にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 4-7

「あたしが勝ったら、ここを通してくれるってことでいいのよね?」
「ああ。代わりに、君が負けたら死を持って償ってもらうぞ」
 サイコデュエリストであることを、とセシルは続けた。
 悪い冗談だ。サイコデュエリストであるというだけで、殺されなければならないなんて。
(……冗談なわけないか)
 セシルが発する凄味を肌で感じ、紫音はより一層気を引き締める。
(それにしても)
 朧たちを先行させたのは、2つの理由があったからだ。
 1つは、皆本信二を誘拐し逃走している張本人が、朧やフェイと深い関係がありそうな桐谷真理であったこと。
 もう1つは、前に立つ青髪の男のことが気になっていたからだ。
 ラリラリストリートでの邂逅。サイコデュエリストは危険だというセシルの主張を「くだらない」と斬って捨てた。そんな紫音に対し、セシルは激しい憤怒の感情を顕わにした。そのときの表情が、未だに脳裏に焼き付いている。
 彼は、どうしてそこまでサイコデュエリストを排除しようとするのか。
 何となくだが、その理由が知りたかった。
 「清浄の地」の活動には興味がないのに、セシルが戦う理由を知りたいと思うのは……年齢が近いせいだろうか。自分でもよく分からない。
(……でも、今は余計なことを考えてる場合じゃない!)
 まずは、このデュエルに勝たなくてはならない。
 優先するべきは皆本信二の救出と、「精霊喰い」に関しての情報。セシルに関しては二の次にしておくことに決める。余計なことに気を取られたせいで負けて、亜砂を悲しませるようなことは、絶対に避けなければならない。
 失うことの悲しさは、分かっているつもりだから。
「僕が先攻をもらう。ドロー」
 紫音たち以外の人間が消えた異様なマンション街で、デュエルがスタートする。天高くそびえる高層マンションが無用な圧迫感を与えてきて、まるで地下深くにある牢獄に放り込まれたような気分だ。
「モンスターをセットして、ターンエンド」
 「清浄の地」にとっては慣れっこの状況なのであろう。裏守備モンスターをセットしたセシルは、静かな声でターンの終了を告げる。

【セシルLP4000】 手札5枚
場:裏守備モンスター
【紫音LP4000】 手札5枚
場:なし

「あたしのターン!」
 場の空気に呑まれないよう声を張り上げた紫音は、細い指先でカードをドローする。
 6枚の初手を眺める。最初に召喚すべきモンスターは、<リチュア・チェイン>か<リチュア・エリアル>だろう。儀式モンスターがない今、それらをサーチすることが必須だ。<リチュア・チェイン>は確実性に欠けるが、デッキトップを操作できる。<リチュア・エリアル>は裏守備のまま破壊されない限りは幅広い範囲の<リチュア>モンスターをサーチできるが、リバース効果のため速攻性がない。どちらも一長一短だ。
 セシルのデッキは<ラヴァル>だろうが、どんな効果を持つモンスターがいるのかは知らない。ここは<リチュア・エリアル>を伏せて、相手の出方を窺ったほうが――
「――なんてね! あたしは<リチュア・チェイン>を召喚!」
 紫音が呼びだしたのは、先程<ラヴァル・グレイター>の動きを妨害した半魚人だった。

<リチュア・チェイン>
効果モンスター
星4/水属性/海竜族/攻1800/守1000
このカードが召喚に成功した時、自分のデッキの上からカードを3枚確認する。
確認したカードの中に儀式モンスターまたは儀式魔法カードがあった場合、
その1枚を相手に見せて手札に加える事ができる。
確認したカードは好きな順番でデッキの上に戻す。

 今の紫音には、傍にいてくれる人がいる。恐れることなど何もない。
 ガンガン攻めて、速攻でケリをつける。
「<リチュア・チェイン>の効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキの上から3枚を確認して、その中に儀式魔法、またはモンスターがあれば、1枚を選択して手札に加えることができる!」
 3枚のカードをめくると、キーカードである<リチュアの儀水鏡>が見えた。目当ての儀式モンスターはいなかったため迷わずそれを手札に加え、残り2枚は好きな順番に入れ替えておく。これで、次のドローカードは決まった。
「バトルに入るわ! <チェイン>で伏せモンスターを攻撃!」
 <リチュア・チェイン>が、先端に矢じりのついた鎖を投擲する。
 今度は獲物に絡みつくのではなく、そのまま伏せモンスターを貫いた。
 カードがリバースし、姿を現したのは黄土色のゴーレムだ。胸を貫かれたそのモンスターは、そのまま砕け散る。
「破壊された<ラヴァルの炎車回し>の効果を発動。このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られたとき、デッキから<ラヴァル>と名のついたモンスターを2体選択して墓地に送ることができる」

<ラヴァルの炎車回し>
効果モンスター
星3/炎属性/炎族/攻 300/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから「ラヴァル」と名のついたモンスター2体を
選択して墓地へ送る事ができる。

 デッキからモンスターを墓地に……ということは、<ラヴァル>にとって墓地肥やしは重要なファクターということだろうか。
「僕は<ラヴァル炎樹海の妖女>と<ラヴァル炎火山の侍女>を墓地に送る。そして<ラヴァル炎火山の侍女>が墓地に送られたことで効果発動だ。このカードが墓地に送られた時、デッキから<ラヴァル>と名のついたモンスター1体を選択して、墓地に送ることができる。僕が選択するのは2枚目の<侍女>だ」

<ラヴァル炎火山の侍女>
チューナー(効果モンスター)
星1/炎属性/炎族/攻 100/守 200
自分の墓地に「ラヴァル炎火山の侍女」以外の
「ラヴァル」と名のついたモンスターが存在する場合にこのカードが墓地へ送られた時、
自分のデッキから「ラヴァル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

「……え?」
「さらに<侍女>の効果が発動する。3枚目の<侍女>を墓地に送り効果発動。<ラヴァル炎湖畔の淑女>を墓地に送らせてもらう」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「何か問題が?」
「いや、ないけど……」
 焦りから、つい声が出てしまった。
 まさか一気に5枚ものモンスターカードを墓地に送られるとは思わなかった。墓地肥やしとデッキ圧縮――たった一度の攻撃で、その両方をこなされてしまった。
(どんだけチートモンスターなのよ。<ラヴァルの炎車回し>ってのは)
 続く言葉を喉の奥にしまいつつ、紫音は1枚のカードを手に取る。
 <激流葬>。強力な効果ゆえに、デッキに1枚しか投入できない罠カードだ。
「……カードを1枚セットして、ターンエンドする」
 セシルがどんなに強力なモンスターを召喚してこようとも、<激流葬>が伏せてあれば簡単に対処できる。
 あとは、使うタイミングだ。相手がモンスターを展開し切ったところを狙わなければ、セシルの思惑を狂わせることはできない。

【セシルLP4000】 手札5枚
場:なし
【紫音LP4000】 手札5枚
場:リチュア・チェイン(攻撃)、伏せ1枚