にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 1-5

「俺のターンだな! 時間もかけたくねえし、さっさと終わらせるぜ!」
 カードを引いた朧は、威勢よく宣言する。
 サイコデュエリストである=デュエルが強いというわけではない。どの程度の腕前で過剰な自信を支えているのか……紫音は品定めをするような視線で朧を見つめる。
「まずはカードを1枚伏せ、<ヴァイロン・ヘキサ>を召喚! こいつが召喚に成功した時、手札からレベル3以下の<ヴァイロン>と名のついたモンスターを特殊召喚できるぜ!」

<ヴァイロン・ヘキサ>
効果モンスター(オリジナルカード)
星4/光属性/天使族/攻1600/守 500
このカードが召喚に成功した時、手札からレベル3以下の<ヴァイロン>と名のついたモンスターを
特殊召喚する事ができる。

 西洋の宮廷にある調度品を思わせるような白い装甲に、金色のラインで装飾をされたモンスターが現れる。両腕が異様に太く、肘の部分には六角形の盾のようなものが装着されている。一見すると機械族のモンスターのように見えるが、
(<光神機>……?)
 紫音は<ヴァイロン・ヘキサ>によく似た雰囲気を持つモンスターを見た事があった。
 <光神機>。あのカード群は、姿形は機械に近くても、実際の種族は天使族だったはずだ。
「<ヴァイロン・ヘキサ>の効果で、手札から<ヴァイロン・キューブ>を特殊召喚!」
 特殊召喚されたのは、サイコロのような立方体に頭と手足がついた、奇妙な形のモンスターだ。

<ヴァイロン・キューブ>
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/機械族/攻 800/守 800
このカードが光属性モンスターのシンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、
自分のデッキから装備魔法カード1枚を選択し、手札に加える事ができる。

「遠慮はしねえ――<ヴァイロン・ヘキサ>に<ヴァイロン・キューブ>をチューニング! 遥か天上の観測者! 慈悲ある裁きにて、悪意を浄化しろ!」
 朧の叫びと共に、2体のモンスターが光に包まれる。
 光の中で3つの星が瞬き、新たなる姿を形成する。
シンクロ召喚! 律せよ、<ヴァイロン・シグマ>!!」
 光を突き破り、<ヴァイロン・シグマ>が朧のフィールドへと降り立つ。
 「Σ」の形をしたボディの周りは、「σ」を模ったリングで装飾されている。黒真珠のような輝きを放つ2枚の羽が、鋭利な先端を光らせながら開いていく。無機質な青の瞳が、紫音の姿を捉えた。

<ヴァイロン・シグマ>
シンクロ・効果モンスター
星7/光属性/天使族/攻1800/守1000
光属性チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、
このカードの攻撃宣言時に発動する事ができる。
自分のデッキから装備魔法カード1枚を選択し、このカードに装備する。

(1ターン目からシンクロ召喚……少しはやるみたいじゃない)
 大言を吐くだけの根拠はありそうだ。<ヴァイロン・ヘキサ>を召喚する前に伏せたカードも気になる。
「<ヴァイロン・キューブ>の効果発動! こいつが光属性シンクロモンスターシンクロ召喚に使用され墓地に送られた時、自分のデッキから装備魔法を1枚手札に加えることができるぜ! 俺が加えるのは<ヴァイロン・コンポーネント>。そのまま<シグマ>に装備する!」
 <ヴァイロン・シグマ>の右手に、白のリングが装着される。リングには、刺突用に尖らせた紅色のクリスタルが埋め込まれている。

<ヴァイロン・コンポーネント>
装備魔法
「ヴァイロン」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた場合、
デッキから「ヴァイロン」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

「<コンポーネント>を装備したモンスターは、貫通効果を得るぜ! バトルだ。<ヴァイロン・シグマ>で伏せモンスターを攻撃!」
「――っ!」
 貫通効果を付与されるのは痛いが、<ヴァイロン・シグマ>の攻撃力は1800。セットされている<リチュア・エリアル>の守備力と互角だ。このまま行けば、ダメージ無しで<リチュア・エリアル>のリバース効果を発動できる――
「<ヴァイロン・シグマ>の効果発動ッ! 攻撃宣言時、自分のデッキから装備カードを1枚装備する事ができる! <魔導師の力>を<シグマ>に装備だ!」

<魔導師の力>
装備魔法
装備モンスターの攻撃力・守備力は、
自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚につき
500ポイントアップする。

「なっ!? まず――」
フォトン・スピア!」
 <ヴァイロン・シグマ>の背にある2枚の羽が、爆発的な風を生む。
 一瞬で加速した<ヴァイロン・シグマ>は、右手に装着した<ヴァイロン・コンポーネント>を振りかぶる。紅色のクリスタルが輝きを増し、光が外側に漏れだす。
 <魔導師の力>を装備した事により、<ヴァイロン・シグマ>の攻撃力は1500ポイント上昇し、3300。
 攻撃対象に選択されたことでカードがリバースし、<リチュア・エリアル>がその姿を現す。先端部に小型化した<リチュアの儀水鏡>を取りつけた杖を構えて守りを固めているが、<リチュア・エリアル>の守備力ではひとたまりもない。
 だが、すでにリバース効果の発動は確定済みだ。このまま戦闘破壊されてしまっても問題は無い。貫通ダメージは必要経費と割り切るべきだろう。
 ――と、理性は訴えている。
 だが、本能は納得していなかった。
 <リチュア・エリアル>が破壊される様――それは「あの時の再現」を連想させた。
 あの時。
 彼女を失った、あの時の再現。
「……ダメージステップに伏せカードを使うわ!」
 気付けば、紫音は反射的に動いていた。
「この場面で発動するカード……!?」
「罠カード<D2シールド>! このカードの効果で、あたしは<エリアル>の守備力を2倍にする!」

<D2シールド>
通常罠
自分フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの守備力は、元々の守備力を倍にした数値になる。

 <リチュア・エリアル>が短い呪文を唱えると、彼女の目の前に水色の障壁が出現する。
 <ヴァイロン・シグマ>の右拳が障壁に激突する。
 ザザザ……と障壁の表面が波打ち、衝撃を吸収。
 手ごたえがない事を悟った機械天使は、自らのフィールドに舞い戻っていく。

【朧LP4000→3600】

 <D2シールド>の効果により、<リチュア・エリアル>の守備力は2倍の3600まで上昇し、300ポイントの反射ダメージが発生した。
「……くそったれ。まさか<シグマ>の攻撃を防がれるなんてな」
「…………」
 朧が悔しそうに呻く。
 <D2シールド>は、発動する状況が限られたカード。貫通ダメージを防ぐ意味でも、ここで使っておくべきだった。
 紫音はそう自分に言い聞かせる。
 そう。
 
(<エリアル>を守ったわけじゃないんだから)

「――<エリアル>のリバース効果で、あたしはデッキから<リチュア>と名のついたモンスター……<シャドウ・リチュア>を手札に加えるわ」
「そうかよ。俺はターンエンドだ」
 紫音の場に残った魔法使いの後ろ姿。
 あまり見ていたいものではなかった。

【紫音LP4000】 手札5枚
場:リチュア・エリアル(守備・守備力2倍)
【朧LP3700】 手札3枚
場:ヴァイロン・シグマ(攻撃・ヴァイロン・コンポーネント、魔導師の力装備)、伏せ1枚