リミット・シェル・ブレイク-8【ヴァンガードオリジナル小説】
「<魔竜導師 キンナラ>のカウンターブラスト。自身をソウルに置き、<美技の騎士 ガレス>を退却させるわ」
カード名 魔竜導師 キンナラ 読み マリュウドウシ キンナラ グレード 1 スキル ブースト 種別 ノーマルユニット トリガー - クラン かげろう 種族 ドラゴンマン シールド 5000 国家 ドラゴン・エンパイア パワー 6000 クリティカル 1 効果テキスト 起【R】:[CB(1),このユニットをソウルに置く]あなたの《かげろう》の ヴァンガードがいるなら、相手のグレード1のリアガードを1枚まで選び、 退却させる。
ヴァンガードの後列にいた<ガレス>が、<キンナラ>のスキルによってドロップゾーンに置かれる。
「これで、<ブレイジングフレア>の<サザーランド>のパワーが上がるわ。さらにソウルが5枚溜まったことによって――<ブレイジングフレア>のソウルブラスト! <神技の騎士 ボーマン>を退却!」
ホムラのソウルが全て取り払われ、火竜の炎獄が騎士を焼き払っていく。
<ボーマン>が退却したことで、<ブレイジングフレア>と<サザーランド>のパワーがさらに上昇する。
「ヴァンガードの後列に<バー>、<サザーランド>の後ろに<従者 レアス>をコール」
「これで、<ブレイジングフレア>の<サザーランド>のパワーが上がるわ。さらにソウルが5枚溜まったことによって――<ブレイジングフレア>のソウルブラスト! <神技の騎士 ボーマン>を退却!」
ホムラのソウルが全て取り払われ、火竜の炎獄が騎士を焼き払っていく。
<ボーマン>が退却したことで、<ブレイジングフレア>と<サザーランド>のパワーがさらに上昇する。
「ヴァンガードの後列に<バー>、<サザーランド>の後ろに<従者 レアス>をコール」
カード名 従者 レアス 読み ジュウシャ レアス グレード 1 スキル ブースト 種別 ノーマルユニット トリガー - クラン かげろう 種族 ヒューマン シールド 5000 国家 ドラゴン・エンパイア パワー 6000 クリティカル 1 効果テキスト 自【R】:このユニットが「連撃のサザーランド」をブーストした時、 そのバトル中、ブーストされたユニットのパワー+4000。
ホムラの3度目の攻撃。それは、俺を敗北の底へ突き落とす為に十分な戦力を揃えていた。
俺の先攻で始まったこのファイトは、またしてもホムラのペースで進んだ。
さすがに最初のドライブチェックではクリティカルは出なかったものの、<ブレイジングフレア>へのスペリオルライドを成功させ、そのターンのアタックでダブルクリティカルトリガー。俺のダメージは一気に4へと上昇した。後続のアタックを防がなければ、絶体絶命の状況まで追い込まれていたはずだ。
こちらも一度だけクリティカルトリガーを引いたが、<キンナラ>のスキルを発動させるためのCBを与えただけとしか思えなかった。
現在、ファイトはホムラの3ターン目。状況はこんな感じだ。
俺の先攻で始まったこのファイトは、またしてもホムラのペースで進んだ。
さすがに最初のドライブチェックではクリティカルは出なかったものの、<ブレイジングフレア>へのスペリオルライドを成功させ、そのターンのアタックでダブルクリティカルトリガー。俺のダメージは一気に4へと上昇した。後続のアタックを防がなければ、絶体絶命の状況まで追い込まれていたはずだ。
こちらも一度だけクリティカルトリガーを引いたが、<キンナラ>のスキルを発動させるためのCBを与えただけとしか思えなかった。
現在、ファイトはホムラの3ターン目。状況はこんな感じだ。
【流馬 ダメージ4(裏1) 手札3枚】
場:戦場の嵐 サグラモール(V)、降魔剣士 ハウガン(右後R)
【ホムラ ダメージ3(裏3) 手札2枚】
場:ブレイジングフレア・ドラゴン(V)、鎧の化身 バー(中後R)、連撃のサザーランド(右前R)、従者 レアス(右後R)
場:戦場の嵐 サグラモール(V)、降魔剣士 ハウガン(右後R)
【ホムラ ダメージ3(裏3) 手札2枚】
場:ブレイジングフレア・ドラゴン(V)、鎧の化身 バー(中後R)、連撃のサザーランド(右前R)、従者 レアス(右後R)
【<ブレイジングフレア・ドラゴン>パワー10000→16000】
【<連撃のサザーランド>パワー8000→14000】
<ブレイジングフレア>や<キンナラ>のスキルによって、俺の戦線はすでにボロボロ。このターンをしのぐのがやっとだろう。
だが、ホムラのアタッカーは自身のスキルでパワーアップ。おまけにさっきのようにクリティカルトリガーを連発されれば、俺の敗北が決定する。
「――行くわよ。<バー>のブースト、<ブレイジングフレア>で<サグラモール>をアタック」
だが、ホムラのアタッカーは自身のスキルでパワーアップ。おまけにさっきのようにクリティカルトリガーを連発されれば、俺の敗北が決定する。
「――行くわよ。<バー>のブースト、<ブレイジングフレア>で<サグラモール>をアタック」
【<ブレイジングフレア・ドラゴン>パワー16000→24000】
俺の手札には、10000シールドを持つユニットが2枚ある。この2枚を切れば、敵ヴァンガードのアタックはまず通らないだろう。<サザーランド>のアタックは、必要経費と割り切って通すしかない。だが、相手がクリティカルトリガーを引いてきたときのことを考えると――
……何考えてるんだ、俺。
馬鹿馬鹿しい。どうせ2枚トリガーを引かれて終わりだ。考えるだけムダ。
「ノーガード」
俺が気だるげに告げると、ホムラは声のトーンを落とし、
「ツインドライブ。ファーストチェック」
ドライブチェックの宣言をした。俺のやる気の無さに触発されたかのように、カードをめくる動きに覇気が感じられない。
「……クリティカルトリガーね。クリティカルは<ブレイジングフレア>、パワーは<サザーランドに加えるわ」
ほら見ろ。やっぱり引いてきた。
ホムラのイカサマを疑っているわけではないが、こうもトリガーばかり引かれると、真面目に戦おうという気が失せてくる。
……何考えてるんだ、俺。
馬鹿馬鹿しい。どうせ2枚トリガーを引かれて終わりだ。考えるだけムダ。
「ノーガード」
俺が気だるげに告げると、ホムラは声のトーンを落とし、
「ツインドライブ。ファーストチェック」
ドライブチェックの宣言をした。俺のやる気の無さに触発されたかのように、カードをめくる動きに覇気が感じられない。
「……クリティカルトリガーね。クリティカルは<ブレイジングフレア>、パワーは<サザーランドに加えるわ」
ほら見ろ。やっぱり引いてきた。
ホムラのイカサマを疑っているわけではないが、こうもトリガーばかり引かれると、真面目に戦おうという気が失せてくる。
【<ブレイジングフレア・ドラゴン>クリティカル1→2】
【<連撃のサザーランド>パワー14000→19000】
「セカンドチェック――トリガーは無いわ」
「……えっ?」
「何で意外そうな顔してるの? あたしだって、毎回クリティカルトリガーを2枚引けるわけじゃないわ。条件があるの」
「条件?」
「ほら。早くダメージチェックしてよ」
ホムラの言葉は気になったが、答える気はなさそうだ。俺は大人しくダメージチェックに移る。
1枚目は、ドロートリガー。デッキからカードを1枚ドローし、手札に加える。パワーは当然ヴァンガードである<サグラモール>に加える。
「……えっ?」
「何で意外そうな顔してるの? あたしだって、毎回クリティカルトリガーを2枚引けるわけじゃないわ。条件があるの」
「条件?」
「ほら。早くダメージチェックしてよ」
ホムラの言葉は気になったが、答える気はなさそうだ。俺は大人しくダメージチェックに移る。
1枚目は、ドロートリガー。デッキからカードを1枚ドローし、手札に加える。パワーは当然ヴァンガードである<サグラモール>に加える。
【<戦場の嵐 サグラモール>パワー10000→15000】
2枚目をめくろうとしたところで、手が止まった。
これで、終わりなんだな。
このファイトが終わったら、俺はカードを売り払い、ヴァンガードをやめる。
全国大会の決勝で、アキラと戦う――そんな子供じみた夢を、放り出して。
「思い出」として頭の奥にしまい込んで、いつしか忘れていく。
ヴァンガートにかけた情熱も。夢も。
全部忘れていくんだ。
全国大会の決勝で、アキラと戦う――そんな子供じみた夢を、放り出して。
「思い出」として頭の奥にしまい込んで、いつしか忘れていく。
ヴァンガートにかけた情熱も。夢も。
全部忘れていくんだ。
「――ここで、本当に諦めちゃうの?」
ホムラの小さな声が、頭の芯まで響いた。
見れば、ホムラは深くうつむき、細かく体を震わせている。それは怒りのせいか、悲しみのせいなのか。
「君のヴァンガードにかける想いは、その程度だったの? ちょっとつまづいたくらいで、ちょっと挫折を味わったくらいで! 全部諦めちゃえるようなものだったの!?」
徐々に声を荒げながら、ホムラはうつむいたまま言葉を吐き出した。
――そんなはずねえだろ!
そう言いたいのを、必死の思いでこらえた。
「……会ったばかりのアンタに何が分かるんだよ。余計な口出しすんな」
ホムラとは、満足に会話をしたことすらない。ただ、2回ファイトをしただけだ。
そんなヤツに、俺がどれほど悩み、苦しんだかを語るなんて、時間の無駄でしかない。
「……そう、かもね。でも、もうひとつだけ言わせて」
ホムラが顔を上げる。俺にとっては眩しいくらいの光を宿した瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
見れば、ホムラは深くうつむき、細かく体を震わせている。それは怒りのせいか、悲しみのせいなのか。
「君のヴァンガードにかける想いは、その程度だったの? ちょっとつまづいたくらいで、ちょっと挫折を味わったくらいで! 全部諦めちゃえるようなものだったの!?」
徐々に声を荒げながら、ホムラはうつむいたまま言葉を吐き出した。
――そんなはずねえだろ!
そう言いたいのを、必死の思いでこらえた。
「……会ったばかりのアンタに何が分かるんだよ。余計な口出しすんな」
ホムラとは、満足に会話をしたことすらない。ただ、2回ファイトをしただけだ。
そんなヤツに、俺がどれほど悩み、苦しんだかを語るなんて、時間の無駄でしかない。
「……そう、かもね。でも、もうひとつだけ言わせて」
ホムラが顔を上げる。俺にとっては眩しいくらいの光を宿した瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
「あたしが憧れたファイターは、どんな状況でも絶対諦めなかった。例え負けたとしても、何度も何度も立ちあがった。周りの人間に笑われようと、最後の最後までもがいてたわ」
「…………」
ふと、昔の自分の姿が頭をよぎる。
あの頃の――アキラと一緒にヴァンガードファイトしていた頃の俺は、みっともないくらいに負けず嫌いだった。
絶対に諦めない! それが口癖だった。
いつからだろうか。
敗北を、簡単に受け入れられるようになったのは。
いつからだろうか。
これは無理だと決めつけ、早々に勝負を投げるようになったのは。
いつからだろうか。
自分の限界を、自分で決めたのは。
「ダメージ、チェック」
カードをめくる指が、震えた。
負けたくない。
そう思っている自分がいることに気付く。
悔しい。負けたくない。ここで終わりにしたくない。
全部、放り出したくない。
ふと、昔の自分の姿が頭をよぎる。
あの頃の――アキラと一緒にヴァンガードファイトしていた頃の俺は、みっともないくらいに負けず嫌いだった。
絶対に諦めない! それが口癖だった。
いつからだろうか。
敗北を、簡単に受け入れられるようになったのは。
いつからだろうか。
これは無理だと決めつけ、早々に勝負を投げるようになったのは。
いつからだろうか。
自分の限界を、自分で決めたのは。
「ダメージ、チェック」
カードをめくる指が、震えた。
負けたくない。
そう思っている自分がいることに気付く。
悔しい。負けたくない。ここで終わりにしたくない。
全部、放り出したくない。
――諦めたくないッ!