと雰囲気が似ている。濃い紫色の球体の表面には意味不明の文字列が無数に走っており、その球体を取り囲むようにうっすらと輝きを放つ星が円軌道を描いている。天球儀を連想させるような形状のモンスターだ。
「<レベルデバッカー>は、自身以外の<A・O・J>モンスターとレベルを同じにする効果を持つ」
<A・O・J レベルデバッカー> 効果モンスター(オリジナルカード) 星4/光属性/機械族/攻1200/守1000 自分フィールド上の「A・O・J」と名の付いたモンスター1体を選択して発動できる。 このカードは、選択したモンスターと同じレベルになる。
「<サンダーランサー>のレベルは5……ってことは――」
「俺はレベル5になった<レベルデバッカー>と<サンダーランサー>でオーバーレイ!」
男の場に、光の粒子によって描かれた渦巻が出現する。
それはまるで、宇宙に煌めく星々が集まったかのようで。
創志は、一瞬だけ目を奪われていた。
「……正義を掲げる機械騎士よ。その双槍を持って、己が敵を穿て――エクシーズ召喚!」
渦巻の中心から、光が溢れる。
「ランク5、<A・O・J ガラドホルグ・シグマ>!」
二本の突撃槍が、光を打ち破る。
真紅のマントを翻し、白金の鎧――いや、装甲で身を固めた機械騎士が、両手に構えたランスで空気を払った。瞳に人工の光が灯り、関節から蒸気が噴き出す。
<A・O・J ガラドホルグ>――その名を持つモンスターは、創志も目にしたことがある。二本のレーザーブレードを持つ、下級モンスターだ。
だが、男の場に現れた<ガラドホルグ>は創志の記憶にあるものとは似ても似つかない。まるで<ヴァイロン>と融合したかのような、別物だった。
「……この世界に『エクシーズ召喚』という概念は存在しないはずだが……あまり驚いていないようだな。初見ではない、か」
「……まあな」
男の指摘は正しい。創志は「四霊神事変」の折に、同レベルのモンスターを複数体素材にすることで召喚されるエクシーズモンスターの存在を知っている。<A・O・J ガラドホルグ・シグマ>の周りを円軌道で周回する光の玉……素材となったモンスターが変化したオーバーレイユニットを使い、様々な効果を発動することができる。
だから、驚きがあるとすれば、別の事柄に関してだ。
「バトルフェイズに移行する。<ガラドホルグ・シグマ>で、伏せモンスターを攻撃!」
主の命を受けた機械騎士が、軽やかに、しかし確かな衝撃と共に跳躍する。
(先に伏せモンスターを狙ってきた……!?)
「<ガラドホルグ・シグマ>は相手フィールド上に闇属性モンスターがいる場合、バトルフェイズのあいだ攻撃力が500ポイントアップする!」
「俺はレベル5になった<レベルデバッカー>と<サンダーランサー>でオーバーレイ!」
男の場に、光の粒子によって描かれた渦巻が出現する。
それはまるで、宇宙に煌めく星々が集まったかのようで。
創志は、一瞬だけ目を奪われていた。
「……正義を掲げる機械騎士よ。その双槍を持って、己が敵を穿て――エクシーズ召喚!」
渦巻の中心から、光が溢れる。
「ランク5、<A・O・J ガラドホルグ・シグマ>!」
二本の突撃槍が、光を打ち破る。
真紅のマントを翻し、白金の鎧――いや、装甲で身を固めた機械騎士が、両手に構えたランスで空気を払った。瞳に人工の光が灯り、関節から蒸気が噴き出す。
<A・O・J ガラドホルグ>――その名を持つモンスターは、創志も目にしたことがある。二本のレーザーブレードを持つ、下級モンスターだ。
だが、男の場に現れた<ガラドホルグ>は創志の記憶にあるものとは似ても似つかない。まるで<ヴァイロン>と融合したかのような、別物だった。
「……この世界に『エクシーズ召喚』という概念は存在しないはずだが……あまり驚いていないようだな。初見ではない、か」
「……まあな」
男の指摘は正しい。創志は「四霊神事変」の折に、同レベルのモンスターを複数体素材にすることで召喚されるエクシーズモンスターの存在を知っている。<A・O・J ガラドホルグ・シグマ>の周りを円軌道で周回する光の玉……素材となったモンスターが変化したオーバーレイユニットを使い、様々な効果を発動することができる。
だから、驚きがあるとすれば、別の事柄に関してだ。
「バトルフェイズに移行する。<ガラドホルグ・シグマ>で、伏せモンスターを攻撃!」
主の命を受けた機械騎士が、軽やかに、しかし確かな衝撃と共に跳躍する。
(先に伏せモンスターを狙ってきた……!?)
「<ガラドホルグ・シグマ>は相手フィールド上に闇属性モンスターがいる場合、バトルフェイズのあいだ攻撃力が500ポイントアップする!」
<A・O・J ガラドホルグ・シグマ> エクシーズ・効果モンスター(オリジナルカード) ランク5/光属性/機械族/攻2500/守1500 機械族レベル5モンスター×2 相手フィールド上に闇属性モンスターが存在する場合、このカードの攻撃力は、 バトルフェイズの間だけ500ポイントアップする。 このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、 その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。 1ターンに1度、このカードが相手モンスターを破壊し墓地に送った時、 エクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。 このカードはこのターン2回攻撃できる。
キィィィィィン! という甲高い駆動音が響き、突撃槍が高速回転を始める。同時に先端から光の粒子が吹き出し、回転する槍の本体に巻きついていく。
騎士が、得物を引く。
空気が裂かれる。
「――セイント・シェイバー」
伏せカード――<ジェネクス・MB>が、閃光の槍に貫かれた。
「<ガラドホルグ・シグマ>は、貫通効果を持つ」
「ぐうっ――!」
裏守備モンスターが破壊された衝撃波が、実体となって創志を襲う。
<ガラドホルグ・シグマ>の攻撃力は自身の効果で上昇し、3000。対し、<ジェネクス・MB>の守備力は1200……1800ポイントのダメージだ。
騎士が、得物を引く。
空気が裂かれる。
「――セイント・シェイバー」
伏せカード――<ジェネクス・MB>が、閃光の槍に貫かれた。
「<ガラドホルグ・シグマ>は、貫通効果を持つ」
「ぐうっ――!」
裏守備モンスターが破壊された衝撃波が、実体となって創志を襲う。
<ガラドホルグ・シグマ>の攻撃力は自身の効果で上昇し、3000。対し、<ジェネクス・MB>の守備力は1200……1800ポイントのダメージだ。
【創志LP4000→2200】
「<ガラドホルグ・シグマ>の効果発動。相手モンスターを戦闘で破壊した時、オーバーレイユニットを1つ消費することで、もう一度攻撃を行う!」
「追撃効果……!」
「お前のエース――貫かせてもらう!」
光球――オーバーレイユニットが<ガラドホルグ・シグマ>の体内に吸い込まれ、アイレンズに強い光が灯る。
機械兵同士の距離は、すでに至近。
<A・ジェネクス・トライフォース>が銃撃ユニットを構える。
が、弾を放つべき標的は眼前に無い。
銀色の機械兵の体がくの字に折れる。
粒子を纏い高速回転した突撃槍が、<A・ジェネクス・トライフォース>の腹部を穿つ。
ドシャア! と内部パーツが臓物のようにばら撒かれ、姿を保てなくなった機械兵が消えていく。
「追撃効果……!」
「お前のエース――貫かせてもらう!」
光球――オーバーレイユニットが<ガラドホルグ・シグマ>の体内に吸い込まれ、アイレンズに強い光が灯る。
機械兵同士の距離は、すでに至近。
<A・ジェネクス・トライフォース>が銃撃ユニットを構える。
が、弾を放つべき標的は眼前に無い。
銀色の機械兵の体がくの字に折れる。
粒子を纏い高速回転した突撃槍が、<A・ジェネクス・トライフォース>の腹部を穿つ。
ドシャア! と内部パーツが臓物のようにばら撒かれ、姿を保てなくなった機械兵が消えていく。