にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

DM CrossCode ep-2nd プロローグ-15

(コード<SC・ブレイカー>。あらゆる防御系の特殊能力を破壊し、一定時間使用不能にする技です。直接的なダメージはありませんが、これで<ストーン>や<ボム>が効くようになるはず)
 <SC・ブレイカー>。防御や回避のために用いられる術式や魔法・罠カードの効果具現化を破壊し、一定時間――込める魔力や相手の力量にも左右されるが――およそ5分間使用を不可能にするコードだ。<SC・ブレイカー>を防ぐために能力を発動した場合はもちろんだが、例えその時点で防御系の能力を発動していなかったとしても、能力を有しているだけでそれを使用不能にできる。デュエルモンスターズで例えるなら、セットカードを破壊するようなものだ。ただし、全体的な身体能力の底上げや、<SC・ストーン>のように元々の性質を向上させる能力に関しては作用しないため、使用不能にできる能力の線引きは曖昧である。
 また、基礎術式であるアクティブ・コードとシールド・コードは無効化できないことは、自らの実験で実証済みだ。身体を保護することが目的のアクティブ・コードはともかく、盾を作り出すシールド・コードを破壊できない理由は未だに分からない。まあ自分以外の術式使いに会うことなどありえないだろうし、大した問題ではないと思っていたのだが、世の中何が起こるか分からないものだ。
(<ブレイカー>は標的に当たった瞬間に効果を発動します。例え魔力カウンターを弾き飛ばそうと、もう手遅れってことです!)
 地面を滑るように前進を止めた犬子は、次なる攻撃のために両腕を交差させ、コード<パワーストーン>の発動準備に入る。連続して魔力カウンターを作り出したことにより命力の消費が激しく、全身に疲労感がのしかかるが、それに負けている場合ではない。
 <SC・ブレイカー>が防御系の能力を破壊した時は、ガラスが砕けたような破砕音が鳴り響く。それを合図に、コード<パワーストーン>を発動しようとするが――
(……あれ?)
 球体が弾かれ、明後日の方向に飛んで行ったあとも、肝心の破砕音が聞こえない。
「……何か狙いがあったような攻撃だったが」
 この緊迫した状況下で聞き逃したということはあるまい。だとすれば、考えられるのは。
(この人、防御系のコードを持ってないんですか!?)
 と、いうことは、<SC・ボム>の爆発をシールド・コードだけで防ぎきったということである。今まで何人もの人間を葬ってきた技だけに、犬子にはその事実が信じられなかった。
(シールド・コードの盾なんて気休めみたいなものでしょう? 大したサイコパワーを持たない能力者が実体化させた<マグネッツ1号>のパンチを食らっただけで破壊されちゃうような代物ですよ!?)
 あれ以来、犬子はシールド・コードの強度を信用していない。もっとも、それは基礎術式よりも優れた防御手段を有していたこともあるが。
 実際のところ、シールド・コードの強度は、力に変換した命力を注ぎ込めば注ぎ込むだけ上がっていく。理屈だけで言えば、地球が割れてしまうような隕石の衝突を受けても耐えられるほどの盾を作り出すことも可能だが、そこまでの命力を持つ人間は地球上では皆無だろう。
 そもそも、シールド・コードは命力の消費が大きく、燃費が悪い。例えばコード<SC・ディフェンダー>を発動すれば20の消費で防げた攻撃を、倍以上の50を注ぎ込まなければ防げないのだ。術者の命力の総量が150だとしたら、1回の防御で3分の1を使ってしまうシールド・コードの発動は、余程切羽詰まった状況でない限り避けたいはず。
 犬子は術式に関しての正確な情報を持っているわけではなかったが、シールド・コードの燃費の悪さは体感的に理解していた。だからこそ、輝王が防御系のコードを発動したと決め付けたのだ。
 ――真実は、輝王の命力の総量が桁違いに多かっただけの話なのだが。
「……好機、だな。これを逃すほど、甘くはないぞ」
 緩やかな動きで振り抜いた大剣を戻した輝王が、呟く。その一言で、犬子は混乱した思考から復帰した。
(いけない。距離を詰め過ぎました……! <ブレイカー>が効かなかった以上、もう一度離れて消耗戦を仕掛けるしか――)
 足に溜めていた力を前進のためではなく後退のために爆発させる。狙いが外れたことに舌打ちをしながらも、両手の魔力の糸を伸ばし、輝王の周囲に着弾した<SC・ストーン>に繋ごうとする。
 輝王は、その場に<レヴァテイン>と呼ばれた大剣を突き刺すと、空になった右手を水平に掲げる。
 次の瞬間。
「…………っ!?」
 ぞくり、と。犬子の全身に怖気が走り、体が凍りついた。
 三度目の攻防にして、輝王は初めて、殺気らしい殺気を犬子に向けた。
 冷たく光る眼光を受けただけで、分かる。
(次は、やばいです――)

「――ナイトコード<ゲイボルグ>」

 またしても、輝王正義が視界から消えた。