にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

デュエルモンスターズ CrossCode ep-8th プロローグ-21

「……今度はちゃんと出せたみたいですね」
 「今度」を強調しながら、守護者はベンチに横たわる多栄へと視線を移す。<聖刻神龍―エネアード>は、彼女のエースであり切り札であるモンスターだ。
(このターンで決めるには、リリースするモンスターが足りない……)
 手札にモンスターがいないため、<聖刻神龍-エネアード>の効果を発動するなら、<聖刻龍王-アトゥムス>をリリースしなければならない。それを行ったとしても、破壊できるカードは1枚のみ。このターンで守護者のライフを削りきることは不可能に近い。
「……僕は<聖刻龍王-アトゥムス>の上に重ねることで、<迅雷の騎士ガイアドラグーン>をエクシーズ召喚します」

<迅雷の騎士ガイアドラグーン>
エクシーズ・効果モンスター
ランク7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100
レベル7モンスター×2
このカードは自分フィールド上のランク5・6のエクシーズモンスターの上に
このカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「<アトゥムス>は効果を使用したターン攻撃できませんが、<ガイアドラグーン>を重ねることでそのデメリットを無かったことにした……上手いですね」
 当然だ。この戦術は、竜王である多栄から教わったものなのだから。
(多栄さんなら……)
 この状況でどんな手を選ぶか。それを訊きたい衝動に駆られるが、クロガネは激しく頭を振って甘えた思考をかき消す。もし守護者が現われなかったら、クロガネは自分のデッキを認めてもらうために多栄とデュエルをしていたのだ。
(これは僕のデッキなんだ。僕だけの力で回して、勝たなきゃいけない!)
 迷いを見せた心を奮い立たせ、クロガネはフィールドに浮かぶ<炎王神獣 ガルドニクス>を見据える。
「――このままバトルフェイズに移行します! <エネアード>で<ガルドニクス>を攻撃……九皇神罰撃!」
 このターンは<聖刻神龍-エネアード>の効果は使わない。
 神龍の体が眩く発光し、橙色の光が溢れ、それは開かれた口へと収束していく。
 収束した光が放たれる。巨大な光線が、炎の巨鳥を消滅させんと加速する。
「……させませんよ。速攻魔法<炎王炎環>を発動」
「なっ……2枚目の<炎王炎環>……!?」
「<炎王神獣 ガルドニクス>を破壊し、墓地から<炎王獣 ガルドニクス>を守備表示で特殊召喚します」
 巨鳥の体が炎に包まれ、消える。代わりに幼生体がフィールドに舞い戻るが、傍から見ると炎に焼かれて巨鳥の体が縮んでしまったようだった。
「くっ……攻撃を続行します!」
 巨大な光線は<炎王獣 ガルドニクス>を呑みこむが、その後に舞い散った赤い羽根までは消し去ることができない。
「私は2体目の<炎王獣 ガルドニクス>を守備表示で特殊召喚します。どうします?」
「訊かれなくても! <ガイアドラグーン>で<ガルドニクス>を攻撃!」
 竜を駆る騎士が振るった突撃槍が、赤の鳥を貫いた。
「<ガイアドラグーン>が守備表示モンスターを攻撃したとき、攻撃力が守備力を超えていれば、その差分戦闘ダメージを与えます!」
「貫通効果持ちですか……!」
 <炎王獣 ガルドニクス>を貫いた槍の先端が、守護者の体をわずかに抉る。クロガネは守護者のように攻撃を実体化させることはできないため衝撃は微々たるものだっただろうが、それでも初ダメージを与えることができた。

【守護者LP4000→3100】

「……私は<ガルドニクス>の効果で、<炎王獣 キリン>を特殊召喚しますよ」

<炎王獣 キリン>
効果モンスター
星3/炎属性/獣族/攻1000/守 200
自分フィールド上に表側表示で存在する
「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、
このカードを手札から特殊召喚できる。
また、このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
デッキから炎属性モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

「僕はカードを1枚伏せて、速攻魔法<超再生能力>を発動! このターン手札から捨てた、またはリリースしたドラゴン族モンスターの数だけ、エンドフェイズにカードをドローできます」

<超再生能力>
速攻魔法
このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、
このターン自分が手札から捨てたドラゴン族モンスター、
及びこのターン自分が手札・フィールド上からリリースした
ドラゴン族モンスターの枚数分だけ、
自分のデッキからカードをドローする。

 このターンでクロガネが手札から捨てたドラゴン族モンスターは1体、手札・フィールド上からリリースしたモンスターは2体。合計3枚のドローが可能になる。
「失った手札を即座に補充とは……随分と成長したようですね」
「多栄さんのおかげです。だからこそ、このまま守護者になんてさせるわけにはいかないんです」
「……私もその言葉を借りましょうか。だからこそ、彼女は守護者になるべきなのだと。あれほどの強さがあれば、どんな敵が相手だろうと負けることはない。生木院多栄は、この世界に安定した平和をもたらす救世主なのです」
「……そんなことを言って、僕が退くとでも思ってるんですか?」
「そうではありません。私も簡単に負けるわけにはいかないという決意表明ですよ」
 守護者の言葉には、どこか白々しさを感じた。決して手を抜いているわけではないが、かといって全力を出し切っているとは思えない――そんな立ち振る舞いだった。
(……余計なことを考えている場合じゃない。デュエルに集中しなきゃ)
 次のターンには、またしても<炎王神獣 ガルドニクス>の効果が発動する。それを通すわけにはいかない。

【守護者LP3100】 手札2枚
場:炎王獣 キリン(守備)
【クロガネLP1300】 手札3枚
場:聖刻神龍-エネアード(攻撃・素材2)、迅雷の騎士ガイアドラグーン(攻撃・素材2)、伏せ2枚

「私のターン。ドローを終えて、スタンバイフェイズ。墓地の<炎王神獣 ガルドニクス>の効果が発動しますよ! 偽りの眠りから覚め、再生の焔を起こすのです!」
 再びフィールド全体が灼熱の炎に包まれる。それを巻き起こした元凶である炎の巨鳥が、自らの存在を誇示するかのようにひときわ大きな鳴き声を上げた。
「大型のエクシーズモンスターを複数展開したのは見事な手腕でしたが、神獣の炎の前には無力です。大人しく生贄となってもらいましょうか!」
 クロガネのフィールドに広がる炎が、柱を立ち上らせるために脈動を始める。
 ――ここでモンスターを失うわけにはいかない。
「させない! 罠カード<ブレイクスルー・スキル>を発動!」
「…………っ!?」
 クロガネの伏せカードが表になると、パキィィン、とガラスが砕けるような音が響き渡る。すると、激しく燃え盛っていた炎が、燃料を失ったかのように徐々に鎮火していった。
「<ブレイクスルー・スキル>……ターン終了時まで効果を無効にする罠カードですか。さらに、自分のターン限定とはいえ墓地から除外することで、再度効果を発動できる。なかなか厄介なカードを使われましたね」

<ブレイクスルー・スキル>
通常罠
相手フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
また、墓地のこのカードをゲームから除外する事で、
相手フィールド上の効果モンスター1体を選択し、
その効果をターン終了時まで無効にする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できず、
自分のターンにのみ発動できる。

「これで<炎王神獣 ガルドニクス>の効果による全体破壊はできません」
 守護者の手札は3枚。<炎王神獣 ガルドニクス>だけでは<迅雷の騎士ガイアドラグーン>は倒せても、強力な効果を持つ<聖刻神龍-エネアード>を処理することはできない。果たして、どんな手段を取ってくるか。
「……そうですね。あまり使いたくはなかったんですが……守護者のみに許されたせっかくの『特権』です。使い惜しみは無しにしましょうか。私は墓地の<炎王獣 ガルドニクス>2枚をゲームから除外して、<焔征竜-ブラスター>を特殊召喚
 現れたのは、冷えて固まった溶岩を鱗として纏う、紅肌の竜だった。今なお滾るマグマが鱗のあちこちに線を引き、すぐにでも爆発してしまいそうな印象を受ける。

<焔征竜-ブラスター>
効果モンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(これが、守護者の『特権』……?)
 レベル7の上級モンスターにしては緩い特殊召喚条件と、コストさえあればほぼ無限に蘇る場持ちの良さ。さらには炎属性モンスターと共に手札から捨てることでフィールド上のカードを1枚破壊する効果を持つ、メリットの塊のようなモンスター。「特権」という大仰な言葉を用いたとしても不思議ではない。
「こんな方法で使うことになるとは思いませんでした。私は、魔法カード<ギャラクシー・クィーンズ・ライト>を発動。レベル7の<焔征竜-ブラスター>を選択し、フィールド上の表側表示モンスターのレベルを<ブラスター>と同じにします」

<ギャラクシー・クィーンズ・ライト>
通常魔法
自分フィールド上のレベル7以上のモンスター1体を選択して発動できる。
自分フィールド上に表側表示で存在する
全てのモンスターのレベルはエンドフェイズ時まで選択したモンスターと同じレベルになる。

「レベル7のモンスターが3体……!?」
「行きますよ。レベル7となった<炎王獣 キリン>と<ブラスター>を素材に、エクシーズ召喚を行います!」
 赤色の光となった2体のモンスターが、大地に渦を描く。
 刻まれた渦から光が溢れ、その中心から呼びだされたエクシーズモンスターが姿を現す。
「何だ……これ……?」
 クロガネの視界に映ったのは、逆さまに巨大な円錐だ。無機質な銀色で構成された円錐の周囲を囲うように金色のリングが浮遊しており、そこには「11」という数字が刻まれていた。
 そして、何より目を引くのが円錐の下部を抉りとって存在する、瞳だ。一切の生気を感じさせないのに、見ていると心が乱されるような妖しさを纏っている。
「見るのは初めてでしょう? このモンスター……いや、<№>と呼ばれるエクシーズモンスターこそ、この世界の守護者に与えられた特権。これが私の<№>――<№11 ビッグアイ>です」