にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2

遊戯王 New stage2 サイドA 鉄屑の雨-5

「餌は十分だろう――<スクラップ・ドラゴン>!」 一度は退却した屑鉄竜を、再度召喚する天羽。 <ギガンテック・ファイター>を押しのけるように天羽の眼前で実体化した<スクラップ・ドラゴン>は、咆哮を上げて空間を震わせる。 屑鉄竜の出現に、<ギガン…

遊戯王 New stage2 サイドA 鉄屑の雨-4

「ってことは、またぶっ飛ばされに来たってことじゃねぇか!!」 椅子から立ち上がったと同時にこちらに体を向けた研里は、犬歯を剥き出しにして吠えた。常人なら驚いて逃げ出してもおかしくない怒号だ。 「今度は全身の骨を粉々に砕いてやるよ――<ギガンテ…

遊戯王 New stage2 サイドA 鉄屑の雨-3

幼いころ、天羽はひとりぼっちだった。 ゼロリバースのせいで両親を失い、頼れる親類もおらず、ひとりきりで生きるしかなかった。周りの大人たちは自分たちが生きることに精一杯で、誰一人として天羽を助けようとはしてくれなかった。 手先の器用さには自信…

遊戯王 New stage2 サイドA 鉄屑の雨-2

「お姉さん、弱いんだな。一瞬でも期待した俺がバカだった」 「ストレートに言われるとさすがにへこむな。ま、否定はしないがね。正義の味方は難しいもんだ」 「全然へこんでるように見えないんだけど。もしかしてわざと負けたの?」 「まさか。あれが私の実…

遊戯王 New stage2 サイドA 鉄屑の雨-1

ただ、一緒にいるだけでよかったのに。 どうしてそれ以上を望んでしまったんだろう。 「返せ! 返せよっ! 俺のカード!」 少年は必死に喚くが、上から頭を強く押さえつけられているため、思うように身動きが取れない。 もがく少年の様子を目にして、ガタイ…

遊戯王 New stage2 サイドM 5-5

「――くだらんな」 そう言って、伊織は眉根を寄せて苛立ちを顕わにする。 「お前に教えておいてやろう。俺が何故サイコデュエリストを殺すのか」 感情を表に出しすぎないように抑えながら、伊織は静かに語り始める。 「理由は単純な方がいい。その方が、相手…

遊戯王 New stage2 サイドM 5-4

「くそ、一体何が……」 視界が眩い光に包まれる直前、伊織が口にした術式の発動キーと思われる<ロスト・サンクチュアリ>という言葉。 ミハエルの脳裏に、廃棄された倉庫での出来事が蘇る。 触れたものを強制的に腐敗させる<アンデット・ワールド>。詳細は…

遊戯王 New stage2 サイドS 5-5

「聞いて。紫音ちゃん」 紫音が言葉を発する前に、亜砂は紫音の両肩を掴むと、切羽詰まった様子で口を開いた。 「私は紫音ちゃんのことが大好きだよ。ずっと一緒にいたいと、ずっと守ってあげたいと思ってる。でも、私は桐谷の言った通り『清浄の地』のメン…

遊戯王 New stage2 サイドS 5-4

「術式解放――<ロスト・サンクチュアリ>」 伊織の口がその言葉を紡いだ瞬間、紫音は反射的に足を止めていた。 一度体に染みついた恐怖は、そう簡単に消えるものではない。 もし、自分を取れ戻しに来たセキュリティの捜査官――大原竜美が、死体となって紫音の…

遊戯王 New stage2 サイドM 5-3

あの男は、本当に人間なのだろうか。 激しい運動をしたわけでもないのに、呼吸が荒くなり、心臓の鼓動が乱れる。 ミハエルがこの場に至るまでにしてきた様々な覚悟が、根元から折られてしまいそうな恐怖を覚える。 傍らのカームがギュッと長杖を抱いて体を震…

遊戯王 New stage2 サイドS 5-3

「ちょ、ちょっと……紫音ちゃん。きゅうけい、しない……?」 「今それどころじゃないの分かってるでしょ? 大体、デュエル中はずっと見てるだけだったんだから体力回復してるんじゃないの?」 「デュエル見てるときは……ハラハラしてて……あんなんじゃ休めないよ…

遊戯王 New stage2 サイドM 5-2

「リソナ、ミハエルのこと嫌いじゃないです。今度一緒に遊ぼうです! 精霊さんも一緒に!」 そう言って笑顔を見せてくれたリソナと別れ、ミハエル、天羽、神楽屋の3人は大小様々なマンションが立ち並ぶ区域を走っていた。Dホイールや車で移動しないのは、…

遊戯王 New stage2 サイドS 5-2

「くそっ! 何なんだよこいつらは!」 突如目の前に出現した、ブラックホールによく似た黒穴。そこから這い出てきたのは、欠けた角を生やし、破れた翼を広げ、紫の皮膚に、異常に発達した牙や爪を持つ、人型の悪魔だった。 その異様を一言で表すなら、不完全…

遊戯王 New stage2 サイドM 5-1

皆本信二がさらわれた。 その知らせを聞いた神楽屋は、すぐにDホイールに飛び乗り、自宅兼仕事場である事務所へと向かおうとした。 焦りを押し殺しているような神楽屋から事情を聞き出した天羽は、いつの間に用意していたのか年季の入った軽自動車を公園の…

遊戯王 New stage2 サイドS 5-1

桐谷真理は追われていた。 高さや広さがまちまちのマンションが立ち並ぶ住宅街を、背後を気にしながら疾走する。運動は得意な方ではないが、モデル顔負けのすらりと伸びた長い脚のおかげで、歩幅は広い。 肩にかかるくらいに伸ばした黒髪が風に揺れる。襟首…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-13

紫音はセシルの攻撃を真正面から受け止めることを決める。 おそらく、紫音のライフが尽きたとき――セシルは攻撃を実体化させ、紫音を焼きつくすつもりだろう。 「やれるものならやってみてよ! あんたにできるならね!」 「減らず口を!」 <ラヴァル・グレイ…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-12

「僕のターン。ドロー」 必要以上の言葉は発しようとせずに、セシルがデッキからカードを引く。 しかし、そのドローカードは芳しくなかったようで、 「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」 伏せカードをセットしただけで、ターンを終了した。 「<ラヴ…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-11

「……黙って聞いてれば身勝手な言い分をベラベラと!」 我慢の限界に達したようで、今度はセシルが大声を上げる。 「現在しか見ていないから、そんな気楽な意見が言える! 今はよくても、サイコパワーはいつか人を狂わせる! 真っ当な戦う理由を持ちながらも…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-10

「<ラヴァル・グレイター>……」 ラリラリストリートでの邂逅、そしてこのデュエルが始まる前の一戦……常にセシルのことを守ってきたモンスターだ。フィールドに佇むその姿は、数々の死線をくぐり抜けてきた風格を感じさせる。まさに、「戦う者」の名がふさわ…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-9

「あたしのターン!」 <リチュア・チェイン>の効果によってデッキトップを操作したため、ドローするカードはすでに分かっている。 <ヴィジョン・リチュア>。手札から捨てることによって、デッキから<リチュア>と名のついた儀式モンスターをサーチする…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-8

「僕のターンだな。ドロー」 デッキからカードを引いたセシルは、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。 「――どうやら、よっぽどその伏せカードに自信があるみたいだな」 「――ッ!?」 図星をつかれたせいで、紫音の体がピクリと反応してしまう。それを見た…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-7

「あたしが勝ったら、ここを通してくれるってことでいいのよね?」 「ああ。代わりに、君が負けたら死を持って償ってもらうぞ」 サイコデュエリストであることを、とセシルは続けた。 悪い冗談だ。サイコデュエリストであるというだけで、殺されなければなら…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-6

「容赦しない、ね。そんなチンケな脅しであたしたちが引き下がると思ってるの?」 セシルの鋭い眼光に怯むことなく、紫音は嘲笑混じりの言葉を返す。 「お前たちの素性は桐谷から聞いている。目的は皆本信二の奪還か……用があるのはサイコデュエリストだけだ…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-5

見慣れた背中が遠ざかる。 置き去りにされないよう、フェイは息を切らせながら全力で走った。 それでも、ついていくのがやっとだった。 一緒に走りたいのに。 隣を走りたいのに。 フェイの視界には、いつも誰かの背中が映っていた。 いつも、誰かに守られて…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-4

一泊したビジネスホテルを後にした朧は、亜砂の部屋があるマンションを目指して歩き始める。湿気を含んだぬるい風が肌にまとわりつき、不快感が増した。 「…………」 少し間隔を開けて、女の子と見間違えてしまいそうな容姿の少年――フェイ・ルージェがついてく…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-3

朧がフェイと出会ったのは、まだシティとサテライトが分かたれていたころだ。 ゼロリバースによって両親を失い、まだ幼かった朧を引き取って育ててくれたのが、フェイの両親であるルージェ夫妻だった。朧の幼馴染で、同じ理由で身寄りのなくなってしまった真…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-2

「……もしもし」 「ご無沙汰しております。連絡が遅れて申し訳ありませんでした」 久しぶりに聞く情報屋の声。謝罪の意を欠片ほども感じさせない声色だった。 「別にいい。それで? あんたが連絡をよこしてきたってことは、何か情報を掴んだってこと?」 「は…

遊戯王 New stage2 サイドS 4-1

もしかしたら、昨日の夜だけで一生分の涙を流したかもしれない。 洗面台の鏡の前で、紫音は自分の顔を見つめた。充血が残る両目の下には、ひどいクマができてしまっている。元々天然パーマ気味の髪はいつも以上にうねっており、唇はカサカサだった。 紫音は…

遊戯王 New stage2 サイドM 4-12

勝敗は決した。 立体映像が消えていくが、ミハエルは激しい戦いによる熱に浮かされたままだった。 ミハエルも、神楽屋も、言葉を発しようとしない。 ――静寂。 パチパチパチ、と。 その静寂を打ち破り、控えめな拍手の音が響き渡った。 「――素晴らしいデュエ…

遊戯王 New stage2 サイドM 4-11

「ハッ……! いい瞳だ!」 ミハエルが発する熱気に触発されたように、神楽屋も叫ぶ。 「けどな、戦う覚悟があるだけじゃダメだ。立ちふさがる敵を踏み越える強さを――守るべきもののために勝利を求める強さを! 証明してみせろ!」 そう言って、神楽屋は右拳で…