にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-22】

「ほざくな、雑魚がッ! 貴様は隠し玉を披露したつもりだろうが、ソイツもすでに調査済みなんだよ! <クレアシオン>の効果だけでは、<イレイザー>を倒すことなどできはしない!」
「分かってるじゃねえか。<クレアシオン>の効果『だけ』じゃ、<イレイザー>を倒せない」
 なら、どうすればいいのか――創志が口にするまでもなく、砂神は理解したようだった。
「……やってみるがいい。俺様はこんなところで負けるわけにはいかない」
「――この世界に呼び寄せたサイコデュエリストから力を奪うまで、か?」
 治輝の問いに、砂神は不服そうに首肯する。
「僕の……俺様の力は、砂神緑雨などという矮小な存在に収まるべきものじゃない。だから俺様はさらなる力を求める。砂神緑雨という存在を消し――完全なペインとなって暴走するために」
「何……!?」
 砂神の言葉は、偽りや冗談などではない。そう信じさせるだけに足りる意志の強さが、彼の瞳には宿っていた。
「純然たる力を振るうためには、半端な理性など必要ない。僕が人である以上、理性を完全に捨て去ることはできない」
「ペインなら……それが可能だから。だからお前はペインになるっていうのか?」
「そうだ」
「ッ――!!」
 治輝の体が震える。この世界に来て初めてペインを知った創志には、彼がどれほどの思いを抱えているかは分からなかったが、彼の中の怒りが膨れ上がるのが分かった。

「ふざけんなよテメエッ!!」

 それを分かった上で、創志は治輝よりも先に叫んだ。
「そ、創志?」
 出鼻をくじかれた治輝が、若干気の抜けた声を出す。今ここで彼が感情を爆発させてしまえば、治輝がこれから辿るであろう道が、変わってしまう気がした。それをさせないために、創志は真っ先に叫んだのだ。
 最も、それは理由の1つに過ぎない。
「自分を消す、だって? 自分を捨てたやつが――自分を諦めたヤツが、強くなれるわけねえだろッ! お前がペインとやらになるのは勝手だ。けど、ペインになったらお前は今より弱くなるぜ。断言してやる!」
 一番大きな理由は、単純にムカついたからだ。
 力に恵まれた癖に、それを放棄して逃げようとしている砂神緑雨という男に、一言言ってやりたかったからだ。
 砂神がペインになろうとした理由は、力に恵まれ過ぎたからなのだが――それを知らない創志は遠慮なしに自分の気持ちをぶつける。
「自分で考えて、自分で決めてこその強さだろうが! 自分がやりたいと思ったことをやらなきゃ、強くなんてなれねえんだよ!」
「戯言を! 僕に説教をするな!」
「ああそうだな。説教するなんて俺のガラじゃねえ。力づくで分からせてやる!」
 これで問答は打ち切りだと言わんばかりに、創志は砂の大地を強く踏みしめる。
「……分かっているな、皆本創志」
「大丈夫だっての。お前の伏せカードを使えばいいんだろ?」
 この変則タッグデュエルでは、自チームの伏せカードを、通常魔法・通常罠に限り、持ち主以外のプレイヤーが発動する事ができる。輝王の伏せカードが通常魔法であることを確認した創志は、それを発動すべく、もう1人の仲間へと向き直る。
「治輝」
「……何だ?」
「アイツを倒すのに、お前の力も必要だ。力を貸してくれ」
「……その言葉を待ってた」
 微笑を浮かべた治輝は、伏せカードの起動ボタンへと手を伸ばした。
「永続罠<リビングデッドの呼び声>を発動! 自分の墓地からモンスターを1体選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。俺が選択するモンスターは――」

リビングデッドの呼び声>
永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 がら空きだった治輝のフィールドに、蘇生を意味する魔法陣が刻まれる。<死者蘇生>のときと違い、陣を形成する線の色は黒だ。
 陣の中心から、剣が飛び出す。
「頼む! <ドラグニティアームズ-レヴァテイン>!」
 剣は、砂漠の大地にも緑を広げた大木から生まれたものだった。
 大剣を握りしめた橙色の飛竜、<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>が墓地から蘇る。

<ドラグニティアームズ―レヴァテイン>
効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「<レヴァテイン>の効果発動! このモンスターが特殊召喚に成功した時、墓地に存在する<レヴァテイン>以外のドラゴン族モンスター1体を、装備カード扱いとして装備する事ができる! 墓地の<-蘇生竜- レムナント・ドラグーン>を装備!」
 飛竜の体が、優しい光を放つ蒼色のオーラに包まれる。それは散っていった幻想の竜が放っていたものと同じだ。
「お膳立てはここまでだ。後は頼む、創志」
「任せろ! 俺は輝王の伏せカードを使う!」
 輝王の場の伏せカードが頭を上げ、秘められた効力を発揮する。
「見せてやるよ。ずっと1人で戦ってきたお前に!」
 創志が告げると、所在なさげにふわふわと漂っていた<A・マインド>が、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>に向かっていく。そして、体から伸びる無数のコードを機竜の頭部へと接続。PCのハードディスクが高速回転しているような音が鳴り、機竜は各部の調子をチェックするように上空へ向かって飛翔する。
 その背中に、<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>が着地する。
「何の真似だ!?」
「発動した魔法は<無白橙盟>。効果モンスター1体と通常モンスター1体の攻撃力を、選択したシンクロモンスターに加えることができる。さらに、選択したシンクロモンスターが相手モンスターを破壊し墓地に送った時、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える!」

<無白橙盟>
通常魔法(オリジナルカード)
自分のフィールド上の通常モンスター、シンクロモンスター、効果モンスターを選択して発動する。
選択したシンクロモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで
選択した3体のモンスターの攻撃力を合計した数値になる。
選択したシンクロモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。

 <無白橙盟>――条件は厳しいが、1人でも発動条件を満たせなくはないカードだ。
 だが、このカードを3人の力を合わせて発動したことに意味がある。
 輝王の覚悟。
 治輝の想い。
 創志の意地。
 3つを束ねることで、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>は己の限界を越えた力を手にすることができる。
「バトルだ! <A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>で<邪神イレイザー>を攻撃!」
 機竜の足に接続された大型のブースターに、火が灯る。
 飛竜の体が低く沈み、大剣を真横に構える。
 頭を上げた邪神が戦慄く。それが決戦の合図だった。
 <邪神イレイザー>の口から、暗黒の波動が吐き出される。
 加速しつつそれを避けた<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>は、背中に<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>を乗せたまま夜空を疾走する。
「――<イレイザー>! 仕留めろッ!!」
 主人の怒りを代弁するかのように雄叫びを上げる<邪神イレイザー>。
 すると、足元に広がっていた霧が、いくつもの渦を作り始める。
 渦が生み出す風に巻き上げられた砂が、瞬時に竜巻を作りだす。
「殺れッ!」
 指向性を持った砂の竜巻が、飛翔する機竜目がけて放たれる。
 最初の竜巻を、機竜は右に逸れることで回避。
 それを読んでいたように放たれた次弾を、急降下することでやり過ごす。
 錐揉み回転しながら落下し、地面スレスレで急上昇。竜巻の勢力圏から逃れたあと、再度邪神目がけて加速する。それでも背に乗る<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>の体が離れることはない。
 だが。
ダイジェスティブ・ブレス!」
 再び放たれる暗黒の波動が、機竜を真正面から捉える。
 回避コースは、砂の竜巻によって塞がれている。
 直撃――
「<クレアシオン>!」
「<レヴァテイン>!」
 創志と治輝の声が重なる。
 機竜は背部の補助スラスターの出力を全開にし、飛竜は鋼鉄の背中を強く蹴って、自らの羽で飛翔する。
 この局面での、分離飛行。
 機竜を狙ったはずの波動は2体の間を駆け抜け、標的を滅する事はない。
「馬鹿な!? 避けただと――」
 砂神が驚愕すると同時、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の右翼が、黄金色の光を纏い始める。
 最早、邪神への攻撃を阻むものはない。
「食らえよ! ――ジェネシック・レヴァテイン!!」
 機竜の光の刃が。
 飛竜の鉄の刃が。
 交差する2つの刃が――邪神を刻んだ。