にわかオタクの雑記帳

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リミット・シェル・ブレイク-5【ヴァンガードオリジナル小説】

カード名 	ブレイジングフレア・ドラゴン
グレード 	3 	スキル 	ツインドライブ!!
種別 	ノーマルユニット 	トリガー 	-
クラン 	かげろう 	種族 	フレイムドラゴン
シールド 	- 	国家 	ドラゴン・エンパイア
パワー 	10000 	クリティカル 	1
効果テキスト 	自【V/R】:あなたのメインフェイズ中、相手のリアガードがドロップ
ゾーンに置かれた時、そのターン中、このユニットのパワー+3000。
起【V】:[SB(5)]相手のリアガードを1枚選び、退却させる。

 通常、G3のユニットにライドするためには、3度のライドフェイズが必要になる。
 その制約を無視し、デッキからG3ユニットを呼び出してライドする、スペリオルライド。ホムラはそれを成功させた。
 ギャラリーである男子高校生たちがまた騒ぎだしそうだったが、ホムラが睨みつけたことで、事前にそれは防がれた。
「くそっ、『かげろう』でまだ<ブレイジングフレア>を使ってるなんて……」
「意外だった? 確かに、現環境で『かげろう』って言えば<ジエンド>だものね。けど、あたしはこの子が大好きなの。いくら<ジエンド>が強かろうと、この子を捨てたりしないわ」
 ……それは、俺のことを責めてるのか?
 「強いから」という安易な理由で、『ノヴァグラップラー』から『かげろう』に乗り換えた俺のことを。
 訊きたかったが、それを口にする勇気はなかった。
「<ジョカ>を後列に下げて、空いたところに<連撃のサザーランド>をコール! さらに、<ブレイジングフレア>の後ろに<ブルーレイ・ドラコキッド>をコール!」

カード名 	連撃のサザーランド
読み 	レンゲキノサザーランド
グレード 	2 	スキル 	インターセプト
種別 	ノーマルユニット 	トリガー 	-
クラン 	かげろう 	種族 	ヒューマン
シールド 	5000 	国家 	ドラゴン・エンパイア
パワー 	8000 	クリティカル 	1
効果テキスト 	自【V/R】:あなたのメインフェイズ中、相手のリアガードがドロップ
ゾーンに置かれた時、そのターン中、このユニットのパワー+3000。

 シールド10000を持つ<ドラコキッド>をコールしたということは、手札に適当なユニットがいないのか、それとも――
「バトルよ。『瞬炎』の意味、教えてあげる」
 まさか、このターンに勝負を決める気なのか?
 ありえない。除去効果を使って<ブレイジングフレア>や<サザーランド>、<ジョカ>のパワーを上昇させるならまだしも、メインフェイズを終了させた今となってはそれも叶わない。俺の手札は4枚もあるし、<ベリコウスティ>でインターセプトもできる。勝負を掛けられる場面じゃないはずだ。いくらなんでも早計過ぎる。
 そんな当たり前の考えを吹っ飛ばすかのように――ホムラは笑っていた。
「<ドラコキッド>のブースト! <ブレイジングフレア>で<ネハーレン>にアタック!」

【<ブレイジングフレア・ドラゴン>パワー10000→15000】

「……ッ」
 落ち着け。相手のペースに呑まれちゃダメだ。冷静に考えろ。
 俺の手札に完全ガードはない。<オーバーロード>と<ジエンド>の他には、シールド10000を持つ<ドラゴンモンク ゲンジョウ>と、5000の<バーニングホーン・ドラゴン>。この2枚を切れば、ツインドライブで2枚のトリガーを引かれようと攻撃は通らない。
 だが、こんな序盤でそこまで手札を消費していいのだろうか?
 特に<バーニングホーン・ドラゴン>は、<オーバーロード>にライドしたあとの戦闘要員だ。ガードに使ってしまっては、こちらの攻撃が薄くなってしまう。それなら、<ゲンジョウ>だけでガードを……いや。中途半端にガードをするくらいなら、<ブレイジングフレア>のアタックを通して、次のリアガードのアタックを防いだほうがいい。
「……ガードはしない」
 俺が宣言すると、ホムラはその言葉を待っていたかのように「ふふ」と声を漏らして笑った。
「言ったわよね? あたし相手に無難な選択は危険だって。ツインドライブ、ファーストチェック――」
 少女は、自信を満ち溢れさせた指先で、カードをめくる。
 一切の躊躇も迷いも後悔もなく。まるで、引くカードを予見しているかのように。
「――クリティカルトリガー。パワーは<サザーランド>に、クリティカルは<ブレイジングフレア>に」

【<ブレイジングフレア・ドラゴン>クリティカル1→2】

【<連撃のサザーランド>パワー8000→13000】

「……っ」
 まさかもう一回クリティカルトリガーを引いてくるなんて……強運すぎる。
 けど、ここで終わりだ。
 <ブレイジングフレア>へのスペリオルライドを行うには、<ガトリングクロー>が必須。ドロートリガーを持つ<ガトリングクロー>を入れているということは、クリティカルトリガーを12枚積むことはできない。おそらく、クリティカルトリガーは8枚。ヒールトリガーを抜くのなら話は別だが、ダメージの回復という破格の性能を持つヒールトリガーを採用しないなんてことはないはずだ。
 これ以上のダメージはない。例えトリガーを引いたとしても、それはクリティカルトリガー以外のカードだ。
「――<ブレイジングフレア>って、瞬間的な攻撃力は凄まじいけど、それ以外はさっぱりなのよね」
 セカンドチェックを行う直前、ホムラはポツリと呟く。
「一瞬で勝負を決めなきゃ、あとは灰になるだけ。だから、あたしがここだって思ったポイントで、必ず応えてくれるの」
「いきなり何を……」
「セカンドチェック」
 俺の戸惑いを打ち切るかのように声を発したホムラは、2枚目のカードをめくる。

「<魔竜導師 ラクシャ>。クリティカルトリガーよ」

カード名 	魔竜導師 ラクシャ
読み 	マリュウドウシ ラクシャ
グレード 	0 	スキル 	ブースト
種別 	トリガーユニット 	トリガー 	☆+5000
クラン 	かげろう 	種族 	ドラゴンマン
シールド 	10000 	国家 	ドラゴン・エンパイア
パワー 	3000 	クリティカル 	1
効果テキスト 	自【R】:あなたのメインフェイズ中、相手のリアガードがドロップゾーンに
置かれた時、そのターン中、このユニットのパワー+3000。

「なっ……んだよそれ」
 馬鹿な。ありえない。ドライブチェックで、3回連続クリティカルトリガー?
 頭が真っ白になる。そんなことが許されるのは、フィクションの世界だけだ。
「クリティカルは<ブレイジングフレア>に。パワーは<サザーランド>に。さあ、この攻撃を受けきれるかしら?」

【<ブレイジングフレア・ドラゴン>クリティカル2→3】

【<連撃のサザーランド>パワー13000→18000】

 ホムラは俺を煽るように告げる。

「……受けきれるわけないだろ」

 ここが、俺の限界だった。
「こんな運ゲーされちゃ、勝てるわけない。俺の負けだよ」
「あら? 諦めちゃうの? まだシックスヒールの可能性が残ってるけど」
「アンタじゃないんだから、そんな上手いことあるわけないだろ。仮にシックスヒールしたって、こっから逆転できる気がしねえ」
 完全に白けた。ヴァンガードは運の比重が強いカードゲームではあるが、ここまで極端なのは初めてだ。続ける気が綺麗さっぱり失せてしまった。
 俺は投げやりになりながら、ダメージゾーンにカードを3枚置く。当然、その中にヒールトリガーはなかった。
「ああー負けた負けた。ひどい運ゲーだった」
 ただの負け惜しみ……いや、嫌味だということは分かっていた。けど、言わずにはいられなかった。
 こんなものは、俺の知っているヴァンガードファイトじゃない。
「……その運を手繰り寄せるのも、ファイターに必要なものだと思うけれどね」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も。それより、もう一戦どうかしら? あたしも全力を出したとは言い難いし、付き合ってくれるとうれしいんだけど」
「遠慮しとく。帰るよ」
 ぶっきらぼうに言って、俺は席を立つ。ホムラの言いつけを守って口を閉じていた高校生たちが、そそくさと道を開けた。
「そう」
 ホムラは、俺を引き止めなかった。