遊戯王 New stage２ サイドＭ ２－８

「では、私のターンだ。さっきの＜スクラップ・スコール＞の効果でいいカードをドローできた。反撃といこうか！」
　ダイレクトアタックの代償に得たドローで、望みのカードを引いたらしい天羽は、即座に動き出す。
「＜スクラップ・キマイラ＞を召喚！」
　天羽が呼びだしたのは、廃パーツによって模られた獅子の頭、蛇の頭がついた尻尾、胴体に巨鳥の羽が付いた、合成獣だった。今までの＜スクラップ＞モンスターがどことなくゴテゴテしていたのに対し、＜スクラップ・キマイラ＞のフォルムは洗練されている。

＜スクラップ・キマイラ＞
効果モンスター
星４/地属性/獣族/攻1700/守 500
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついた
チューナー１体を選択して特殊召喚する事ができる。
このカードをシンクロ素材とする場合、
「スクラップ」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できず、
他のシンクロ素材モンスターは全て
「スクラップ」と名のついたモンスターでなければならない。

「＜キマイラ＞が召喚に成功した時、墓地に存在する＜スクラップ＞と名のついたチューナー１体を特殊召喚できる。＜スクラップ・ゴブリン＞を特殊召喚！」
　＜スクラップ・キマイラ＞の羽ばたきに導かれ、＜スクラップ・ゴブリン＞がひょこひょこと墓地から這い出てくる。
　場のモンスターのレベルの合計は７。今度こそシンクロ召喚を狙ってくるとミハエルは予想する。
「……君の期待を裏切るようで悪いが、私のエクストラデッキにはレベル７のシンクロモンスターは入っていなくてね。別の方法で突破させてもらう！　魔法カード＜スクラップ・ポリッシュ＞を発動！」
　ミハエルの予想に反し、天羽は速攻魔法カードを発動する。
「私は自分フィールドに表側表示で存在する＜スクラップ＞、＜スクラップ・ゴブリン＞を破壊する！　これにより、他の＜スクラップ＞モンスターはエンドフェイズまで攻撃力が1000ポイント上昇する！」

＜スクラップ・ポリッシュ＞
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター１体を選択して破壊する。
自分フィールド上に表側表示で存在する全ての
「スクラップ」と名のついたモンスターの攻撃力は、
このターンのエンドフェイズ時まで１０００ポイントアップする。

　＜スクラップ・ゴブリン＞が、体の内側から起こった爆発によって砕け散る。
　その爆発によって生まれたエネルギーが＜スクラップ・キマイラ＞に流れ込み、力強い雄叫びを上げた。
　＜スクラップ・キマイラ＞の攻撃力は1000ポイント上昇し、2700。
「そして、＜スクラップ・ゴブリン＞の効果が発動する。このカードが＜スクラップ＞と名のついたカードの効果によって破壊された時、墓地から＜スクラップ＞モンスターを１枚手札に加える。私は＜スクラップ・ゴーレム＞を手札に戻し――バトルフェイズに入るぞ。＜キマイラ＞で＜ダイガスタ・ガルドス＞を攻撃！」
　鉄の翼を羽ばたかせ、機械の合成獣は＜ダイガスタ・ガルドス＞が滞空する高度まで上昇する。
　＜スクラップ・キマイラ＞の胴体を形成しているタービンが急速に回転する。
「レスト・フレイム！」
　獅子の頭が大きく口を開く。
　瞬間、煌々と燃え上がる橙色の火柱が発射された。
　マグマのようにも見える火柱は＜ダイガスタ・ガルドス＞を呑み込み、そのままミハエルに降り注ぐ。
「ぐうっ！！」
　立体映像のため熱さはないが、実際に周囲の温度が上がったような錯覚を覚える。

【ミハエルＬＰ1800→1300】

「カードを１枚伏せ、ターンエンドだ。＜キマイラ＞の攻撃力は元に戻る」
　天羽は退屈だと言わんばかりに肩をすくめたあと、
「どうしたミハエル君？　そろそろ君の本気を見せてくれ」
　挑発的な言葉を投げてくる。
　さっきのターンはミハエルを褒めたくせに、態度がころころと変わる女性である。

【ミハエルＬＰ1300】　手札３枚
場：伏せ２枚
【天羽ＬＰ1800】　手札３枚
場：スクラップ・キマイラ（攻撃）、伏せ１枚

「――俺のターン！」
　天羽に指摘されずとも、分かっている。
　決して手を抜いているわけではないが、あまりにも無様なプレイングを晒せば、天羽が勘違いしかねない。できればこのターンで決めたいところだ。
　しかし、ミハエルの手札に逆転の手はない。
（それなら、今ドローしたこのカードに賭けるしかないか）
　ミハエルは天羽を――正確には彼女が持っているカームを見つめ、自分がすべきことを再確認する。
　モンスターを犠牲にする覚悟などいらない。要は、天羽に勝てばいいのだ。
「魔法カード＜オール・チェンジ＞を発動！　俺は手札を全て捨て、捨てた枚数分デッキからカードをドローする！」

＜オール・チェンジ＞
通常魔法（オリジナルカード）
手札を全て捨てる。その後、自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。

「ここで手札交換系のカードを引いてくるか……果たして勝利の女神はどちらに微笑むのかな」
　ミハエルは３枚のカードを墓地に捨て、デッキからカードをドローする。
（……よし！）
　ドローした３枚は、全てこの状況を覆すために必要なカードだった。
「それじゃ、行かせてもらうっスよ！　まずは伏せカード＜ガスタへの祈り＞を発動！　墓地の＜ガスタ＞を２枚デッキに戻しシャッフル。その後墓地から＜ガスタ＞と名のついたモンスターを特殊召喚します！　俺は＜ガスタ・ガルド＞と＜ガスタの疾風 リーズ＞をデッキに戻し、＜ガスタの賢者 ウィンダール＞を特殊召喚！」

＜ガスタへの祈り＞
通常罠
自分の墓地に存在する「ガスタ」と名のついたモンスター２体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分の墓地に存在する「ガスタ」と名のついたモンスター１体を選択して特殊召喚する。

　ミハエルのフィールドに緩やかな風が吹き、麻のローブを纏った緑髪の男性が姿を現す。落ち着いた雰囲気の中に力強さを感じさせ、手にした杖はカームのそれよりも攻撃的なフォルムをしていた。湾曲した先端部分は、鎌のようにも見える。

＜ガスタの賢者 ウィンダール＞
効果モンスター
星６/風属性/サイキック族/攻2000/守1000
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分の墓地に存在するレベル３以下の「ガスタ」と名のついた
モンスター１体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。

　＜ガスタの疾風 リーズ＞と、＜ガスタの賢者 ウィンダール＞。共に＜オール・チェンジ＞の効果で墓地に送ったモンスターだ。
「そして、＜ガスタ・イグル＞を召喚し、＜ウィンダール＞にチューニング！」
　呼び出された＜ガスタ・イグル＞は元気よく飛び立ち、２体のモンスターが光の柱に包まれる。

＜ガスタ・イグル＞
チューナー（効果モンスター）
星１/風属性/鳥獣族/攻 200/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからチューナー以外のレベル４以下の
「ガスタ」と名のついたモンスター１体を特殊召喚する事ができる。

「猛る風――荒れ狂う風をその英知を持って鎮め、己が力へと昇華せよ！　シンクロ召喚！」
　光が四散し、現れたモンスターを中心にして風が吹き荒れる。
「薫風の賢者――＜ダイガスタ・イグルス＞！」