遊戯王オリジナルstage 【ep-14 サイドS】
「<カラクリ将軍 無零>……」
「圧倒されたかい? けど、ここからが本番だ。<無零>がシンクロ召喚に成功した時、自分のデッキから<カラクリ>と名のついたモンスターを1体特殊召喚できる。僕は<カラクリ忍者 七七四九>を攻撃表示で特殊召喚するよ」
<カラクリ将軍 無零>が手にしていた軍配を振るうと、新たに紫色の頭巾を被ったカラクリ人形が現れる。右手には獲物を素早く仕留めるための短刀、左手には歯車によく似た投擲武器――手裏剣が握られている。
「圧倒されたかい? けど、ここからが本番だ。<無零>がシンクロ召喚に成功した時、自分のデッキから<カラクリ>と名のついたモンスターを1体特殊召喚できる。僕は<カラクリ忍者 七七四九>を攻撃表示で特殊召喚するよ」
<カラクリ将軍 無零>が手にしていた軍配を振るうと、新たに紫色の頭巾を被ったカラクリ人形が現れる。右手には獲物を素早く仕留めるための短刀、左手には歯車によく似た投擲武器――手裏剣が握られている。
<カラクリ忍者 七七四九> 効果モンスター 星5/地属性/機械族/攻2200/守1800 このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。 フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、 このカードの表示形式を変更する。 このカードが召喚に成功した時、 自分フィールド上に表側守備表示で存在する「カラクリ」と名のついたモンスターの数だけ、 自分のデッキからカードをドローする事ができる。
「レベル5のモンスターを特殊召喚ですか」
「<無零>の効果にはレベル制限がないからね。加えて、<無零>にはもう1つ効果がある」
そう言った比良牙がスッと右手を挙げると、<カラクリ将軍 無零>はその場で軍配を薙ぎ払い、風を起こす。
純也がその行為の意図を探ろうとした瞬間、答えが先に訪れた。
「な……!?」
カラクリの将軍が巻き起こした風が純也のフィールドまで届き、裏守備表示でセットされていたモンスターを、強引に表側攻撃表示へと変えたのだ。
姿を暴かれた純也のモンスター――紅色の鎧を纏った女騎士、<コマンド・ナイト>。
「<無零>の効果にはレベル制限がないからね。加えて、<無零>にはもう1つ効果がある」
そう言った比良牙がスッと右手を挙げると、<カラクリ将軍 無零>はその場で軍配を薙ぎ払い、風を起こす。
純也がその行為の意図を探ろうとした瞬間、答えが先に訪れた。
「な……!?」
カラクリの将軍が巻き起こした風が純也のフィールドまで届き、裏守備表示でセットされていたモンスターを、強引に表側攻撃表示へと変えたのだ。
姿を暴かれた純也のモンスター――紅色の鎧を纏った女騎士、<コマンド・ナイト>。
<コマンド・ナイト> 効果モンスター 星4/炎属性/戦士族/攻1200/守1900 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。 また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、 相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。
「ふうん、守備力1900か。壁モンスターとしては及第点だけど……目論見が外れて残念だったね。<無零>には、モンスターの表示形式を変更する効果があるのさ」
「…………」
遠慮なく純也を嘲笑ってくる比良牙に、しかし純也は言葉を返さない。
それは、動揺を悟られたくないという強がりだったが――それと同じくらい、純也は自分の未熟さに嫌気が差していた。
比良牙が言葉通りの実力者だとすれば、例えブラフだったとしても伏せカードを警戒するはずだ。少し考えればそれくらいのことは分かったはずなのに、純也はそれをしなかった。
(創志さんにはああ言ったけど……僕も熱くなってたんだ)
比良牙は純也のことを「雑魚」と罵った。デュエルで負かす時間すら惜しい弱者だと。
純也にとって、雑魚呼ばわりされるのはこれが初めてではない。
かつて、自分が尊敬する兄を「馬鹿」と罵った、サイコ決闘者の女性。
どうしてもその言葉を否定してやりたくて、純也は持てる力の全てを使ってその女性に勝とうとした。
でも、届かなかった。
純也は彼女に敗北した。兄のデュエルの凄さを、素晴らしさを、そして強さを……認めさせることはできなかった。
それは、兄のデュエルが劣っていたわけではない。
自分が弱かったから――
兄のデュエルを再現できるほどの実力が自分に備わっていなかったから、純也は負けてしまったのだ。
思えば、純也は本当の意味での「強者」に勝ったことがない。
圧倒的な実力を持つ決闘者に対しては、食らいつくくらいが関の山で、勝利をもぎ取ることはできなかった。
その事実を、純也は認めたくなかった。
「おや、随分と意気消沈しているようだね。もう勝負を諦めたのかな? だとしたら、僕としては好都合だ。バトルフェイズに入るよ」
比良牙の軽やかな声が、フィールドに響き渡る。
「まずは<七七四九>で攻撃。<コマンド・ナイト>は自身の効果で攻撃力が上がっているけど、<七七四九>には及ばないね」
カラクリ忍者が姿を消したかと思うと、一瞬で女騎士の背後に回り込む。
反応が遅れた女騎士は、さしたる抵抗も出来ずに、心臓を貫かれて絶命する。
「…………」
遠慮なく純也を嘲笑ってくる比良牙に、しかし純也は言葉を返さない。
それは、動揺を悟られたくないという強がりだったが――それと同じくらい、純也は自分の未熟さに嫌気が差していた。
比良牙が言葉通りの実力者だとすれば、例えブラフだったとしても伏せカードを警戒するはずだ。少し考えればそれくらいのことは分かったはずなのに、純也はそれをしなかった。
(創志さんにはああ言ったけど……僕も熱くなってたんだ)
比良牙は純也のことを「雑魚」と罵った。デュエルで負かす時間すら惜しい弱者だと。
純也にとって、雑魚呼ばわりされるのはこれが初めてではない。
かつて、自分が尊敬する兄を「馬鹿」と罵った、サイコ決闘者の女性。
どうしてもその言葉を否定してやりたくて、純也は持てる力の全てを使ってその女性に勝とうとした。
でも、届かなかった。
純也は彼女に敗北した。兄のデュエルの凄さを、素晴らしさを、そして強さを……認めさせることはできなかった。
それは、兄のデュエルが劣っていたわけではない。
自分が弱かったから――
兄のデュエルを再現できるほどの実力が自分に備わっていなかったから、純也は負けてしまったのだ。
思えば、純也は本当の意味での「強者」に勝ったことがない。
圧倒的な実力を持つ決闘者に対しては、食らいつくくらいが関の山で、勝利をもぎ取ることはできなかった。
その事実を、純也は認めたくなかった。
「おや、随分と意気消沈しているようだね。もう勝負を諦めたのかな? だとしたら、僕としては好都合だ。バトルフェイズに入るよ」
比良牙の軽やかな声が、フィールドに響き渡る。
「まずは<七七四九>で攻撃。<コマンド・ナイト>は自身の効果で攻撃力が上がっているけど、<七七四九>には及ばないね」
カラクリ忍者が姿を消したかと思うと、一瞬で女騎士の背後に回り込む。
反応が遅れた女騎士は、さしたる抵抗も出来ずに、心臓を貫かれて絶命する。
【純也LP4000→3400】
「続いて<無零>で攻撃だ。直接攻撃を防ぐカードは多々あるけど……まあ君のような雑魚は何も持っていないだろうし。あ、サレンダーするならいつでもどうぞ」
「……しません」
さすがにこれには反論した。比良牙はやれやれといった感じで首を振ると、脇に控えるカラクリの将に顎で合図する。
<カラクリ将軍 無零>は座椅子から腰を上げることなく、無造作に軍配を振るう。
巻き起こった風が純也の体へ襲いかかり、少年は為す術も無く後方へ吹っ飛ばされた。
「……しません」
さすがにこれには反論した。比良牙はやれやれといった感じで首を振ると、脇に控えるカラクリの将に顎で合図する。
<カラクリ将軍 無零>は座椅子から腰を上げることなく、無造作に軍配を振るう。
巻き起こった風が純也の体へ襲いかかり、少年は為す術も無く後方へ吹っ飛ばされた。
【純也LP3400→800】
「純也君!」
受け身もろくに取らずに倒れた純也を見て、心配そうな声色で名前を呼びながらかづなが駆け寄ってくる。
「感謝してくれよ? 君のような雑魚からでも少しは力を搾取できるだろうから、あえて力をセーブしてるんだ。殺してしまっては元も子もないからね。せっかくデュエルすることにしたんだから、取れるモノは取っておかないと」
本来なら、<カラクリ将軍 無零>が起こした風は、カマイタチのように相手を切り刻むものだった。その攻撃がサイコパワーによって実体化していたら、純也は今頃血まみれになっていたはずだ。
かづなの手を借りながら、純也はかろうじて身を起こす。
残りLPはわずか800。デュエルが始まってからまだ2ターンしか経過していないというのに、一気に崖っぷちまで追い込まれた。
「メインフェイズ2に<カラクリ解体新書>を発動。カードを1枚セットして、ターンエンド。……後悔することになったのは君のほうだったね」
受け身もろくに取らずに倒れた純也を見て、心配そうな声色で名前を呼びながらかづなが駆け寄ってくる。
「感謝してくれよ? 君のような雑魚からでも少しは力を搾取できるだろうから、あえて力をセーブしてるんだ。殺してしまっては元も子もないからね。せっかくデュエルすることにしたんだから、取れるモノは取っておかないと」
本来なら、<カラクリ将軍 無零>が起こした風は、カマイタチのように相手を切り刻むものだった。その攻撃がサイコパワーによって実体化していたら、純也は今頃血まみれになっていたはずだ。
かづなの手を借りながら、純也はかろうじて身を起こす。
残りLPはわずか800。デュエルが始まってからまだ2ターンしか経過していないというのに、一気に崖っぷちまで追い込まれた。
「メインフェイズ2に<カラクリ解体新書>を発動。カードを1枚セットして、ターンエンド。……後悔することになったのは君のほうだったね」
<カラクリ解体新書> 永続魔法 「カラクリ」と名のついたモンスターの表示形式が変更される度に、 このカードにカラクリカウンターを1つ置く(最大2つまで)。 また、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、 このカードに乗っているカラクリカウンターの数だけ 自分のデッキからカードをドローする。