にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 2-5

 緊張のせいか、手のひらに汗がにじむ。
「……ひとつ聞いていいっスか?」
「私に答えられることであれば、答えよう」
「朱野先輩は――」
「天羽でいい。名字で呼ばれるのは慣れなくてな」
 名前で呼ぶことを要求してきた天羽に、ミハエルは一旦言葉を区切ってから、続ける。
「天羽先輩は、カードの精霊が見えるんですか?」
 カームとの会話を聞いて笑っていたということは、声が聞こえているのは確実だろう。
「一応見える、といったところか。声ははっきりと聞こえるが、姿はおぼろげだ。カードイラストの事前知識がなければ、どんな姿をしているのか判別できないレベルだな」
 そう言って、天羽は軽いため息を吐き、力無く首を振る。精霊の姿を正確に見ることができないのが不満のようだ。
 ミハエルは、自分と同じ能力――カードの精霊の存在を知覚できる――を持った人間に会うのは初めてだった。状況が状況なだけに、気味が悪い。自分以外にカームの声が聞こえている人間がいるなんて考えもしなかった。自分だけの秘密基地に土足で踏み込まれたような気分だ。
(とりあえずは、カームを取り戻さないと……!)
 天羽の来ているジャケットの内ポケットに隠されたカームは、姿を見せる気配がない。
 今まで肌身離さず持ち歩いていたので気付かなかったが、ミハエルの手元にないと姿を現すことができないのだろうか。
「行きますよ! 俺のターン!」
 先攻は譲ってくれるらしい。不敵に笑う天羽を前にし、ミハエルはカードを引く。
 昨日の馬橋との決闘のように感情に流されすぎてもいけないが、かといって手を抜くことはできない。加えて、相手の手の内は未知数。
「モンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンドです」
 攻める理由が見当たらない。ミハエルは無難に初ターンを終える。

【ミハエルLP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【天羽LP4000】 手札5枚
場:なし

「私のターンか」
 表情を崩さぬまま、天羽は落ち着いた動作でデッキからカードをドローする。
 セキュリティ本部所属の捜査官で、単独での捜査権を与えられるほどの人物。ストラと同格か、それ以上の腕前の持ち主だろう。
(さて。どんな手でくる?)
 ミハエルがセットしたモンスターは<ガスタの巫女 ウィンダ>。戦闘破壊によって<ガスタ>と名のついたチューナーをリクルートできる効果を持つ。天羽が貫通効果を持つモンスターを召喚してくると厄介だが、それでも次手に繋げることは可能だ。
 天羽は自分の手札を順々に眺めた後、1枚のカードを選び取る。
 無意識のうちに、ミハエルは息を飲んだ。
「モンスターをセットして、ターンを終了しよう」
 天羽の場に裏守備モンスターが出現する。
 たったそれだけで、天羽のターンは終了してしまった。
「は、はあ」
 拍子抜けしてしまったミハエルは、思わず間抜けな声を出してしまう。
 それを見た天羽は、笑みの色を濃くする。
「私は君の実力を図るためにデュエルをしている。まずは君が動くのを待たせてもらうとするよ」
 天羽の言葉は、余裕と自信に満ち溢れていた。

【ミハエルLP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【天羽LP4000】 手札5枚
場:裏守備モンスター