にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 3-9

「どうした? 随分考え込んでるみたいじゃねえか。テメエほどの決闘者なら、即断即決できる場面だろ」
 以前のアレクとの決闘では、わずか3ターンで決着をつけた。その時のミハエルなら、相手の手を予測したうえでの最良の戦術を導き出すのに、そう時間はかからなかっただろう。
 だが、今のミハエルは違う。
 ここまで積み重ねてきた「様々な要因」が、ミハエルの思考を鈍らせている――そう思ってから、首を横に振って前言撤回する。鈍る、なんて言葉は相応しくないはずだ。
 デッキからカードをドローし、手札とフィールドに視線を巡らす。
 セットモンスターは戦闘破壊によってリクルート効果を発動できる<ガスタの巫女 ウィンダ>。伏せカードもあるし、例え攻撃に失敗したとしても、保険は十分だ。
「<ガスタ・サンボルト>を召喚!」
 ミハエルの場に、エメラルドグリーンの毛に覆われ、一角獣のそれを思わせる角を生やした大型犬が現れる。

<ガスタ・サンボルト>
効果モンスター
星4/風属性/雷族/攻1500/守1200
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、
そのバトルフェイズ終了時に自分の墓地に存在する
「ガスタ」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、
自分のデッキから守備力1500以下の
サイキック族・風属性モンスター1体を特殊召喚する。

「……<ガスタ・サンボルト>だと? ハン、デッキを変えたってことか」
 過去にミハエルが使っていたデッキと<ガスタ・サンボルト>にシナジーはほとんどない。そのことから、デッキを変えたと判断したのだろう。
「バトルフェイズ――」
 召喚した<ガスタ・サンボルト>でアレクの裏守備モンスターを攻撃しようとして、ふと気付く。
 この展開に強い既視感を感じる。
 アレクの姿を初めて見たときのような曖昧なものではない。ミハエルの記憶には、この状況と全く同じ場面がしっかりと焼き付いている。
 つい数時間前――天羽に呼び出され、実力テストと称して始まった彼女とのデュエル。モンスターを犠牲にすることを躊躇い、敗北したデュエルと同じ展開だった。あのときも、<ガスタの巫女 ウィンダ>を壁に残しつつ、<ガスタ・サンボルト>で天羽の伏せモンスターを攻撃した。
(――考えすぎだ)
 序盤に同じ手を取ったからと言って、デュエルの結果まで同じになることなどあり得ない。「負けたデュエルと同じ戦術を取りたくなかった」なんて理由で、攻撃力が心許ない<ガスタの巫女 ウィンダ>を反転召喚し、攻撃に参加させるのは危険すぎる。余計なネガティブ要素を引っ張り出そうとする思考回路を引き戻し、ミハエルは攻撃を宣言する。
「……<ガスタ・サンボルト>で伏せモンスターを攻撃!」
 頭を下げて額の角を前面に出した<ガスタ・サンボルト>が、アレクのフィールドを目がけて勢いよく突進する。
 雷鳴を纏った角が伏せモンスターを突き刺し、リバース。人影のようなものが揺らめいたかと思うと、そのまま砕け散る。
「破壊されたのは<フェデライザー>……効果発動だ。このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキからデュアルモンスターを1体墓地に送ることで、カードを1枚ドローする」

<フェデライザー>
効果モンスター
星2/風属性/魔法使い族/攻 700/守1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからデュアルモンスター1体を墓地へ送り、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。

 デュアルモンスター。手札や墓地では通常モンスターと同じ扱いだが、フィールドで再度召喚することによって効果を発揮するモンスター群の総称だ。
「俺は<フェニックス・ギア・フリード>を墓地に送り、カードを1枚ドローするぜ」
 通常モンスターと同じ扱いということは、すなわち蘇生手段が豊富にあるということ。
 下手に手札に加えるよりも、墓地に送っておいたほうが召喚しやすいモンスターもいる。<フェニックス・ギア・フリード>もその類だろうか。
「攻撃できるモンスターはその犬っころだけみたいだが、まだバトルフェイズを続けるのか?」
「いや、このままターンエンドだ」
 残した「保険」が果たして「保険」として機能するのかどうか一抹の不安を抱きながら、ミハエルは自らのターンを終える。

【ミハエルLP4000】 手札4枚
場:ガスタ・サンボルト(攻撃)、裏守備モンスター、伏せ1枚
【アレクLP4000】 手札6枚
場:なし

「俺のターン」
 自分の意気込みを叫ぶでもなく、相手を挑発するのでもなく、アレクは静かにカードをドローする。
 その瞳に、殺意にも似た意志の炎を宿しながら。
「永続魔法<金剛真力>発動! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、1ターンに1度手札からデュアルモンスターを特殊召喚できる!」

<金剛真力>
永続魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札からレベル4以下のデュアルモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「――ッ」
 先のターンに<金剛真力>を持っていたとしたら、使わない理由はない。推測だが、<フェデライザー>の効果によってドローしたのだろう。
「来い! <エヴォルテクター シュバリエ>!」
 ボッ! とアレクのフィールドに炎の柱が立ち上り、それを両断するように剣閃が煌めく。
 炎の柱を切り裂いた剣はその灼熱を刀身に纏い、残り火は雲のように形を変える。
 右手には湾曲した剣。左手にはなびく焔。
 炎を模した鎧を身につけた剣士が、ミハエルの前に立ちはだかった。

<エヴォルテクター シュバリエ>
デュアルモンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1900/守 900
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分フィールド上に表側表示で存在する装備カード1枚を墓地へ送る事で、
相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。