にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 4-9

 ミハエルは慎重な手つきでカードをドローする。
 <ガスタ・ガルド>はフィールドから墓地に送られることでリクルート効果を発揮するモンスター。戦闘だけでなくカード効果での破壊にも対応しているため、モンスターが途切れてしまうことはないはずだ。
 そして、今ドローしたカード。
「…………」
 一度はデッキから抜いた。
 しかし、過去の自分を乗り越えるためには必要だと思ったため、戻したカードだった。
「どうした? ちょっと顔色が優れないみたいだが」
「……問題ないっス。カードを1枚伏せて、ターンを終了します」
 神楽屋の指摘に、ミハエルは慌ててかぶりを振る。動揺が簡単に表に出るようでは、この先戦いぬくなんてことはできない。
 ミハエルの場に現れた伏せカードを見て、神楽屋が意味ありげに口角を釣り上げる。
「そいつが逆転へのキーカードってわけか?」
 右手で拳銃を撃つようなジェスチャーをしながら、よく通る声で告げる。
「……そう思うなら、存分に警戒してくれるとありがたいっスね。こっちが動きやすくなる」
「ハッ、いい答えだ」
 ミハエルの強気な発言に、神楽屋は満足したようだ。
 自らの胸に手を当て、心臓の鼓動を確かめる。
(――大丈夫だ。行ける)

【ミハエルLP3300】 手札2枚
場:ガスタ・ガルド(守備)、伏せ1枚
【神楽屋LP3200】 手札0枚
場:ジェムナイト・プリズムオーラ(攻撃)、伏せ1枚

「さあて、そろそろこの膠着状態から抜け出したいところだが……ドロー!」
 と言いながらカードをドローした神楽屋だが、またしても渋い表情を浮かべる。ミハエルとしても今の状況は苦しいので、神楽屋に動かれると困るのだが。
 神楽屋は面倒くさそうに<ガスタ・ガルド>を指差すと、
「そいつは確か戦闘破壊以外でも効果が発動するんだったな……面倒くせえ。なら、<プリズムオーラ>の効果を使う必要はないか。このままバトルフェイズに入るぞ。<プリズムオーラ>で<ガスタ・ガルド>を攻撃! ボルト・バンカー!」
 銀色の騎士は<ガスタ・ガルド>の真下付近まで歩を進めると、グッと両足に力を溜めてから跳躍する。そして、レイピアで滞空していた鳥を突き上げた。その攻撃を慌てて回避しようとする<ガスタ・ガルド>だったが、防御のために翼を畳んでいたため動作が遅れ、その隙を突かれて貫かれてしまう。
 か細い断末魔を上げ、<ガスタ・ガルド>が地に墜ちる。
「<ガスタ・ガルド>の効果で、<ガスタ・イグル>を守備表示で特殊召喚します!」
「またリクルーターか……けどな! 悪あがきはここまでだ!」
 フィールドに<ガスタ・イグル>が特殊召喚されるのを見たと同時、神楽屋が伏せカードの起動ボタンに手をかける。
「罠カード<ジェム・エンハンス>を発動! フィールドの<ジェムナイト・プリズムオーラ>をリリースして、墓地から<ジェムナイト>と名のついたモンスターを特殊召喚する!」

<ジェム・エンハンス>
通常罠
自分フィールド上に存在する
「ジェムナイト」と名のついたモンスター1体をリリースし、
自分の墓地に存在する「ジェムナイト」と名のついた
モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

「連続攻撃でリクルーターを全て潰すつもりっスか? ――いや、違う!」
 口にした瞬間、ミハエルは自分の考えの甘さに気付く。
 神楽屋の墓地には様々な<ジェムナイト>が眠っているが、その中には確か――
「気付いたみたいだな! 俺が特殊召喚するのは<ジェムナイト・ルビーズ>! こいつは貫通効果を持つモンスターだ!」
 <ジェムナイト・プリズムオーラ>の甲冑の隙間から、光が漏れだす。
 その光は、ミハエルの視界を覆いつくすまで白く輝き――
 視力が戻った時には、紅蓮の騎士<ジェムナイト・ルビーズ>が佇んでいた。
 貫通――守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃したモンスターの攻撃力が相手の守備力を超えていれば、その数値だけ相手ライフにダメージを与える効果のことだ。
 リクルーターを守備表示で召喚してダメージをしのいできたミハエルだったが、<ジェムナイト・ルビーズ>が出てきた以上、モンスターのリクルートはできても戦闘ダメージを回避できなくなる。
「追撃と行かせてもらうぜ! クリムゾン・トライデント!」
 <ジェムナイト・ルビーズ>が振るう炎の槍が、<ガスタ・イグル>を串刺しにする。
 突き抜けた矛先から三又の炎が放たれ、ミハエルの体を焼いた。
「ぐうっ!」

【ミハエルLP3300→1200】

 思わず、声が出る。立体映像と分かっていても、実際に肌を焼かれたような熱を感じてしまった。それほどの気迫がこもった攻撃。
「ハッ、今のはなかなか堪えたんじゃねえのか?」
「正直、手痛すぎるダメージですけど……まだっスよ。俺は<ガスタ・イグル>の効果で、<ガスタ>と名のついたチューナー以外のレベル4以下のモンスターを特殊召喚します!」
 手札にこの状況を打開できるカードはない。
 それなら、呼び出すモンスターは「1人」しかいない。
「頼む、俺に力を貸してくれ……! <ガスタの静寂 カーム>!」
 破壊された<ガスタ・イグル>が残した1枚の羽根が、柔らかな風によってふわりと舞い上がる。
 トン、と軽やかにフィールドに降り立った少女――<ガスタの静寂 カーム>は、落ちてくる羽根を手のひらで受け止める。
「マスター」
 ミハエルに背を向けたまま、カームが口を開く。
「わたしは、マスターのこと、信じてます」
「……ああ」
 その言葉だけで、体中に力が漲るのが分かった。
 今度こそ間違えない。
 逃げずに、立ち向かってみせる。

「だから、わたしのこと、信じてください」

<ガスタの静寂 カーム>
効果モンスター
星4/風属性/サイキック族/攻1700/守1100
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
「ガスタ」と名のついたモンスター2体をデッキに戻す事で、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。