にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-16 サイドS】

「来ましたよ! 純也君のエースモンスターです!」
「<紅蓮魔闘士>……」
 あのモンスターを召喚したことによって、消えかけていた純也の気迫が蘇っていくのを、創志は感じていた。
 前に立つ純也の背中はまだ幼く、小さい。
 その小さな背中に、どれだけのものを背負っているのか――創志には想像もできない。
(でも……あいつなら大丈夫。そんな気がする)
 明確な根拠はないのに、不思議と確信できた。
「さあ――こっからだぜ! 純也!」



「<紅蓮魔闘士>の効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地に存在するレベル4以下の通常モンスターを選択し、特殊召喚することができる! 蘇れ、<チューン・ウォリアー>!」
 赤髪の剣士が、手にしていた剣を空に向けて掲げる。その剣は、鎌のような刃をいくつも並べてノコギリのように「引いて斬る」ことを目的とした、特異な形をしていた。
 剣が振り下ろされると、純也のフィールドに炎で描かれた魔法陣が出現する。そこから現れたのは、先程<ワン・フォー・ワン>の効果で手札から墓地に送られた通常モンスター、<チューン・ウォリアー>だ。

<チューン・ウォリアー>
チューナー(通常モンスター)
星3/地属性/戦士族/攻1600/守 200
あらゆるものをチューニングしてしまう電波系戦士。
常にアンテナを張ってはいるものの、感度はそう高くない。

「さらに墓地の<レベル・スティーラー>の効果を発動! <紅蓮魔闘士>のレベルを1つ下げて、墓地から特殊召喚する!」
 <紅蓮魔闘士>のレベルを5に下げることによって、星型の模様を持つてんとう虫がフィールドに舞い戻る。

<レベル・スティーラー>
効果モンスター
星1/闇属性/昆虫族/攻 600/守   0
このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル5以上のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。
このカードはアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。

「合計レベルは9、か。なるほど、素材を2体以上必要とするシンクロモンスターを召喚するつもりかな?」
「外れだよ。レベル1の<スティーラー>に、レベル3の<チューン・ウォリアー>をチューニングだ!」
 赤髪の剣士をフィールドに残し、2体のモンスターが光の柱に包まれる。
「レベル4のシンクロモンスターだって……?」
「右手が駄目なら左手を、それでも駄目なら両手を突き出す!」
 純也が紡ぐ口上が、高らかに響き渡る。
 右の手の平を開き、左前方に目一杯伸ばした右腕を、ゆっくりと流していく。
「全ての壁を壊す為、全ての苦難を越える為! 殴って殴って殴り通る!」
 そして、拳を強く握り、自らの眼前に引き寄せる。

「それが――シンクロ召喚! <アァァァムズ・エイドォォォォォ>!!」

 純也がその名を叫ぶと、光が四散し、白金の装具が現出した。

<アームズ・エイド>
シンクロ・効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとしてモンスターに装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

「……なんだい? そのシンクロモンスターは? というか、それはモンスターなのか?」
 比良牙が訝しげな声を出す。装備品にしか見えない<アームズ・エイド>の姿を見て、疑問を覚えたのだろう。
 5本の赤い爪に、黒のプロテクター。ガントレットと形容するのがしっくりする姿だ。
 その疑問は、あながち的外れでもない。
「れっきとしたモンスターだよ。けど、<アームズ・エイド>には装備カードとして装備できる効果がある! <アームズ・エイド>を<紅蓮魔闘士>に装備!」
 白金の装具が、赤髪の剣士の左腕へと装着される。新たな武器の具合を確かめるように、<紅蓮魔闘士>は左拳を強く握った。
「<アームズ・エイド>を装備したモンスターは、攻撃力が1000ポイント上昇する」
「攻撃力3100……<カラクリ将軍 無零>を上回ったのじゃ!」
「行くぞ、バトルだ! <紅蓮魔闘士>で<無零>を攻撃!」
 純也が右拳を突き出すと、それに呼応するように赤髪の剣士が疾走する。
 大地を蹴り、カラクリの将目がけて飛ぶと同時。手にした剣を振るい、剣閃にて炎の鞭を生みだす。
 燃え滾る炎の鞭が、<カラクリ将軍 無零>を薙ぎ払う。
 降りかかる火の粉を払うために、<カラクリ将軍 無零>が軍配を振るう。巻き起こった風が、炎の鞭を霧散させた。
 その動作は、<紅蓮魔闘士>が懐に飛び込むための隙を生む。
ガントレット・ナッコォ!!」
 白金の装具を纏った拳が、くすんだ甲冑を捉える直前――
 突如、<紅蓮魔闘士>の体がふわりと宙に浮かんだ。
「え……!?」
 <紅蓮魔闘士>だけではない。<カラクリ将軍 無零>の巨体も、その隣にいた<カラクリ忍者 七七四九>の体も、同じように宙に浮かんでいる。
 まるでシャボン玉のようにふわふわと浮かぶその光景は、
無重力!?」
 驚いた純也は、比良牙のフィールドで表になっているリバースカードに視線を向ける。
「攻撃力を上げて殴ってくる。単純な攻撃だね。猿のやることだよ」
 未だ余裕たっぷりの声を発する比良牙は、肩をすくめてみせる。からくり人形とは思えないほど、人間臭い動作だった。
「僕が発動したのは<重力解除>。フィールド上に存在する表側表示モンスターの表示形式を変更する罠カードさ」

<重力解除>
通常罠
自分と相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの表示形式を変更する。

 重力が消えた戦場で彷徨っていた<紅蓮魔闘士>が、強制的に純也のフィールドに戻され、守備表示となる。比良牙の<カラクリ>モンスター2体も同様だ。
「<アームズ・エイド>の効果で上昇するのは攻撃力のみだ。守備力は上がらない。加えて、<紅蓮魔闘士>の守備力は最初にやられた<コマンド・ナイト>よりも低い……勢いだけの猪をいなすことなんて、僕にとっては造作もないのさ」
 饒舌になった比良牙は、さらに言葉を続ける。
「それだけじゃない。<カラクリ>モンスターの表示形式が変更されたため、<カラクリ解体新書>にカウンターが2つ乗るよ。今の内に<サイクロン>とかで破壊しておいたほうがいいんじゃない?」
 そう言って、比良牙はくぐもった笑い声を漏らす。純也が<サイクロン>か、それに準ずる魔法・罠破壊カードを持っていないと確信した上で言っているのは間違いなかった。
 先のターン、比良牙はメインフェイズ2に<カラクリ解体新書>を発動し、カウンターを乗せることなくターンを終了した。相手のターンで破壊される危険性を考慮した上で、あえて発動したのだ。
 と、いうことは、相手――純也のターンで、<カラクリ>モンスターの表示形式を変更しつつ、攻撃を防ぐカードを伏せたはず。事実、その推測は当たっていた。
 純也は、先に述べた推測に至らなかったわけではない。
 正確に言えば、どんな推測に至ろうとも、攻撃を躊躇うつもりはなかった。
 なぜなら。
(殴って殴って殴り通す。それが兄さんの……僕のデュエルだからだ!)
「……気に入らないな。随分生意気な目をしてるね」
「なら、僕を倒して目玉を抉り取ればいい。カードを2枚伏せて、ターンエンドだ」
 比良牙の圧力に怯むことなく、純也はターンの終了を宣言した。

【純也LP800】 手札1枚
場:紅蓮魔闘士(守備:アームズ・エイド装備)、伏せ2枚
【比良牙LP4000】 手札2枚
場:カラクリ将軍 無零(守備)、カラクリ忍者 七七四九(守備)、カラクリ解体新書(カウンター2)