にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-24】

 一面の砂漠は消滅し、砂神が新たに創り出したのは、廃墟の世界だった。
 高層ビルが密集するように立ち並んでいるが、ひとつとして無事なものはない。外壁や窓ガラスは砕け、中腹辺りで完全に折れ曲がってしまっているビルもある。空気は渇ききっており、荒廃した景色も相まって、息苦しさを感じさせる。
 ヒビだらけのアスファルトの上に立ち、砂神は視線を前に向ける。
 そこには、「力」を奪うための生贄が横たわっていた。数は3。獲物としては上質とは言い難いが、前菜には十分な人間たちだ。
 そう。彼らは前菜に過ぎないはずだった。
 砂神は、そんな彼らにあと一歩のところまで追い込まれた。いや、デュエル内容だけ見れば、敗北したと言ってもいい。
 だが、ここまでだ。
 <邪神イレイザー>の闇に呑まれたが最後、永劫に続く痛みの中で、もがき苦しむことになる。最早目を覚ますことはない。

 そのはずだった。

「どうしてだ……」
 砂神には、目の前の光景が理解できない。
 ゆっくりと。しかし確実に。
 前菜に過ぎなかったはずの男達は、闇を抜け、痛みを振り払い、立ち上がろうとしていた。
「どうして、倒れない!? 何故立ち上がれる!?」
 疑問と焦りがない交ぜになり、砂神は無我夢中で叫んだ。
「へっ……こういう精神攻撃みたいなヤツには慣れてんだよ」
 口内に溜まった血を吐きだしながら、創志が告げる。
「――まだデュエルは終わっていない。なら、倒れるわけにはいかない」
 カードを握る指先を微かに震わせながら、輝王が告げる。
「……幕を引くには早いってことだ」
 荒い息を整えながら、治輝が告げる。
 3人の瞳に宿る意思の光は、陰るどころか輝きを増している。
 理解できない。
「貴様らは、一体……」
 砂神が思わずこぼした問いに、笑みを浮かべた創志が答える。

「言ったろ? デュエリストだよ」





「無事か、とは訊かない。やれるな?」
「ああ」
「当然だぜ」
 輝王、治輝、創志は顔を見合わせたあと、互いに頷きあう。
 3体の邪神を倒し、砂神のライフは残りわずか。度重なる攻撃の実体化によってすでに体は限界に達していたが、ここで倒れるわけにはいかない。砂神の攻撃に屈するわけには、絶対にいかない。
「さあ、デュエルを続けるぜ! 砂神!」
 <邪神イレイザー>がもたらした闇によって淀んでしまった空気を振り払うように、創志は叫び、右腕を振るう。
「……<邪神イレイザー>の効果によって、フィールド上のカードは全て破壊されている。これ以上貴様にできることは――」
 言いかけて、砂神は口をつぐむ。
「気付いたか? <クレアシオン>がフィールドから墓地に送られた時、自分の墓地に存在する<ジェネクス>か<AOJ>モンスター1体を特殊召喚できる! 来い! <A・ジェネクストライフォース>!」

<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>
シンクロ・効果モンスター(オリジナルカード)
星8/闇属性/機械族/攻2800/守2800
「ジェネクス・コントローラー」+「A・O・J」と名のついたシンクロモンスター1体以上
このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にならず、
闇属性モンスター以外との戦闘では破壊されない。
このカードの攻撃力は墓地に存在する「ジェネクス」または「A・O・J」と名のついた
モンスターの数×100ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、自分の墓地に存在するこのカード以外の「ジェネクス」または「A・O・J」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚することができる。

 創志のフィールドに現れたのは、3つの砲門を備えた特徴的な砲撃ユニットを装着した、銀色の機械兵だ。朱色のバイザーの奥に光が灯り、背部のスラスターを噴かせながら姿勢を整える。機竜の後を引き継ぐために。

<A・ジェネクストライフォース>
シンクロ・効果モンスター
星7/闇属性/機械族/攻2500/守2100
「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ素材としたチューナー以外の
モンスターの属性によって、このカードは以下の効果を得る。
●地属性:このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
●炎属性:このカードが戦闘によってモンスターを破壊した場合、
そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
●光属性:1ターンに1度、自分の墓地の
光属性モンスター1体を選択して、自分フィールド上にセットできる。

「こっちもだ! <レヴァテイン>が相手のカードの効果によって墓地に送られた時、装備していたドラゴン族モンスターを特殊召喚できる! 戻れ! <レム>!」

<ドラグニティアームズ―レヴァテイン>
効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 治輝の手のひらに、小さな青い火の玉が宿る。治輝が手のひらを空に掲げると、火の玉はふわりと浮かび、その形を変えていく。膨張し、徐々に自らの形を作り上げていく。
 墓地から舞い戻ったその姿は、龍というよりも不死鳥と表すのがふさわしく見えた。

<-蘇生龍-レムナント・ドラグーン>
効果モンスター(オリジナルカード)
星8/光属性/ドラゴン族/攻2200/守2200
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上のドラゴン族モンスターが3体以上リリース、
または3体以上破壊されたターンに手札から特殊召喚できる。
このカードが手札からの特殊召喚に成功した時、このターン破壊された、またはリリースされたドラゴン族モンスターを可能な限り、墓地または除外ゾーンから手札に戻す。
このカードが戦闘を行うダメージステップ時、手札のドラゴン族モンスターを相手に見せる事で発動できる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、見せたカードの種類×1000ポイントアップする。
このカードがフィールドを離れた時、自分は手札を全て捨てる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分はモンスターを通常召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができない。

 空になったはずのフィールドに、<A・ジェネクストライフォース>と<-蘇生龍- レムナント・ドラグーン>――2体のモンスターが並ぶ。
「そうか。貴様らはまだ足掻くのか」
 何かを悟ったような落ち着いた声で、砂神はポツリと呟く。
「当たり前だろ。デュエルはまだ終わってねえ」
「そうだな。その通りだ」
 頷いた砂神がククッ、と含み笑いを漏らした、次の瞬間。
 アスファルトのヒビをなぞるように、墨汁が溢れたような濃い闇が噴き出した。
「なっ……」
「デュエルは終わっていない。俺様が、貴様らの力を狩り尽くすまでな!」
 突如現れた闇のカーテンによって、砂神の姿は見えなくなる。未だ殺気を失っていない声だけが、廃墟の世界に響いている。
 そして、闇の向こう側で「何か」が蠢いているのを、創志は感じた。
「このカードは、墓地に存在する<アバター>、<ドレッド・ルート>、<イレイザー>の3体を除外する事で、相手ターンに手札から攻撃表示で特殊召喚できる……」
 闇の中を、何かが這いずり回っている。
 ドバッ! と闇のカーテンをぶち抜き、深緑色に染まった巨大な腕が飛び出してくる。外側は骨でできた手甲で覆われているが、所々穴が空いてしまっている。
「あれは……<邪神ドレッド・ルート>の腕か?」
 治輝の言う通りだ。闇の向こう側から飛び出してきた腕は、葬られたはずの<邪神ドレッド・ルート>のそれに酷似していた。

「恐怖は終わらない。恐怖は消えないッ! そして、俺様は強い! それを証明してやる――現界しろ、<朽ちた邪神>よ!!」

 砂神の言葉と共に、広がっていた闇が内側から吹き飛ぶ。
 腕の主の全貌――それは、邪神の寄せ集めとしか言いようがなかった。
 上半身は<邪神イレイザー>をベースにしているが、頭の右半分はごっそりと抜け落ちている。<邪神ドレッド・ルート>の腕は片方しか存在せず、もう片方は切り落とされたままだ。下半身は闇の霧に覆われており、どんな形になっているのか想像もつかない。
 名前が示す通り、朽ちた邪神を強引に繋ぎ合わせた合成獣
 それが、砂神が呼びだした最後の邪神だった。