にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 13

「俺のターン。ドロー」
 戦う理由の軽さを知れ――カードを手札に加えたのち、輝王はレビンの言葉を反芻する。
 彼らは――デュエルギャング「レボリューション」は、その名の通り革命を起こそうとしている。貧困に喘ぎ、暴力に脅え、理不尽を耐えるサテライトの人々を救うために。彼らの行動は、絶望の底にいる人々の心を揺り動かすのだろう……最も、革命に失敗すれば、より深い絶望が待っているだろうが。
 輝王は治安維持局所属の捜査官だ。人々を救うためとはいえ、「法」を犯す者を見過ごすわけにはいかない。
 ――と、胸を張って言えればよかったんだがな。
 輝王がこの場に立っているのは、セキュリティの捜査官だからというよりも、切を助けたいから、という思いのほうが強い。
 一方の創志は、弟を連れ戻すために戦っている。
 世界の変革と比べれば、どちらも「軽い」理由なのかもしれない。
 高良なら「戦う理由に重いも軽いもねえだろ!」と言いそうだが、輝王自身はレビンの言葉を否定しない。
「確かに、お前が背負っているものはとてつもなく重いのかもしれない。俺たちごときが軽々しく止めてはいけないのかもしれない」
「輝王……!?」
 突如として始まった輝王の独白に、創志が怪訝な顔を見せた。
「だが」
 やや語気を強め、輝王は言い放つ。

「――それは、退く理由にはならない」

 例え「陳腐な理由」と罵られようと、自分を信じてくれた少女のために、勝手に下がるわけにはいかなかった。
「……へえ。言うじゃないか」
「フン」
 輝王の宣言に、光坂とレビンはそれぞれの反応を見せる。光坂はくっくっくっと含み笑いを漏らし、レビンは睨み返してきた。
「――俺も同じだ。ここまで来て引き下がれるかよ! アンタたちを倒して、俺は信二のところへ行く!」
 輝王に同調するように、創志が身を乗り出して吠える。
 退けないのは向こうも同じだ。なら、実力で倒すしかあるまい。
「俺は<AOJアンカーナイト>を召喚。効果で墓地の<A・ボム>を特殊召喚し、そのままチューニングする」

<A・O・J アンカーナイト>
チューナー(効果モンスター)(オリジナルカード)
星3/闇属性/機械族/攻1200/守1000
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
レベル2以下の「A」と名のついたモンスターを1体表側守備表示で特殊召喚することができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。

「君のことは少し調べさせてもらったけど……またその手かい? 安定といえば聞こえはいいが、同じ戦術を続けるのは危険だよ。実力者との対戦では特にね。もっと進化を求めるべきだ、輝王君」
「……正義の軍団よ。眼前に立ちふさがる敵に、裁きの鉄槌を下せ。シンクロ召喚――粉砕せよ<AOJカタストル>」
 龍のような曲線を描き、鋭い四足を地面に穿つ白金の兵器――<AOJカタストル>。その強力な効果で、何度も輝王を勝利に導いてきたモンスターだ。

<A・O・J カタストル>
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 輝王は信じている。
 進化を求め続けた結果こそが、この<AOJ>デッキなのだと。
「バトルフェイズに入る」
 光坂の場には攻撃表示の<レアル・ジェネクス・ターボ>と裏守備モンスター。レビンの場には攻撃力の上がった<魔轟神ガネーシャ>がいる。
 <魔轟神ガネーシャ>の攻撃力は、下級モンスターでも容易に越えられる。それに、光属性モンスターは残しておいた方が、<AOJ>にとってやりやすいだろう。
 そうなれば、必然的に狙いは光坂のモンスターになる。
 光坂の場に伏せカードはない。先のターンのように攻撃を防ぐことはできないはずだ。
 ――<レアル・ジェネクス・ターボ>を攻撃表示で残した理由はなんだ?
 伏せカードが<威嚇する咆哮>であったため、攻撃反応型罠でこちらのモンスターを破壊することが目的ではなさそうだ。となれば、<レアル・ジェネクス・ターボ>を破壊してほしかったのか、もしくは戦闘ダメージを受けたかったのか。もし後者だった場合、<AOJカタストル>ならば相手にダメージを与えることなくモンスターを破壊できる。
「…………」
 攻撃を防がれたときの創志の反応を見るに、彼は何かを警戒していた。その警戒からは予想できないリアクションをされ、困惑したのだろう。
 ――伏せモンスターも気になるが、ここは!
「<AOJカタストル>で<レアル・ジェネクス・ターボ>を攻撃! ジャッジメント・カタストロフ!」
 <AOJカタストル>が前足2本を振り上げ、もう一度地面に穿つ。地面が隆起し、<レアル・ジェネクス・ターボ>に迫る。
 レビンが伏せカードを使う気配はない。この攻撃は通る――
 地面から飛び出した金色の槍が緑の装甲を貫き、<レアル・ジェネクス・ターボ>が砕け散った。
「……<AOJカタストル>は闇属性以外のモンスターと戦闘を行うとき、ダメージ計算を行わずにモンスターを破壊する。この戦闘でダメージは発生しない」
「とりあえずは正解だと言っておこうか。だろう? 創志」
「…………」
 話を振られた創志は黙ったままだ。光坂は肩をすくめると、ターンを進行するように促してくる。
「バトルフェイズを終了する。ターンエンドだ」

【光坂LP4000】 手札5枚
場:裏守備モンスター
【創志LP4000】 手札5枚
場:A・ジェネクストライフォース(攻撃)、裏守備モンスター、伏せ1枚
【レビンLP4000】 手札2枚
場:魔轟神ガネーシャ(攻撃)、伏せ1枚
【輝王LP4000】 手札4枚
場:AOJカタストル(攻撃)