にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 明日に伸ばす手-5

「先攻はもらうぜ! 俺のターン!」
 流れに任せてデッキからカードをドローしようとして、寸前で踏みとどまる。一ヶ月ほど前にルールの改定があり先攻プレイヤーは最初のターンカードをドローできなくなったのだ。
 ゆえに手札は5枚。枚数に物足りなさは感じるが、中身はかなり充実している。
「まずはこいつだ! このカードは、手札の<ジェネクス・コントローラー>を相手に見せることで、手札から特殊召喚できる! 来い、<ジェネクス・MB>!」

<ジェネクス・MB>
効果モンスター(オリジナルカード)
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200
このカードは、手札の「ジェネクス・コントローラー」を相手に見せることで、
手札から特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したこのカードは、エンドフェイズに破壊される。

 呼び出したのは、平べったい長方形に手足が付いた、奇妙なフォルムのロボットだ。両手は電源コードの差し込み口のようになっており、<ジェネクス>というよりも<電池メン>や<ディフォーマー>に近しい雰囲気のモンスターだ。
「自身の効果で特殊召喚した<ジェネクス・MB>はエンドフェイズに破壊されてしまうが――」
「このターンでシンクロ召喚に繋げれば問題ない、ということか」
「――行くぜ! 俺は<ジェネクス・コントローラー>を召喚!」
 相手の問いには答えず、創志は続けて自らの相棒とも言うべき機械の小人を召喚する。

<ジェネクス・コントローラー>
チューナー(通常モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻1400/守1200
仲間達と心を通わせる事ができる、数少ないジェネクスのひとり。
様々なエレメントの力をコントロールできるぞ。

「レベル4の<ジェネクス・MB>に、レベル3の<ジェネクス・コントローラー>をチューニング!」
 <ジェネクス・コントローラー>が調律を司るリングへと姿を変え、<ジェネクス・MB>の体の中心に光の玉が灯る。
 何度見ても、何度体感しても興奮が沸き上がるシークエンス。
「残された結晶が、新たな力を呼び起こす! 集え、三つの魂よ!」
 <ジェネクス・MB>を囲うように並んだリングの中心を、光が貫く。
シンクロ召喚――その力を示せ! <A・ジェネクストライフォース>!」
 光が霧散し、現れたのは三つの銃口を持つ特異な銃撃ユニットを装備した、銀色の機械兵。創志が操る<A・ジェネクス>のエースアタッカーだ。

<A・ジェネクストライフォース>
シンクロ・効果モンスター
星7/闇属性/機械族/攻2500/守2100
「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの属性によって、
このカードは以下の効果を得る。
●地属性:このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
●炎属性:このカードが戦闘によってモンスターを破壊した場合、
そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
●光属性:1ターンに1度、自分の墓地の光属性モンスター1体を選択して、
裏側守備表示で特殊召喚できる。

「初ターンからシンクロ召喚か。<ジェネクス>にしては警戒すべき速度だな」
「……褒め言葉として受け取っとくぜ。<トライフォース>の効果発動!」
 <A・ジェネクストライフォース>は素材にしたチューナー以外のモンスターの属性によって、異なる効果を発揮できる。<ジェネクス・MB>の属性は光。よって――
「俺は墓地の<ジェネクス・MB>を、裏守備表示でセットするぜ。さらにカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」
 モンスターゾーンと魔法・罠ゾーンにそれぞれセットカードが現れ、創志のターンが終了する。
「アタッカーに壁モンスター、さらに伏せカードを揃えるか。先攻プレイヤーの見本のような布陣だ」
 長身の男は嘲るでもなく感嘆するのでもなく、淡々と状況を分析する。
「だが――平凡すぎる」
 声色は変わらなかったが、サングラス越しの瞳がギラリと煌めいた――ように見えた。

【創志LP4000】手札2枚
場:A・ジェネクストライフォース(攻撃)、裏守備モンスター、伏せ1枚
【???LP4000】手札5枚
場:なし


「俺のターン。ドロー」
「……随分変わった形のデュエルディスクだな」
 長身の男がカードを引いたところで、創志はようやくずっと気になっていたことを口にできた。
 本体――デッキをセットする深めのスリットや、ソリットビジョンシステムが搭載された部分は、創志のものと大差ない。
 だが、カードをセットするためのディスク部分が、立体映像で映し出されているのだ。あれではカードをセットしようとしても、すり抜けて地面に落ちてしまうのではないか。いくら相手がサイコデュエリストだといっても、実体化出来るのはモンスターやカード効果だけだ。立体映像なら何でもかんでも実体化出来るわけではない。
「それはお互い様だな。そっちのデュエルディスクは、持ち運びが不便そうだ」
 長身の男は「他次元」や「並行世界」という単語を口にしていた。「清浄の地・精霊喰い事件」でカードの精霊を、「四霊神事変」で異世界の存在を知った創志には、それほど驚きはない。
 見慣れない――加えてこの世界では実現されていない技術を持っているとなれば、目の前の男は生木院多栄と同じように、他の世界からやってきたのだろう。
(そうだとしたら、こいつらの侵入を『守護者』……クロガネや白斗が見逃したってことになる。そんなことがあるのか?)
 新たに沸いた疑問は、頭の隅に留めておく。まずはデュエルに集中。情報を引き出す隙を窺うのは、余裕が出来てからでいい。
「奇遇、と言っておこうか。お前の召喚した<ジェネクス・MB>……俺の手札にも似たような効果を持つモンスターがいてな。そこから起点を作らせてもらう」
 長身の男がカードを選び取る。未知の相手が使うカードが明らかになる瞬間、創志は高揚感を覚える。今度は、一体どんなデッキとデュエルできるのか――相手がどんな悪党であろうと、心臓の高鳴りは抑えられないのだ。
 だが。

「このカードは、相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。来い、<A・O・J サンダーランサー>」

「な――」
 相手の場に現れたモンスターを見て、高揚感が一気に消えうせた。
 <A・O・J>。
 それは、かつて創志と共に幾多の戦場をくぐり抜けた青年が操るモンスターではなかったか。