遊戯王 New stage 番外編 ラスト・ドライブ―12
虫の鳴き声ひとつしない、静かな夜だった。
気分転換にアジトから出た切は、伸びをして夜空を見上げる。
2週間前の工場での一件で城蘭が壊滅して以来、レボリューションに目立った敵はいなくなった。
高良と切は情報交換をしつつ、レボリューション――いや、光坂の動向を探っていた。疑惑を確証に変え、レビンをはじめとしたメンバーを説得するためだ。何一つ証拠のない現段階で「光坂はどこかの組織と通じている可能性がある!」なんて言っても、相手にされるどころか逆に追いだされるのが関の山だ。それくらい光坂の信頼は厚い……特に、レビンからの信頼は。
光坂が高良の両親を殺した犯人であるという可能性はほぼ皆無に等しかったが、それでも高良は調査をやめなかった。
「元々、信憑性がほぼゼロの情報を頼りにここまで来たんだ。空振りでも構わねえさ」
そう言った高良の笑顔が、少し寂しげだったのを覚えている。
夜の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、吐き出す。
――ヒノくん。
高良とレボリューション。
切にとってはどちらも大切な存在だ。
しかし、今は高良のほうに天秤が傾きかけている。
以前よりも調査に積極的になれるのは、居場所が崩壊する恐怖を払拭したのではなく、単に他の居場所を見つけたからではないだろうか。
心のもやもやは、常に晴れることがない。
――それでも、今はヒノくんの手伝いをしなくちゃ。疑惑の真実が分かれば、きっとレボリューションも上手くいくはず。
決意を改めるように頬を両手で軽く叩き、アジトの中に戻ろうとする。
「ん?」
すると、切がいる場所とは別の出入り口から、外に出てきた姿を見つける。
「……ヒメちゃん?」
アジトから出てきた姫花は、わき目も振らずに歩いていく。
――嫌な予感がする。
姫花の表情は、出会った当初の「冷たい」それだった。
気分転換にアジトから出た切は、伸びをして夜空を見上げる。
2週間前の工場での一件で城蘭が壊滅して以来、レボリューションに目立った敵はいなくなった。
高良と切は情報交換をしつつ、レボリューション――いや、光坂の動向を探っていた。疑惑を確証に変え、レビンをはじめとしたメンバーを説得するためだ。何一つ証拠のない現段階で「光坂はどこかの組織と通じている可能性がある!」なんて言っても、相手にされるどころか逆に追いだされるのが関の山だ。それくらい光坂の信頼は厚い……特に、レビンからの信頼は。
光坂が高良の両親を殺した犯人であるという可能性はほぼ皆無に等しかったが、それでも高良は調査をやめなかった。
「元々、信憑性がほぼゼロの情報を頼りにここまで来たんだ。空振りでも構わねえさ」
そう言った高良の笑顔が、少し寂しげだったのを覚えている。
夜の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、吐き出す。
――ヒノくん。
高良とレボリューション。
切にとってはどちらも大切な存在だ。
しかし、今は高良のほうに天秤が傾きかけている。
以前よりも調査に積極的になれるのは、居場所が崩壊する恐怖を払拭したのではなく、単に他の居場所を見つけたからではないだろうか。
心のもやもやは、常に晴れることがない。
――それでも、今はヒノくんの手伝いをしなくちゃ。疑惑の真実が分かれば、きっとレボリューションも上手くいくはず。
決意を改めるように頬を両手で軽く叩き、アジトの中に戻ろうとする。
「ん?」
すると、切がいる場所とは別の出入り口から、外に出てきた姿を見つける。
「……ヒメちゃん?」
アジトから出てきた姫花は、わき目も振らずに歩いていく。
――嫌な予感がする。
姫花の表情は、出会った当初の「冷たい」それだった。
「嘘でしょ……」
声に出してしまうほど、切は衝撃を覚えた。
姫花が入っていった建物。それは、高良が住んでいる部屋がある雑居ビルだった。
――まさか、私たちの動きが気付かれたの!?
心臓の鼓動が、嫌が応にも早くなる。
何故、姫花なのか。
一番仲良くなったと言っても過言ではない少女が、何故このビルに入っていったのか。
想像したくなかった。
焦る気持ちを抑えつつ、切は姫花に気付かれないようビルの中に足を踏み入れる。
途端。
重力が増したと錯覚するほどのプレッシャーが、切を襲った。
「く……!」
ふらつく体を懸命に動かし、視線を前に向ける。
そこには、受け入れがたい光景が広がっていた。
姫花が召喚し、実体化させたであろう<大将軍 紫炎>。
くすんだ甲冑を身にまとった将軍が握る刃が、大切な人に向かって振り下ろされようとしている。
声に出してしまうほど、切は衝撃を覚えた。
姫花が入っていった建物。それは、高良が住んでいる部屋がある雑居ビルだった。
――まさか、私たちの動きが気付かれたの!?
心臓の鼓動が、嫌が応にも早くなる。
何故、姫花なのか。
一番仲良くなったと言っても過言ではない少女が、何故このビルに入っていったのか。
想像したくなかった。
焦る気持ちを抑えつつ、切は姫花に気付かれないようビルの中に足を踏み入れる。
途端。
重力が増したと錯覚するほどのプレッシャーが、切を襲った。
「く……!」
ふらつく体を懸命に動かし、視線を前に向ける。
そこには、受け入れがたい光景が広がっていた。
姫花が召喚し、実体化させたであろう<大将軍 紫炎>。
くすんだ甲冑を身にまとった将軍が握る刃が、大切な人に向かって振り下ろされようとしている。
迷う暇は、なかった。
「ダメ! ヒメちゃん!!」