にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 18

「俺のターン」
 ここで輝王がすべきは、間違いなく<レアル・ジェネクスダークマター>の撃破だ。
 光坂が<A・ジェネクストライフォース>を攻略する気なら、鍵を握っているのは間違いなくあのモンスター。
 それに――
 あのモンスターが消えれば、創志の精神も多少落ち着くはずだ。
「<AOJガラドホルグ>を召喚!」
 2本の光の剣を構えた朱色の機械兵が、輝王の呼び出しに応じる。

<A・O・J ガラドホルグ>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守 400
光属性モンスターと戦闘を行う場合、
ダメージステップの間このカードの攻撃力は200ポイントアップする。

 効果は発動できず、<魔轟神>たちの格好の的となるが、あの不気味な岩石を破壊するのが最優先だ。
「戦闘を行う! <ガラドホルグ>で<レアル・ジェネクスダークマター>を攻撃! プラズマソード・ツヴァイ!」
 攻撃宣言を受け、<AOJガラドホルグ>がすかさず跳ぶ。
 2本の剣を振り上げ、そのまま×の字に切り裂くつもりだ。
 ブゥン! と音を立て、光の刃が振り下ろされるが――
 その刃は、「何か」によって阻まれた。
「――ッ!?」
 光坂が伏せカードを発動した様子はない。それなら、何故防がれたのか。
 輝王の疑問の答えは、もう1人の決闘者が持っていた。
「墓地の<魔轟神グシオン>の効果を発動させてもらった。このカードを除外することで、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にできる。最も、このカードが除外されたことで俺は500ポイントのダメージを受けるがな」

<魔轟神グシオン>
効果モンスター(オリジナルカード)
星4/光属性/悪魔族/攻1600/守1200
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
このカードがゲームから除外されたとき、自分は500ポイントダメージを受ける。


【レビンLP4000→3500】

 先のターン、輝王は<魔轟神レヴュアタン>を召喚した意味ばかり考えていた。
 その過程で<魔轟神グシオン>を墓地に送ることも、レビンの狙いのひとつだったわけだ。
 輝王は考えが及ばなかった未熟さを恥じるが、すぐに頭を切り替える。
 このターンで<レアル・ジェネクスダークマター>を倒すことは不可能。それなら、次の手を準備するしかない。
「カードを1枚セット。ターンを終わる」

【光坂LP2600】 手札2枚
場:レアル・ジェネクスダークマター(守備)、伏せ1枚
【創志LP4000】 手札4枚
場:A・ジェネクストライフォース(攻撃)、A・ジェネクス・ストライカー(A・ジェネクストライフォース装備)、伏せ2枚
【レビンLP3500】 手札0枚
場:魔轟神レヴュアタン(攻撃)、魔轟神レイジオン(攻撃)
【輝王LP3700】 手札3枚
場:AOJガラドホルグ(攻撃)、伏せ1枚






 輝王のエンド宣言を聞き、創志の鼓動のリズムが速くなる。
 怒りもある。
 緊張もある。
 しかし、一番の理由は恐怖だった。
 光坂が<偽装進化>の効果で手札に加えたのは、チューナーモンスターである<レアル・ジェネクスコーディネイター>。
 すでに、下準備は済んだということだ。
「僕のターンか。まさか<ダークマター>が生き残るとは思ってなかったよ」
 言っていることとは真逆、満面の笑みを浮かべながら、光坂は1枚のカードを手に取る。
「<レアル・ジェネクスコーディネイター>を召喚。<ダークマター>にチューニングするよ」

<レアル・ジェネクスコーディネイター>
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/魔法使い族/攻 200/守 100
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
手札からレベル3以下の「ジェネクス」と名のついた
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 創志の目に映るのは、燃え盛る支部で見たものと同じ光景。
 シンクロ召喚の際に発するエフェクト光が、光坂の足元に出現した黒い沼に飲み込まれていく。
 かつて、創志を絶望の淵に追いやった「影の沼」だ。
「進化せし鉄よ、魂を絶望に染め上げろ。シンクロ召喚――」
 来る。
 震えだしそうになる手足を、怒りだけで抑える。
 創志は、前と同じ屈辱を味わうためにここまで来たのではない。
 勝つために、来たのだ。
「蹂躙せよ。<レアル・ジェネクス・クロキシアン>」

<レアル・ジェネクス・クロキシアン>
シンクロ・効果モンスター
星9/闇属性/機械族/攻2500/守2000
「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する
レベルが一番高いモンスター1体のコントロールを得る。

 蒸気機関車を模した黒の巨体が、フィールドの空気を圧迫する。
 息が詰まり、膝をつきそうになる。
 それでも、退くわけにはいかなかった。

 ――今だッ!

「罠カード<デモンズ・チェーン>を発動! <レアル・ジェネクス・クロキシアン>の効果と攻撃を封じるぜ!」
 表になった伏せカードから放たれた鎖が、黒の巨体を縛り付けた。

<デモンズ・チェーン>
永続罠
フィールド上に表側表示で存在する
効果モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは攻撃する事ができず、効果は無効化される。
選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 ――これで、「相手のモンスターを奪う」効果は発動できない!
 そうなれば、<レアル・ジェネクス・クロキシアン>はただの攻撃力2500モンスターだ。<A・ジェネクストライフォース>で十分に倒せる。
 創志にとってはトラウマともいうべき局面を乗り越えた。
 様々な感情がごちゃ混ぜになっていた心中が、クリアになっていくのを感じる。
 これなら、戦える。

 ――そう思ってしまったのは、経験の浅さなのだろうか。

「さすがに対策は考えてきたみたいだね。だけど、それを通すわけにはいかないんだ」
 光坂の笑顔は、揺るがなかった。
カウンター罠<盗賊の七つ道具>を発動。ライフを1000ポイント支払って、<デモンズ・チェーン>の発動を無効にして破壊する」

<盗賊の七つ道具>
カウンター罠
1000ライフポイントを払う。
罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。


【光坂LP2600→1600】

 鎖が砕け散る。
 創志の希望を乗せた、悪魔の鎖が。
「<レアル・ジェネクス・クロキシアン>の効果を使うよ。このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するレベルが1番高いモンスターのコントロールを得る」
 <レアル・ジェネクス・クロキシアン>の真下にあった黒い沼から、無数の影の触手が伸びる。
 狙いは、創志たちのフィールドで一番レベルの高いモンスター……<A・ジェネクストライフォース>だった。
 銀色の機械兵の各部に影が入りこみ、その体を侵食し始める。
 ――これじゃ、同じだ。
 光坂に敗北した時と、何も変わらなかった。
 影によって光坂のフィールドまで引っ張られた<A・ジェネクストライフォース>は、一度動作を停止したあと、光坂のしもべとして再起動する。
 <A・ジェネクストライフォース>は<A・ジェネクス・ストライカー>を装備した状態でコントロールを奪われた。攻撃力は4000に上昇したままだ。ダイレクトアタックが通れば、一撃で相手を葬れる。
「お前が警戒していたのは、これだったのか……!」
 輝王の言葉が、創志の耳を素通りしていく。
 戦う意志が消えていく。
 立っていられるのが不思議なくらいだった。
「さあ、行こうか。まずは<レアル・ジェネクス・クロキシアン>で<AOJガラドホルグ>を攻撃。シャドウ・ディスパイア!」
 黒の巨体の剛腕から、幾数もの影の鎖が放たれる。
 <AOJガラドホルグ>は光の刃を振るうが、影の鎖は自在に姿を変え、反撃を避ける。
 鎖が<AOJガラドホルグ>の体に巻きつき、締め上げ――
 ガキン! という不快な音と共に、朱色の機械兵はバラバラになった。
「ぐっ……ううう!」
 影の鎖は、同じように輝王の体を締め上げる。
 輝王の顔が苦痛に歪み、今にも筋肉がちぎれる音が聞こえてきそうだった。

【輝王LP3700→2800】

「今度こそ、君の出番は終わりだ」
 光坂の声が冷たく響く。
 創志は何かを言い返そうとして口を開くが、声を発することすらできなかった。
「<A・ジェネクストライフォース>で創志にダイレクトアタック。シャイニング・トライ・バスター」