遊戯王 New stage　サイドＭ　１－３ - にわかオタクの雑記帳

「――俺はＡＯＪサイクロン・クリエイターを召喚！」
　鋼鉄の翼を広げ、橙色の機械の鳥が羽ばたく。
「手札を１枚捨て、ＡＯＪサイクロン・クリエイターの効果を発動！　フィールド上に存在するチューナーの数だけ、魔法・罠カードを手札に戻す！」

＜Ａ・Ｏ・Ｊ　サイクロン・クリエイター＞
チューナー（効果モンスター）
星３/闇属性/機械族/攻1400/守1200
手札を１枚捨てて発動する。
フィールド上に表側表示で存在するチューナーの枚数分だけ、
フィールド上に存在する魔法・罠カードを手札に戻す。
この効果は１ターンに１度しか使用できない。

「くっ……！」
「存在するチューナーは１体。よって俺は貴様の光の護封剣を手札に戻す！」
　宇川を守っていた光の剣が消え、彼の手札へと舞い戻っていく。これで、＜光の護封剣＞の再利用を許すことになったが、このターンでの攻撃が可能になった。
「さらに伏せカードを起動！　罠カードリミット・リバース！　俺は墓地のＡ・ボムを蘇生させる！」

＜リミット・リバース＞
永続罠
自分の墓地から攻撃力１０００以下のモンスター１体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

　紫の球体が、攻撃表示で場に特殊召喚される。
　これで役者はそろった。
「行くぞ！　レベル２のＡ・ボムに、レベル３のサイクロン・クリエイターをチューニング！」
　＜ＡＯＪサイクロン・クリエイター＞が、新たなるモンスターを召喚するために光の玉へと変化し、＜Ａ・ボム＞に取り込まれる。
「正義の軍団よ！　眼前に立ちふさがる敵に、裁きの鉄槌を下せ！」
　輝王の背後に、巨大な光の柱が立ちのぼる。

「シンクロ召喚！　粉砕せよ！　ＡＯＪカタストル！！」

　緑のモノアイを光らせ、流線形の白いボディから四本の足を生やしたロボットがフィールドに出現する。各所に見られる金色のパーツが、鈍い輝きを放つ。

＜Ａ・Ｏ・Ｊ　カタストル＞
シンクロ・効果モンスター
星５/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

「くっ……？　そのモンスターは！」
　さすがの宇川も驚愕をあらわにする。
「ＡＯＪアンリミッターの効果を発動！　このカードをリリースすることで、場のＡＯＪと名のついたモンスター１体の攻撃力を２倍にする！！」
　＜ＡＯＪアンリミッター＞の先端についた針が、＜ＡＯＪカタストル＞のボディに差し込まれ、エネルギーを注入する。
　モノアイの輝きが増し、モーターの激しい駆動音が響きわたる。＜ＡＯＪカタストル＞の攻撃力は4400まで上昇した。
「カタストル！　エーリアン・リベンジャーに攻撃だ！」
　＜ＡＯＪアンリミッター＞の効果はエンドフェイズまでしか適応されないため、このターンで＜エーリアン・リベンジャー＞を倒しておかなければ、次のターン、＜エーリアン・リベンジャー＞の効果でＡカウンターを乗せられ、攻撃力の下がった＜ＡＯＪカタストル＞が破壊されてしまう。
　――しかし、輝王が＜エーリアン・リベンジャー＞を標的にしたのはそれが狙いではない。
　＜ＡＯＪカタストル＞は、闇属性以外のモンスターと戦闘を行ったとき、ダメージ計算を行わずに相手を破壊する効果を持つ。
　普段なら＜エレメントチェンジ＞と組み合わせることで大抵のモンスターは破壊できる強力な効果だが、相手プレイヤーにダメージを与えたいときは話が変わる。
　つまり、相手モンスターが闇属性でなければ、戦闘ダメージが発生しない――
「手札から速攻魔法発動！　リミッター解除！！」
「なっ……！？」

＜リミッター解除＞
速攻魔法（制限カード）
このカード発動時に自分フィールド上に存在する
全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。
エンドフェイズ時この効果を受けたモンスターカードを破壊する。

「このカードの効果により、カタストルの攻撃力は8800！」
　宇川のフィールドに伏せカードはない。＜ＡＯＪカタストル＞の攻撃を止めることはできない。
「裁きの時間だ――ジャッジメント・カタストロフ！」
　＜ＡＯＪカタストル＞が前足についた金の爪を地面に穿つ。
　＜エーリアン・リベンジャー＞の真下からゴゴゴ……と地鳴りが響き、金色の光が槍となって復讐者の体を串刺しにする。
「グガアアアアアッ！？」
　身につけた鎧ではその槍を防ぐことは叶わず、断末魔の叫びを残し砕けた。
【宇川ＬＰ4000→0】

「まさか……一撃で勝負を決めるなんて……うわっ！」
　小規模な爆発と共に、敗北した宇川のデュエルディスクから煙が上がった。
「くっ……デュエルに敗北した者のデッキを破壊する……まったく厄介な機能をつけてくれたものです」
　悔しさをにじませた声色で、宇川がつぶやく。
　……これで決着か。ようやく友の敵に近づくことができる。
（火之……お前に何があったんだ？）
　「レボリューション」を探る中で命を落とした親友の姿を思い出す。
　なおも白煙はその勢いを増し――遅れて輝王は異変に気づいた。ほんの少し気を緩めたことが、事態の把握を遅らせたのだ。
「くふ。くふふふふふ！！」
　いつのまにか２人のデュエルディスクをつないでいたロープが断ち切られ、立ち込めた煙は輝王の視界を奪っていく。
「宇川ッ！　貴様――」
「この借りは必ず返しますよ、輝王クン。たっぷりと利子を付けてね！」
　宇川の声が聞こえてくるが、どこが発信源なのか分からない。輝王は白煙を掻き分けながら走るが、その姿を捉えることができない。
「それでは。ごきげんよう」
「待てッ！！」
　――煙が晴れたときには、テロリストの姿は忽然と消えていた。
「……ッ！！」
　輝王は体中に渦巻く憤怒を右拳に込め、コンクリートの壁を殴りつけた。