にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 4-10

「<ラヴァル・グレイター>……」
 ラリラリストリートでの邂逅、そしてこのデュエルが始まる前の一戦……常にセシルのことを守ってきたモンスターだ。フィールドに佇むその姿は、数々の死線をくぐり抜けてきた風格を感じさせる。まさに、「戦う者」の名がふさわしい。
「<ラヴァル・グレイター>がシンクロ召喚に成功した時、手札を1枚墓地に送る。<炎車回し>を墓地に送り……<紅蓮地帯を飛ぶ鷹>の効果発動だ。このカードがシンクロ召喚に使用された場合、自分の墓地に<ラヴァル>が3種類いれば特殊召喚できる。<紅蓮地帯を飛ぶ鷹>を守備表示で特殊召喚

<紅蓮地帯を飛ぶ鷹>
チューナー(効果モンスター)
星1/炎属性/鳥獣族/攻 100/守   0
このカードがシンクロモンスターシンクロ召喚に使用され
墓地へ送られた場合に自分の墓地に「ラヴァル」と名のついた
モンスターが3種類以上存在する場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合
ゲームから除外される。

 燃え盛る炎がそのまま鷹の姿を成したようなモンスターが、再度フィールドに舞い降りる。
「続けて魔法カード<二重召喚>を発動。このターン、僕は2回まで通常召喚を行うことができる。<ラヴァル・ガンナー>を召喚」

<二重召喚>
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

<ラヴァル・ガンナー>
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1200/守 800
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に「ラヴァル・ガンナー」以外の
「ラヴァル」と名のついたモンスターが存在する場合、
自分のデッキの上からカードを5枚まで墓地へ送って発動する事ができる。
このカードの攻撃力は、この効果を発動するために墓地へ送った
「ラヴァル」と名のついたモンスターの数×200ポイントアップする。

 <ラヴァルバル・ドラグーン>の背中に乗っていたゴーレムが、今度は単独で召喚される。
 これで、セシルは手札を全て使いきった。本当にこのターンで決着をつけるつもりなのだろう。
「<ラヴァル・ガンナー>が召喚に成功した時、自分の墓地に<ラヴァル・ガンナー>以外の<ラヴァル>モンスターがいればデッキの上から5枚のカードを墓地に送って効果を発動できる。このカードの攻撃力は、墓地に送った<ラヴァル>1体につき200ポイントアップする」
 <ラヴァル・ガンナー>の攻撃力は1200。守備力2000の<イビリチュア・マインドオーガス>を倒すには、5枚全てが<ラヴァル>モンスターでなければならない。
「狙いはそれじゃない……」
 目的は十中八九墓地肥やしだろう。せっかく<イビリチュア・マインドオーガス>で墓地に溜まったモンスターをデッキに戻したのに、その行為が無駄だったと嘲笑われている感じだ。
「当然、<ラヴァル・ガンナー>の効果を使わせてもらうぞ。デッキの上から5枚のカードを墓地に送り……落ちた<ラヴァル>は2体だ。<ガンナー>の攻撃力は400ポイントアップする」
 セシルは5枚のカードを紫音に見せた――その内2枚は<ラヴァル・コアトル>と<ラヴァルロード・ジャッジメント>だった――あと、墓地に送る。
「ちっ、この状況なら引きたかったモンスターが落ちたな。まあいい。レベル4の<ラヴァル・ガンナー>にレベル1の<紅蓮地帯を飛ぶ鷹>をチューニングする」
「またシンクロ召喚!?」
「闘争の渦中で煌めく猛者よ! その刃で堅固な守護を切り開け……シンクロ召喚! 穿つ者、<ラヴァル・ツインスレイヤー>!」
 三度立ち上る火柱。
 灼熱の柱を内側から切り裂いた赤き戦士――<ラヴァル・ツインスレイヤー>。
 肘の部分から伸びた無骨な刃が、炎を纏う。

<ラヴァル・ツインスレイヤー>
シンクロ・効果モンスター
星5/炎属性/戦士族/攻2400/守 200
チューナー+チューナー以外の炎属性モンスター1体以上
自分の墓地に存在する「ラヴァル」と名のついたモンスターの数によって、
このカードは以下の効果を得る。
●2体以上:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
もう1度だけ続けて攻撃する事ができる。
●3体以上:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「<ツインスレイヤー>は墓地の<ラヴァル>の数によって効果を得る。僕の墓地の<ラヴァル>は……数えるまでもないな。<ツインスレイヤー>は守備モンスターを攻撃した場合の連続攻撃と、貫通効果を得る!」
 貫通攻撃――守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフにダメージを与える効果のことだ。
 <ラヴァル・ツインスレイヤー>の攻撃力は2400。守備力2000の<イビリチュア・マインドオーガス>が攻撃されれば、紫音のライフは尽きる。
 仮に1度目の攻撃を防いだとしても、<ラヴァル・ツインスレイヤー>は守備表示モンスターを攻撃した場合、もう一度だけ攻撃できる効果を得ている。加えて、<ラヴァル・グレイター>の攻撃も残っている。まさに絶体絶命だ。
「バトルフェイズ! これで終わりにするぞ――<ツインスレイヤー>で<マインドオーガス>を攻撃!」
 紫音の場に伏せカードはない。セシルが攻撃を躊躇うことはなかった。
「レイジング・ヴォルケイン!」
 その名の通り2つの刃を持った赤き戦士が、変容した青髪の魔術師を――その主である紫音を屠るために跳躍する。
 右腕が後ろに引かれ、矢を射る直前の弓のように引き絞られる。
 その刃が放たれる直前――
「――九死に一生ってとこかな! 戦闘ダメージなら防ぐ手段があるの! 手札から<リチュア・ガーディアン>を墓地に送って効果発動! このカードは自分フィールド上に<リチュア>と名のついた儀式モンスターがいるときに発動できて、このターン全ての戦闘ダメージをゼロにする上に、あたしのモンスターは戦闘では破壊されない!」

<リチュア・ガーディアン>
効果モンスター(オリジナルカード)
星1/水属性/水族/攻300/守500
自分フィールド上に「リチュア」と名のついた儀式モンスターが表側表示で存在している時、
このカードを手札から墓地に送り発動する。
このターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動することができる。

 キィン、とトライアングルを鳴らしたような音が響き、紫音の足元に<リチュア>のシンボルマークとも言うべき紋章が浮かび上がる。
 浮かび上がった紋様は一気に紫音のフィールド全体に広がり、<イビリチュア・マインドオーガス>が淡い青の光に包まれる。
 <ラヴァル・ツインスレイヤー>の刃が<イビリチュア・マインドオーガス>を切り裂かんと振るわれるが、青の光がそれを許さない。カシュッ、と気の抜けた音と共に、<ラヴァル・ツインスレイヤー>の刃は青の光の表面をなぞっただけで、標的に傷一つつけることができなかった。
「また手札から発動するモンスター効果か……無駄な足掻きを!」
 余程このターンでの決着を望んでいたのか、額に青筋を浮かべたセシルが吠える。未だ優位に立っていることには変わりないというのに、随分な豹変っぷりだ。
 だが、頭に来たのはセシルだけではなかった。
「――無駄なんかじゃない! あたしはこんなところで負けるわけにはいかないのよ!」
 セシルに負けないくらいの大声で、紫音も吠えた。
 犬歯を剥き出しにして、犬さながら「ぐるる」と威嚇して見せる。
 何が「サイコデュエリストであることを償ってもらう」だ。
 そんなワケの分からない理由で死んでやる道理も、負けてやる道理も、キレられる道理もない。
「前にも言ったわよね。あたしは、大切なものを取り戻すためにこの力を身につけた。友達のためにも、傍にいてくれる人のためにも、あたしは前に進むって決めたの。そのために必要な力なの! 危険、ってだけで否定されちゃたまんないのよ!」
 叫んでいるうちに、怒りのボルテージが上がっていく。
 年は同じくらいのはずなのに常に上から目線のセシルの態度は、初めて会ったときから気に食わなかったのだ。
「だから、あたしはあんたに勝つ。あんたに勝って、思う存分サイコパワーを使ってやる!」
 最早当てつけのように叫んだ言葉だったが、紫音は気にしなかった。
「……大切なものを取り戻す、か。随分と奇麗な言葉だ」
 対し、セシルは落ち着きを取り戻したかのような口調で告げた。
 だが、その瞳には激しい憤怒の炎が宿っている。
「どんな目的であろうと、僕はサイコデュエリストという存在を許すことはできない。人間には過ぎた力だ。その力に溺れる前に、僕ら『清浄の地』に……伊織さんによって粛清されるべきなんだ」
「何よそれ? あんただってサイコデュエリストなんでしょ? だったら、真っ先にあんたが粛清されるべきなんじゃないの!? 矛盾してるじゃない!」
 セシルは前にこう言った。「サイコパワーの危険性を考えず、自分の目的のために闇雲に力を振るうサイコデュエリストはこの世から消えさるべきだ」と。
 それは、「サイコデュエリストを殺す」という目的のために力を振るっている「清浄の地」にも当てはまるのではないか。
「……全部終わった後、裁きを受ける覚悟はしている。だから今は――」
「ふざけないで!!」
 セシルの言葉を遮って、紫音は声を張り上げる。
 傍にちょうどいい硬さの壁があったら、思いっきり殴りつけたい気分だった。
「自分は他の人間とは違うみたいな言い方、すっごくムカツクのよ! 正義の味方のつもり? 自惚れんなバカ!!」
「なっ……」
「サイコデュエリストは危険だから殺す、なんて偽善者気取ってるあんたよりも、友達を助けようとしてるあたしの方がよっぽど正しいことしてる! 正しいことしてるんだから、あんたなんかに負けるはずない! バカバカバーカ!」
 散々罵ったあと、紫音はベーッと舌を出してみせる。
 紫音は上凪財閥という大金持ちの家の娘だ。同じように上流階級の家に生まれた子供たちと話す機会は、幾度となくあった。彼らは自分の家柄や立場ばかり自慢し、「他の人間とは違う」ことをアピールしていた。
 紫音はそれが大嫌いだった。大金持ちの人間なんて、何も知らない第三者からしてみたら、どれも同じに見えるのに。
 セシルの言い分だって同じだ。「サイコデュエリストが目的のためにサイコパワーを振るっている」という事実は、紫音だって「清浄の地」だって変わらない。なのに、自分たちだけを特別扱いして正当化しようとしている。それに腹が立った。