にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【幕間-3】

「モンケッソクカゲキムシャシエンキザンキザン」
 切が不可思議な呪文を唱えると、デュエル相手だったカラクリ人形が爆発した。
「それってジャパニーズ忍術ですか?」
「わしは普通にデュエルしてただけなんだがのう……初手は素晴らしかったがの」
 切と背中合わせでデュエルをしていたかづなが、興味津々といった調子で尋ねてくるが、残念ながら魔法でも忍術でもなく、ただ永続魔法を発動させて、モンスターを召喚しただけである。サイコパワーを使ったわけでもない。切の使う<真六武衆>にとって、理想的な回り方だっただけだ。
「こいつら、比良牙と同じ<カラクリ>デッキを使ってますけど、あいつほど強くはないですね。ただ、この数を相手にしてたら……」
 切の隣で渋い顔をしながらデュエルをしているのは、巨大な手甲のようなディスクを展開させた純也だ。そのデュエルディスクによく似たモンスター兼装備カードの<アームズ・エイド>を装備した<紅蓮魔闘士>が、<カラクリ忍者 七七四九>を打ち砕き、勝利を収めていた。
 謎の大型装置の駆動によって創志の姿が消えたあと、残された切、かづな、純也の3人は、突如現れたカラクリ人形の軍団とのデュエルを余儀なくされていた。純也の言うとおり個々の強さはそれほどではないものの、連戦を続けていれば次第に精神が疲弊し、プレイングに乱れが生じてくる。加えて、デュエルに負けることが死に直結しているという緊張感も、精神を削る要因となっていた。
「デュエルダ」
 勝利した純也の前に、新たなカラクリ人形が立ちふさがる。響く声は比良牙のような滑らかなものではなく、機械で作られたであろういかにもな合成音だった。
「このまま勝ち続ければ、ギネスに載りますかね。私たち」
「冗談を言ってる場合ではないぞ、かづな。創志の行方も分からんというのに……」
「創志さんのことは心配ですけど、今は自分たちのことを何とかしないと。このままデュエルを続けていても埒が明きません」
「そうじゃな……」
 純也の言うことは最もだが、具体的な打開策は思いつかない。切の前にも別のカラクリ人形が現れ、再びデュエルが始まる。
「でも、この子たちが律儀にデュエルしてくれてよかったですよね」
「……どういうことじゃ?」
「だって、この数のカラクリ人形が力づくで襲いかかってきたら、私なんてひとたまりもないですもん。スドちゃんもいないし……」
「……ううむ、確かに。わしや純也はサイコパワーが使えるとはいえ、それほど力は強くない。多勢に無勢と言ったところか」
 切とかづなが言葉を交わした瞬間。
 ピタリ、とカラクリ人形たちの動きが止まった。
「な、何じゃ!?」
 視界に映るだけでも30体、おそらくは100体以上いるであろうカラクリ人形たちが一斉に動きを止めた光景は、不気味としか言えない。
 1秒、2秒、3秒……10秒ほど動きを止めた後、

「リアルファイトダ」

 カラクリ人形たちは装着していたデュエルディスクを取り外し、腰に差していた棍棒を手にした。
「…………えーと、これは」
 若干のけぞり気味になりながら、かづながかすれた声を出す。同時に、切の額を冷や汗が伝った。
「ひとつ、言っていいですか?」
 展開していたディスク部分からカードを取り外し、デュエルディスクを手甲の状態に戻した純也が、ため息を吐く。呆れたような表情を浮かべ、一言。
「余計なこと言わないでくださいよ!!」
「えええええええええ!?」
 かづなの悲鳴を合図に、カラクリ人形の群れが棍棒を振りかざして襲いかかってくる。
「く……ここは応戦するしかあるまい!」
 切は腰に差していた刀を抜き放ち、飛びかかってきたカラクリ人形の胴を居合で両断する。2つに分かれた人形の上半身は切の遥か後方へと吹き飛び、下半身は地面に突き刺さる。
「かづな! わしの後ろに――」
 戦闘能力が無いであろうかづなをかばうため、切は棍棒の一撃を受け流しつつ叫ぶ。
 が、時すでに遅し。
 かづなの目の前には、その頭蓋を打ち砕かんと、カラクリ人形の拳が振り下ろされようとしていた。
「っ――」
 切は瞬時に身を反転させ、かづなを引き寄せようと手を伸ばす。
 届かない。
 間にあわない。
 最悪の光景が脳裏をよぎり、切の全身が冷え切った。
 刹那。
 ドスン! という地鳴りと共に、かづなの前にいたカラクリ人形の群れがまとめて吹き飛んだ。
 真横から何かに薙ぎ払われたように団子状態になって吹き飛んだカラクリ人形たちは、近くに生えていた枯れ木にぶつかってバラバラになる。
「かづなおねえちゃん! よかった、間にあって……」
「七水ちゃん!? 無事だったんですね!」
 切やかづなを覆うように影が落ちる。見上げれば、何故今まで気付かなかったのか不思議なくらいの巨大な土人形――ゴーレムが現れていた。
 その肩には、かづなが「七水ちゃん」と呼んだ大人しそうな少女と、
「リソナもいるですー!」
 七水とは対照的に、活発そうな金髪の少女が乗っていた。
「り、リソナまでいるのかの? これは一体――」
 突如現れたゴーレムと2人の少女に目を奪われていると、
「ウゴガアアアアアアア!」
 切の背後から、棍棒を振りまわしたカラクリ人形が奇襲を仕掛けてきた。
「くっ!?」
 切は再び体を反転させ、そのままの勢いで斬り上げようとしたのだが、
「クリムゾン・トライデント!」
 切の斬撃よりも早く、カラクリ人形が炎の槍によって貫かれた。
「神楽屋!?」
「ボーッっとすんなよ、切! 俺たちがここに現れた理由なんて、大体想像つくだろうが! お前も、そっちの坊主と嬢ちゃんも、この世界に飛ばされてきたんだろ?」
「う、うむ!」
「ハッ、だったら話は早い、まずはコイツらを片づけるぞ!」
 意気込む神楽屋の傍らには、紅蓮の甲冑を纏った騎士、<ジェムナイト・ルビーズ>がいる。
「七水さんが無事でよかった……これで全員集合って感じですかね?」
「ワシを忘れるでない。小僧」
「うわぁ!?」
 七水の無事を確認し、安堵の表情を見せていた純也だが、不意打ちのように現れた<スクラップ・ドラゴン>の精霊に、体をのけぞらせながら驚く。
「スドちゃん!」
「ワシがサポートすれば、お主も戦えるじゃろう。積もる話はあるが……帽子の小僧の言う通り、まずはこの場を切り抜けるのが先決じゃ」
 ふよふよと浮かびながらかづなの近くに移動するスド。かづなは力強く頷き、拳をきゅっと握る。
「そうですね。こんなところで負けるわけにはいきません」
 瞳に強い意志の光を宿しながら、かづなは両足でしっかりと地面を踏みしめる。
「こんなザコ連中、リソナの<裁きの龍>で一発ですー!」
「やめろアホたれ。あれは敵味方関係なくぶっ飛ばしちまうだろうが。そのゴーレムは七水に任せて、小回りの効く<ジェイン>や<ウォルフ>辺りを実体化させとけ」
「いやですー! リソナだってカッコよく暴れたいですー!」
「リソナちゃん、わがまま言ってられる状況じゃ……」
 ゴーレムの肩の上でぎゃあぎゃあ喚くリソナと、それをなだめようとしている七水。
「……緊張感のない連中じゃの」
 それを見てスドはため息を吐くが、かづなはくすりと笑みをこぼす。
「でも、楽しいです」
 数の暴力に圧倒され、命を落とす危険すらある状況で、集まったデュエリスト達は自分らしさを失っていない。
「――さて、戦の続きじゃ。速攻でカタをつけてやろうぞ!」
 不思議な充足感に満ちながら、切は声を張り上げた。

「どうでもいいことじゃが、ワシと喋り方がかぶっておるのう、小娘」
「そうじゃな」