にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 ラスト・ドライブ―7

「ソリットビジョンを実体化する能力か……なるほどな」
「……案外すんなり受け入れるのね。もしかして、見たことあるの?」
「いや、『こういうの』を見るのは俺も初めてだ。噂くらいは聞いたことあるけどな」
 まるで「他の力」を見たことがあるような物言いだったが、高良はそれ以上話を続ける気はなさそうだった。
 奇襲を仕掛けてきた男を含め、城蘭メンバーは全員この場を去った。
「……それで? 私に聞きたいことって?」
 場を仕切り直すため、ふうとため息をついてから切り出す。
 城蘭の襲撃があったためうやむやになってしまったが、高良はレボリューションの情報を聞き出すために切に接触してきたはずだ。
 が。
「は?」
 間抜けな声を上げた高良を見て、
「『一応』助けてもらったわけだから、恩を返すために質問に答えてあげようと思ったらこれだよ」
 一応、の部分を強調し、切はさっさと帰ろうと踵を返す。
「わー待て待て! わりぃわりぃちょっと忘れてただけだって!」
 それを見た高良が、慌てて止めに入る。まあ本気で帰る気はなかったが。
 蔑みの意を込めた視線でジロリと睨むと、高良はうっ、と気後れする。
 そして、コホンと咳払いをしてから話し始めた。
「えーとだな。今現在レボリューションのメンバーの中で、シティから来たやつっているか? 出身がシティじゃなくてもいい。一時期シティに滞在してたことがあるとか、裏ルートを使って潜り込んだことがあるとか」
「シティに……?」
 予想していたものとは大きくずれた質問に、切の思考が止まる。高良が治安維持局の関係者なら、レボリューションの組織を把握するための質問をしてくると思っていたのに。
 数秒間を置いて、切はメンバーたちの昔話を思い出す。さすがに全員の出身地までは分からないが、シティから流れてきた人間がいるかもしれない。
 レビンとシアのハウンツ兄妹は幼いころからサテライトで暮らしていたはずだし、ジェンスもゼロリバースの以前から貧困層にいたと言っていた。大石は……もしシティに行ったことがあるなら全力で自慢しているはずだから除外していい。
 あとは――光坂や姫花と言った新参組か。
 姫花は昔のことを覚えていないと言っていたし、光坂もレボリューションに入る以前のことは話したがらない。
 ……光坂慎一。
 彼が入ったのは、チームサティスファクションに敗北し、レボリューションが存続の危機に立たされていたときだ。そして、レビンが変わり始めた時期でもある。
 疑いたくはないが、光坂を「そういう目」で見てしまうことは事実だった。
「……なるほどな。その光坂ってやつが怪しいってことか」
「え?」
 納得した様子で両腕を組み、うんうんと頷く高良。
「ま、まさかアンタ私の心を読めるんじゃ――」
「いや。全部口に出してたぞ」
「えっ」
 呆然とする。
 切が自分の失態を把握するより早く、高良は彼女の目の前に立つと、両腕を腰に当てて胸を張る。
「よし分かった! 俺がその光坂ってやつのことを調べてきてやるよ!」
「はぁ!? どうしてそういう話になるわけ?」
 妙な事を言い出した高良に対し、切は声を荒げる。
「だって悩んでるみたいだしよ。レボリューションの情報が手に入るのは俺にとっても有益だし、光坂ってやつが俺の探していた人物の可能性もある」
「……」
「代わりに、レボリューションが現在置かれてる状況を教えてくれないか? 大丈夫、ヘマはしねえさ」
「――その言葉を信じろっていうの?」
 城蘭の襲撃から助けてもらったものの、それだけでチームの情報を話してしまうのは、いくらなんでも危険すぎる気がする……今さらかもしれないが。
 高良がセキュリティの人間だった場合、アジト等の重要情報を漏らせば、一斉摘発のチャンスを与えることになるのだ。そうなれば、全員まとめて収容所送りにもなりかねない。
 迷っていることに気付いたのか、高良が切の両目をじっと見つめてくる。
 その真っすぐな瞳に、何故だか胸の奥が熱くなるのを感じた。
「言葉は信じなくていい」
 自分の意志が伝わるように、視線に力を込めながら、高良は告げる。

「俺を、信じてくれ」

 不思議だった。
 会ってからまだ1時間も経っていないのに――友永切は、高良火乃という人間を信じることにしてしまったのだ。