にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-15 サイドS】

「……僕のターン」
 すっかり勢いを失くしたまま、純也はカードをドローする。
 ライフアドバンテージは大幅に失ったものの、純也の手札はかなり恵まれていた。いつも通り強気にガンガン攻めていける手札だ。
 だが。
(……それで、僕は勝てるのか?)
 今の自分にできる最大限を尽くしたとして。
 この状況を逆転できるのか? 比良牙に勝てるのか?
 以前の純也なら、こんな迷いは抱かなかっただろう。ただ自分の力を信じ、ぶつかっていったはずだ。
 しかし、今は自分の力を信じ切れない。信じようとすればするほど、あの敗戦の光景が……龍の餌食となる絵札の騎士の姿が、脳裏に蘇ってしまう。
 七水と一緒にペインと戦っていたときは、何とか誤魔化せていたのに。
「くそう……」
 思わず、声が漏れた。相手にリードを握られただけでこのザマとは、自分の弱さを目の当たりにして、惨めな気持ちでいっぱいになった。
「……おい、早く進めてくれないか? 時間が惜しいって何度も言ってる――」

「何やってるんだよ純也! ボーっとすんな!」

 苛立ちを顕わにした比良牙の声を遮って、創志の叫び声が木霊する。
「あんだけ大口叩いたんだぜ。俺に見せてくれよ、お前のデュエルを!」
 その言葉に、純也はハッとなって後ろを振り返る。
「まだ俺は何にも見せてもらってねえぞ! まだまだこれからだろ? そんな人形野郎、さっさとぶっ飛ばしちまえよ!」
 見れば、そこには勝気な笑顔を浮かべて拳を振りかざす、皆本創志の姿があった。
(――そうだ。あの人も、ボロボロになりながら劣勢を覆してみせた)
 彼は、どんなに追い込まれても決して諦めたりしなかった。
 純也は、まだ皆本創志という男に関して、深く知っているわけではない。
 けれどもあの時見た背中は、何度も激戦をくぐり抜けてきたような風格を漂わせていた。
 そんな男を押しのけて、純也はこのデュエルに挑んだのだ。
 怯えるな。
 敗戦から学んだのは、恐怖だけではなかったはずだ。
 そして、手札には最も信頼を寄せる相棒がいる。
 自分の力を、
「――信じるんだ!」
 純也は顔を上げ、自らが打倒すべき敵の姿を目に焼き付ける。
 まだ、勝負は始まったばかりだ。
「行きます! 魔法カード<ワン・フォー・ワン>を発動! 手札から<チューン・ウォリアー>を墓地に送って、デッキからレベル1のモンスター、<レベル・スティーラー>を特殊召喚!」

<ワン・フォー・ワン>
通常魔法(制限カード)
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。
手札またはデッキからレベル1モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。

 現れたのは、背中に星型の模様を描いたてんとう虫だ。

<レベル・スティーラー>
効果モンスター
星1/闇属性/昆虫族/攻 600/守   0
このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル5以上のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。
このカードはアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。

「そして、<レベル・スティーラー>をリリース……」
「へぇ。アドバンス召喚か」
 <レベル・スティーラー>が光の粒子となって消えたと同時、純也の手札から炎が迸る。
 猛々しくうねる炎は、天空を目指して駆け上る。
 その光景は、炎の獣が険しい崖を駆けあがっていくようだった。
 崖の頂点に達した獣は音無き咆哮を上げると、純也目がけて急降下してくる。
 そのまま激突し、爆発。
 純也が炎のカーテンに包まれる。

「――一緒に戦おう! <紅蓮魔闘士>!」

 カーテンの内側から、相棒を呼ぶ声が響いた。
 瞬間、炎が真っ二つに切り裂かれ、漆黒の鎧を纏った赤髪の剣士が姿を現す。
 紅蓮を統べるための魔を宿し、胸に闘志を漲らせる男。
 その名は、<紅蓮魔闘士>。

<紅蓮魔闘士>
効果モンスター
星6/炎属性/戦士族/攻2100/守1800
自分の墓地に存在する通常モンスターが3体のみの場合、
このカードは自分の墓地に存在する通常モンスター2体をゲームから除外し、
手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
レベル4以下の通常モンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。