にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-23】

 ずるり、と竜によく似た首が傾き、砂の大地へと落下する。
 頭を失った<邪神イレイザー>は、微動だにしない。
 攻撃を終えた<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>と<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>はそれぞれの場に戻る。機竜の頭部から<A・マインド>が外れ、輝王の場へと戻っていった。
 第三の邪神は倒れた。
 <無白橙盟>の効果によって、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の攻撃力は8000。対し、攻撃時<邪神イレイザー>の攻撃力は6000。<無白橙盟>のバーンダメージと合わせて、砂神のライフは3000も減少した。

【砂神LP3900→900】

「クックッ……アッハハハハハハハハハ!」
 にも関わらず、砂神は盛大な笑い声を上げた。
 治輝や創志を嘲笑ったときとは違う、何かが切れてしまったかのような、気味の悪い笑い方だった。創志は第三の邪神を撃破した。それなのに、素直に喜びを表すことはできなかった。
「……これで俺様を追い詰めたつもりか? 3体の邪神を撃破したくらいで、自分たちは勝ったと思っているのか? 図に乗るなよ、グズ共」
 治輝や創志に論破されたことで薄れていた砂神自身が放つ圧迫感が、ここに来て鋭さを増す。まるで、邪神が倒れたことによって、砂神の力が解き放たれたかのように。
「僕の強さの本質はここからだ! <邪神イレイザー>の効果発動!」
 砂神が叫ぶと、切断された首の断面から、ドロリと真っ黒な血が溢れる。石油のように溢れた邪神の血は、動かなくなった体を伝い、砂漠へと染み込んでいく。
 黒い染みが砂の大地に広がると同時、創志たちを囲むように竜巻が発生する。
「これは――!?」
 激しい砂嵐は、瞬く間に創志の視界を奪っていく。
「治輝! 輝王!」
 隣にいたはずの2人の姿さえ見えなくなる。創志は2人の名を叫ぶが、返事が返ってくる気配はない。
「――ッ!?」
 そして、<邪神イレイザー>の禍々しい血が、創志の足元にまで広がり始める。
「<イレイザー>が破壊され墓地に送られた時、フィールド上のカード全てを破壊する! 砕け散れ! この世界もろともなァ!」
 ガシャン、とガラスが砕けたような音が響き渡り、創志が立っていた地面が、文字通り粉々に砕け散る。
 嫌な浮遊感が全身を包み、ドッと汗が噴き出す。
 崩れた地面の先に見えるのは、一切の光が排除された闇。
「くっ……」
 伸ばした腕の先で、両翼をもがれた<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>が墜落していくのが見える。
 創志は、為す術もなく闇の中へ落ちていくしかなかった。






 痛い。
 深い闇に覆われ、目を開いているのか閉じているのかさえも分からない空間で、治輝は痛みを感じていた。
 指先を切ってしまったとか、ひじをぶつけてしまったなどといった物理的な痛みではなく、かといって悲しい出来事を目にして心が締めつけられるような精神的な痛みでもない。
 ただ、漠然と「痛い」という感覚がある。
 その痛みは、強い力に翻弄され続けた砂神が感じてきたものなのか。
 それとも――
 治輝の罪の意識が、痛みへと変わったものなのか。
 沈んでいく。
 上下左右も分からない闇の中で、底なし沼に沈んでいくような感覚が全身を襲う。
(……俺は)
 口を動かしてみるが、声は響かない。
 ただ、痛い。
 ただ、沈んでいく。
 さらなる深淵へ。
 さらなる痛みの中へ。
 沈んでいく。
 沈んでいく。
 沈んで――

 ……怖くない、なんて胸を張って言えません。怖いです。

 声が、響いた。
 それは、とても懐かしい声だった。

 ――頼まれちゃいましたから。あの人が帰ってくるまでは、私、負けられません。

 知っている声。
 知らない台詞。

 それに、もっと怖い事もありますから。それに比べれば、ペインなんてへっちゃらです!

(――俺は!)
 目を開く。
 黒一色の世界で、ポツリと輝く青の星が見える。
 それは、治輝が手にした幻想の龍を作り上げていたものと同じ、青の光だ。
 瞬間。
 辺りを覆っていた闇は、砕けた。