にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

DM CrossCode ep-4th 巫女と弾丸-13

「……最初に言っとくぜ。お前の攻撃から殺意を感じられなかったら、俺は容赦なく保根菜月を殺す」
「……<トライフォース>ッ!」
 白斗の宣言に、創志は行動で応じる。
 <A・ジェネクストライフォース>の右腕に装着された砲撃ユニットにエネルギーが充填され、砲口から光が迸る。
 第一射を放つと同時に、創志は<トライフォース>を伴って前に出る。創志のサイコパワーでは、実体化させたモンスターと離れれば離れるほど指示の伝達が遅くなる。戦闘時に置いて、レスポンスの悪さは致命的だ。ノータイムでモンスターを操るためには、付かず離れず行動を共にするしかない。
「刀持ってる相手に接近戦挑むとは、随分と思いきりがいいじゃねえか!」
 <トライフォース>が放った光の波動を難なく避けた白斗は、向かってくる創志に応じるように前へ跳ぶ。
 相手の射程内の外から攻撃できる武装を持ちながら、接近戦を仕掛ける。確かにそれは愚策かもしれない。しかし――
(赤星さんがやられた技……あれが何らかの飛び道具だとしたら、悠長に砲撃戦を仕掛けるのはまずい)
 赤星が銃撃を放ったとき、白斗との距離は間違いなく十メートル以上は開いていた。とても刀による斬撃が届く範囲ではない。能力の詳細は判別できないが、白斗は遠距離でも攻撃できる手段を持っていると思ったほうがいい。だとしたら、実体の分からない攻撃を飛ばされる遠距離戦よりは、刀による攻撃が明確な接近戦のほうが何かとやりやすい。
「おおおおおおおおおおッ!」
 気迫を込めた創志の雄叫びに応えるように、銀色の機械兵は光の波動を連射する。
「気合だけは一人前だなァ! だが、まだ温いぞ!」
 白斗はあえて攻撃を避けずに、直撃しそうなものだけを純白の刀で弾いてみせる。
 それでも、<トライフォース>は愚直に攻撃を続けるしかない。創志のサイコパワーが強ければ、シンクロ素材のモンスターが地属性だった場合の効果「このモンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動することができない」を再現し、防御手段を潰すことができたのだが。
「……くそっ!」
 一瞬で両者の距離が詰まり、銀色の機械兵に白斗が肉薄する。
 足を止め、眼前の敵に照準を合わせ直すが、もう遅い。
 ザン! と。
 水平に振り抜かれた刃が、<A・ジェネクストライフォース>の胴体を切り裂き、両断した。
「手ごたえねえな。スポンジ切ったかと勘違いしちまいそう――」
 白斗のぼやきが、半ばで止まる。
 真っ二つになり、消えゆく機械兵の背後――そこにいるはずの主人の姿がない。
「――下か!」
 白斗の視線が、一瞬だけ視界から外れていた創志を捉える。
(すまねえ、<トライフォース>)
 深く身を沈めた創志は、心中で囮にしたモンスターに謝る。手ごたえがなかったのは、途中で実体化を解除したからだ。
「来い! <ジオ・ジェネクス>!」
 代わりに創志が呼びだしたのは、厚みのある赤茶色の装甲を纏った大地のジェネクス――<ジオ・ジェネクス>。頑強な右腕が地を這い、そこから猛烈な勢いでアッパーを繰り出す。
 刀を振り抜いてしまった白斗は、空いていた左手で<ジオ・ジェネクス>の拳を受け止める。普通の人間がそんなことをすれば、骨が砕けて使い物にならなくなるが――
「……ふん。こんなもんか」
「な……!?」
 ガキィ! と、まるで分厚い鉄板を殴りつけたような音が響き渡る。
 <ジオ・ジェネクス>の拳を受け止めた白斗の左手は、骨が砕けるどころか傷一つ付いていない。それでも勢いを殺すことはできなかったようで、涼しい顔のまま後方へと跳び、着地する。
「平均からは劣ってるとは聞いてたけど、ここまで弱いとは予想外だ。ま、お前の場合は力うんぬんよりも、気質を見込んでるから問題ないけどよ」
 言いながら、白斗は無事な左手をアピールするようにぷらぷらと振る。
(ここまで通用しないもんなのかよ……!)
 創志は、サイコパワーを用いた戦闘経験が少ない。ましてや術式使いとの戦いなど、これが初めてだ。自分の力が弱いのは重々承知したつもりでいたが、渾身の一撃だっただけに、全くダメージを与えられなかったという結果は、創志を動揺させた。
「それに……お前みたいなタイプは、追い詰められれば追い詰められるほど、強くなるからな!」
「…………ッ!」
 笑みを浮かべながら突撃してくる白斗に対し、創志は気圧されてしまう。
 現状、自分が選べる手札で、果たして奏儀白斗を倒せる手段はあるのか――?
「ボーっとすんじゃねえ!」
 白斗の鋭い叫び声が響き、創志はすんでのところで放たれた突きを避ける。純白の切っ先が頬を掠め、わずかに痛みが走った。
「<ジオ・ジェネクス>――」
「遅い!」
 迎撃のために前に出した<ジオ・ジェネクス>が、呆気なく両断され、光の屑になって消える。実体化したモンスターが消失したことで、創志の頭にビキリと割れるような痛みが走った。
(ちっ……! 続けざまにシンクロモンスターを実体化したツケが、もう回ってきやがったのか……!)
 歯を食いしばって頭痛に耐えながら、創志は返す刀で振り下ろされた刃を避ける。
 チューナーモンスターによるチューニング、という正規の手段を踏まずにシンクロモンスターを実体化させることは、通常よりも多くのサイコパワーを必要とし、脳への負担も大きい。逆に言えば、正規の手段を踏めば、消耗した状態でもシンクロモンスターを実体化させることができるわけだが――
「どうした! 避けてばっかじゃ話になんねえぞ!」
 絶え間なく放たれる斬撃を避けるので精いっぱいなこの状況では、チューナーモンスターとシンクロ素材を実体化させる余裕はない。
 純白の刃が何度か創志の体を掠め、腕、脚、脇腹を浅く裂いていく。このままでは、ジリ貧だ。
(反撃しねえと……!)