にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 4-8

「僕のターンだな。ドロー」
 デッキからカードを引いたセシルは、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。
「――どうやら、よっぽどその伏せカードに自信があるみたいだな」
「――ッ!?」
 図星をつかれたせいで、紫音の体がピクリと反応してしまう。それを見たセシルは、ますます笑みを濃くする。
「なら、このタイミングで対処しておくとするか。墓地の<ラヴァル炎湖畔の淑女>の効果を使う! <淑女>と<妖女>をゲームから除外することで、相手のセットカード1枚を破壊する!」

<ラヴァル炎湖畔の淑女>
チューナー(効果モンスター)
星3/炎属性/炎族/攻 200/守 200
自分の墓地に「ラヴァル」と名のついたモンスターが3種類以上存在する場合、
自分の墓地に存在するこのカードと「ラヴァル」と名のついた
モンスター1体をゲームから除外して発動する事ができる。
相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して破壊する。

 墓地から現れた赤髪の女性――<ラヴァル炎湖畔の淑女>がひらりと右手をかざすと、小さな火の玉が現れる。その火の玉を手のひらに載せ、まるでシャボン玉を飛ばすように優しく息を吹きかける<ラヴァル炎湖畔の淑女>。
 飛ばされた火の玉は散らばって無数の火の粉へと姿を変え、紫音の場の伏せカードを焼きつくす。
「チェーンして発動しないということは、モンスターの召喚か攻撃がキーとなって発動するカードか?」
「……悔しいけど、ご名答よ」
 紫音は破壊された<激流葬>を墓地に送る。これで、このターン紫音ができることはほぼ無くなってしまった。
「憂いは断った。行くぞ、<ラヴァル・キャノン>!」
 セシルが召喚したのは、青い体の巨人だ。岩のような肌をした巨人は、右手にマグマを覗かせる砲口を構えている。

<ラヴァル・キャノン>
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1600/守 900
このカードが召喚・反転召喚に成功した時、
ゲームから除外されている自分の「ラヴァル」と名のついた
モンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。

「<ラヴァル・キャノン>が召喚に成功した時、除外されている<ラヴァル>と名のついたモンスターを1体特殊召喚できる。僕は<ラヴァル炎樹海の妖女>を特殊召喚!」
 <ラヴァル・キャノン>が上空に向けて砲を構え、小さな太陽のように見える火の玉を撃ち出す。
 何もない空間に向けて放たれた火の玉は、ガシャン! とガラスが砕け散るような音を響かせ、「空間に穴を開ける」。開いた空洞から軽快な動作でフィールドに舞い降りる、黒のフードを被った赤髪の少女――<ラヴァル炎樹海の妖女>。

<ラヴァル炎樹海の妖女>
チューナー(効果モンスター)
星2/炎属性/炎族/攻 300/守 200
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分フィールド上に表側表示で存在する
「ラヴァル」と名のついたモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
自分の墓地に存在する「ラヴァル」と名のついた
モンスターの数×200ポイントアップする。

「容赦はしない! レベル4の<ラヴァル・キャノン>にレベル2の<ラヴァル炎樹海の妖女>をチューニング!」
 ドン! という轟音と共に、セシルのフィールドに火柱が上がる。
 まるで、怒りという感情をその炎で表しているかのようだった。
「闘争の渦中で煌めく猛者よ! その翼で夜空を赤く染め上げろ……! シンクロ召喚! 羽ばたく者――<ラヴァルバル・ドラグーン>!」
 火柱の中から、黄土色の巨大なくちばしが突き出てくる。
 そのくちばし以上に巨大なトサカを生やした翼竜が、ゆったりとした動作で火柱の中から姿を現した。背中には、簡素な鎧を纏ったゴーレムの姿が見える。

<ラヴァルバル・ドラグーン>
シンクロ・効果モンスター
星6/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守1200
チューナー+チューナー以外の炎属性モンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。
自分のデッキから「ラヴァル」と名のついたモンスター1体を手札に加え、
その後手札から「ラヴァル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。

シンクロモンスター……!」
 <リチュア>の核ともいうべき儀式モンスターは、まだ紫音の手札には無い。先手を打たれた形になるが……デュエルは始まったばかりだ。ここから巻き返せばいいだけのこと。<リチュア・チェイン>の効果によって、次のドローは確定しているわけだし。
 紫音が次の自分のターンの戦略について頭を巡らせていると、
「呆けているな。その慢心が、死を呼び込むぞ――」
 眉を釣り上げたセシルが、吐き捨てるように呟いた。
「<妖女>がフィールドから墓地に送られたとき、効果が発動する。自分フィールド上の<ラヴァル>と名のついたモンスターは、エンドフェイズまで墓地の<ラヴァル>の数×200ポイントアップする。僕の墓地には<侍女>が3枚と<キャノン>、<妖女>、そして<炎車回し>の6体。よって<ラヴァルバル・ドラグーン>の攻撃力は1200ポイント上昇し、3700だ」
「……っ!?」
 いちゃもんが口から飛び出そうになるが、何とか喉の奥に押し込める。開始2ターン目で有名な<青眼の白竜>の攻撃力を超えるモンスターを召喚してくるなんて、悪い冗談だ。
 だが、「悪い冗談」はこれで終わりではなかった。
「<ラヴァルバル・ドラグーン>の効果を発動。デッキから<ラヴァル>と名のついたモンスター1体を手札に加え、その後手札から<ラヴァル>モンスターを墓地に送る……<ラヴァル・ランスロッド>を手札に加え、そのまま墓地に送らせてもらう」
「また墓地肥やし? 飽きないわね」
「黙れ。君の命はこのターンで尽きる。墓地に<ラヴァル>が3種類以上いるとき、<ラヴァルバーナー>は手札から特殊召喚することができる!」
 うねる赤の長髪をなびかせ、両腕に炎を宿したゴーレムが、<ラヴァルバル・ドラグーン>の隣に並ぶ。

<ラヴァルバーナー>
効果モンスター
星5/炎属性/炎族/攻2100/守1000
自分の墓地に「ラヴァル」と名のついたモンスターが3種類以上存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

「攻撃力2100!?」
「そんな、この2体の攻撃が通ったら紫音ちゃんは……」
 背後の亜砂が息を呑むのが分かる。
「言ったはずだ。容赦はしないと。早急に君を片づけ、あとの2人……若槻朧とフェイ・ルージェを追わせてもらうぞ。バトルフェイズ――<ラヴァルバーナー>で<リチュア・チェイン>を攻撃」
 雄叫びを上げた<ラヴァルバーナー>が、両腕を振り上げながら跳躍する。
 このまま<リチュア・チェイン>が破壊されれば、300ポイントのダメージを受けて、紫音のライフは3700になる。そこに<ラヴァルバル・ドラグーン>のダイレクトアタックが来れば――
「手札から<リチュア・バランサー>を墓地に送って、効果を発動するわよ!」
 最後まで想像する前に、紫音は動いた。
「相手ターンでも発動できるカード……さすがに手は残していたか」
「あんたのモンスターの攻撃力を、エンドフェイズまで200ポイント下げるわ!」

<リチュア・バランサー>
効果モンスター(オリジナルカード)
星4/水属性/魔法使い族/攻1600/守1500
自分フィールド上に「リチュア」と名のついたモンスターが表側表示で存在している時、
このカードを手札から墓地に送ることで、相手フィールド上で表側表示で存在するモンスターの
攻撃力は、エンドフェイズまで200ポイントダウンする。
この効果は相手ターンでも発動することができる。

 セシルのフィールドに、さあっ、と霧雨が降り注ぐ。
 <リチュア・バランサー>の効果により、<ラヴァルバーナー>の攻撃力は1900、<ラヴァルバル・ドラグーン>の攻撃力は3500に下がった。これなら、ギリギリライフポイントが残るはずだ。
 <ラヴァルバーナー>の炎拳により、<リチュア・チェイン>が砕け散る。

【紫音LP4000→3900】

「どうやら生き永らえたようだが……痛撃だぞ。<ラヴァルバル・ドラグーン>でダイレクトアタック! プロミネンス・ショット!」
 <ラヴァルバル・ドラグーン>の大きなくちばしが開かれ、圧縮された炎の弾丸が紫音目がけて発射される。
「――――!」
 紫音は無言のまま歯を食いしばり、攻撃に備える。
 実体化した攻撃を受けたせいで大怪我を負い、デュエル続行不能にならないよう、攻撃を防ぐための薄いバリアのようなものを展開する。
 だが、サイコパワーの指導をしてくれた光坂曰く、こんなものはただの気休めらしい。
 襲ってくる激痛に耐えられなければ、いくら体が無事だろうと心が折られてしまう。それではデュエルを続けることはできない。
 額から冷や汗が流れる。実のところ、紫音は今まで実体化した攻撃を受けたことがなかった。正確に言えば、デュエル中に実体化した攻撃を受けたことがない、だ。
 朧やセシルとのバトルでは、モンスターの召喚や<リチュアの儀水鏡>での防御など、対抗手段があった。しかし、今はそれが無い。この薄い障壁1枚で、<ラヴァルバル・ドラグーン>の攻撃を耐えなければならないのだ。
 恐怖はある。不安もある。
「紫音ちゃん!」
 だが、亜砂の前で無様な姿を見せるわけにはいかない――!
 炎の弾丸が紫音の体を貫く。
「…………っ!」
 痛みは……デュエルディスクから伝わる微弱な振動だけだ。

【紫音LP3900→400】

「力、使わないわけ?」
 情けをかけられたようで癪に障る。紫音は非難めいた視線でセシルを睨んだ。
「……僕がデュエルで勝ったら、君はサイコデュエリストであることを償う。死を持ってな。その約束を果たす前に死なれては困ると思っただけだ。カードを1枚セットして、ターンエンド」
 落ち着いたセシルの立ち振る舞いが、妙に鼻に付く。
 昨日の隆司・虎子とのデュエルで手を抜かれた紫音とっては、セシルの言葉を鵜呑みにはできなかった。
(そっちがそういうつもりなら、サイコパワーを使わざるを得ないくらい追いこんでやる……)
 攻撃を受ける直前の恐怖はどこへやら、紫音はセシルに吠え面をかかせる逆転方法を考え始めていた。

【セシルLP4000】 手札3枚
場:ラヴァルバル・ドラグーン(攻撃)、ラヴァルバーナー(攻撃)、伏せ1枚
【紫音LP400】 手札4枚
場:なし