にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-21】

「俺のターン!」
 ここまで、自分は2人の活躍を横目で見ているしかなかった。
 輝王のように的確な援護ができたわけでもなく、治輝のように相手の罠をかいくぐって敵を撃破したわけでもない。先走ったせいで相手の邪神にとって有利な状況を作り出してしまい、その後は自分の身を守ることで精一杯だった。
 だが、そんな醜態を晒すのはもう終わりだ。
 創志は覚悟を込めて口にした。<邪神イレイザー>は自分が倒すと。
 その言葉を偽りにしないためにも、絶対に勝利へつながるキーカードを引いてみせる――想いを指先に込め、創志はカードをドローする。
「――来た! 魔法カード<死者蘇生>を発動!」
 創志が発動したのは、敵味方関係なく、あらゆる墓地からモンスターを蘇生させる魔法カード。強すぎる効果ゆえに、かつては禁断の術として封じられていたカードだ。

<死者蘇生>
通常魔法(制限カード)
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

「<死者蘇生>だと!? 俺様の邪神を奪う気か? だが、残念だったな。邪神の名を冠するカードは、特殊召喚を行うことができないんだよ!」
「ハッ、例え特殊召喚できたとしても、テメエのモンスターなんていらねえよ! それじゃ、お前と同じになっちまうじゃねえか」
「何……!?」
 忌々しげに顔を歪める砂神に対し、創志は吠える。
「俺は弱い。サイコパワーだけじゃない。デュエルの腕前だって未熟だ。けど、お前のように誰かの力を奪ってまで強くなりたいとは思わない。俺は、俺のまま強くなる」
「世迷言を! チンケな決意を口にしたところで、何かが変わるというのか!?」
「変わらねえ。変わらねえさ。だから俺は――」
 あの時もそうだった。
 弟を助けるため、先生と慕っていた男に立ち向かったデュエル。
 あの時も――創志は1人ではなかった。
「遠慮なく頼らせてもらうぜ。仲間を!」
 創志が手にしたカード、<死者蘇生>が眩い光を放ち、地面に完全蘇生を意味する魔法陣が浮かび上がる。陣を形成する線に光が走り、暴走寸前まで高められた魔力が、戦いに敗れ散っていったモンスターを呼び戻す。
「輝王! 借りるぜ、お前のモンスター」
「……ああ」
 訊かれるまでもないといった満足げな表情を浮かべた輝王が、浅く頷く。
 答えを聞いた創志は、高々と蘇生したモンスターの名前を告げる。
「来い――<AOJカタストル>!」
 現れたのは、鋭い四肢を砂の大地に打ち込み、滑らかに磨き上げられた流線型のボディから静かな駆動音を響かせる、<AOJ>の戦闘兵器だ。その効果の凶悪さは、劣勢を覆すに値する。

<A・O・J カタストル>
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

「…………」
 砂神は押し黙ったまま、ピラミッドの頂上から白金の兵器を睥睨する。
 <AOJカタストル>は強力なモンスターだが、相手フィールド上のモンスターの属性を変更する<エレメントチェンジ>が消滅した時点で、闇属性である<邪神イレイザー>を突破する事はできない。もし輝王の伏せカードが2枚目の<エレメントチェンジ>であった場合、<邪神ドレッド・ルート>の攻撃時に発動するはずだ。温存する理由は限りなく薄い。
 だからこそ、<AOJカタストル>を蘇生させた事には、単独突破ではない他の理由がある。砂神もそれに気付いたから、何も言わないのだ。
「<マシン・デベロッパー>の効果を使うぜ。このカードを墓地に送ることで、乗っているジャンクカウンター数以下のレベルを持つ機械族モンスター1体を、墓地から特殊召喚できる」

<マシン・デベロッパー>
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する
機械族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする。
フィールド上に存在する機械族モンスターが破壊される度に、
このカードにジャンクカウンターを2つ置く。
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
ジャンクカウンターの数以下のレベルを持つ
機械族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。

 <マシン・デベロッパー>に乗っていたジャンクカウンターの数は10。大抵のモンスターは蘇生できる数だ。
「俺が蘇生させるモンスターはコイツだ! 頼むぜ、相棒――<ジェネクス・コントローラー>を特殊召喚!」
「チューナーモンスター……!」
 永続魔法が消えた代わりに、頭でっかちな機械の小人がフィールドに現れる。創志の<ジェネクス>デッキにとって、核になるモンスターだ。

<ジェネクス・コントローラー>
チューナー(通常モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻1400/守1200
仲間達と心を通わせる事ができる、数少ないジェネクスのひとり。
様々なエレメントの力をコントロールできるぞ。

 <AOJ>と<ジェネクス>。2つの機械が交わることによって、辿りつく進化の形がある。
「レベル5の<AOJカタストル>に、レベル3の<ジェネクス・コントローラー>をチューニング!」
 機械の小人が両腕を限界まで開いて、自らの体を3つの光球へと変える。<AOJカタストル>が宙空へと上昇し、3つの光球を体内へと取り込んだ。
 そして、空を覆う闇を切り裂くように、光が走る。
「折れぬ正義の魂が、進化の光を照らしだす――」
 <-蘇生龍- レムナント・ドラグーン>が幻想を具現した竜ならば。
 これは、人々の技術の結晶――叡智の輝きの具現。
 幻想に魅せられた天才たちが、持てる技術の粋を集めて作り上げたカタチ。
シンクロ召喚!」
 光が弾け、鋼鉄の翼が広がる。
 純白の装甲が闇の中に浮かび上がり、装甲に走る黄金のラインが力強さと神々しさを与える。
 機械特有の固さを残しながらも――その姿は、間違いなく竜だった。
「新たなる舞台へ! 導け……<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>!!」
 人工物であるにも関わらず、瞳に光が灯った瞬間、魂が宿ったかのような錯覚に陥る。
 辿りついた進化の先は、「終焉」ではなく、「創造」。
 創志1人の力では為し得ないシンクロ召喚が、邪神を屠るためのピースとなる。

<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>
シンクロ・効果モンスター(オリジナルカード)
星8/闇属性/機械族/攻2800/守2800
「ジェネクス・コントローラー」+「A・O・J」と名のついたシンクロモンスター1体以上
このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にならず、
闇属性モンスター以外との戦闘では破壊されない。
このカードの攻撃力は墓地に存在する「ジェネクス」または「A・O・J」と名のついた
モンスターの数×100ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、自分の墓地に存在するこのカード以外の「ジェネクス」または「A・O・J」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚することができる。

「<クレアシオン・ドラグーン>は、墓地に存在する<ジェネクス>と<AOJ>モンスターの数だけ攻撃力がアップする! 力を奪うんじゃない……仲間の力を借りて、<クレアシオン>は強くなる! ジャスティス・フォース!」
 創志と輝王のデュエルディスクから蛍火のような淡い光が溢れ、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>に吸い込まれていく。
 墓地の<ジェネクス>と<AOJ>モンスターの合計は8体。<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の攻撃力は800ポイント上昇し、3600。
「行くぜ、砂神! テメエの邪神をぶっ飛ばしてやるよ!」
 創志にとって、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>をシンクロ召喚するのは、これが二度目だ。かつて、「終焉」の闇を払った機竜ならば、<邪神イレイザー>を突破できる。創志は信じていた。