遊戯王 New stage2 サイドS 1-4
「ここは危険よ。今のうちにさっさと逃げなさい」
紫音は、呆けたまま突っ立っている女性に声をかける。
一般人の目の前でこれ以上サイコパワーを使う気はなかったが、相手も同じように考えているとは限らない。先程の攻撃のような力を使われた場合、この場に留まっていては巻き込まれる。
紫音の声にハッとした表情を浮かべた女性は、何かを喋ろうとして口を開いた後――
「あ……」
へなへなと尻もちをついた。
「……何、やってるの?」
「あ、あはは。腰が抜けちゃったみたいで……」
口元をひきつらせながら、力無く笑う女性。
紫音は頭を抱えそうになるが、逃げることができないなら自分が守るしかないと、すぐに思考を切り替える。
それに気付いたのか、やや不満げな朧が、
「安心しろ。もう力は使わねえよ。お前が妙なことしなきゃ、だけどな」
ぶっきらぼうに言った。どうやらむやみやたらにサイコパワーを振るう愚か者ではないらしい。
「妙なことなんてするはずないでしょ。真正面から完膚なきまでに負かしてあげる。じゃ、あたしの先攻ってことでいいわね」
「ちょっと待て! 何でそうなる!?」
「待たない! あたしのターン! ドロー!」
いきなりすぎる展開に慌てる朧を無視し、紫音は強引に先攻を取る。公式大会の試合というわけではないのだし、こういう場合は言ったもの勝ちだ。朧はまだ喚いていたが、聞く耳持たない。
最初にドローしたカードを手札に加え、戦略を組み立てる。下級モンスターは十分揃っているが、先鋒に適したカードはいない。相手の出方も未知数だし、ここは様子を見るべきだろう。
紫音は右端にあったカード――<リチュア・エリアル>に指を添える。
紫音は、呆けたまま突っ立っている女性に声をかける。
一般人の目の前でこれ以上サイコパワーを使う気はなかったが、相手も同じように考えているとは限らない。先程の攻撃のような力を使われた場合、この場に留まっていては巻き込まれる。
紫音の声にハッとした表情を浮かべた女性は、何かを喋ろうとして口を開いた後――
「あ……」
へなへなと尻もちをついた。
「……何、やってるの?」
「あ、あはは。腰が抜けちゃったみたいで……」
口元をひきつらせながら、力無く笑う女性。
紫音は頭を抱えそうになるが、逃げることができないなら自分が守るしかないと、すぐに思考を切り替える。
それに気付いたのか、やや不満げな朧が、
「安心しろ。もう力は使わねえよ。お前が妙なことしなきゃ、だけどな」
ぶっきらぼうに言った。どうやらむやみやたらにサイコパワーを振るう愚か者ではないらしい。
「妙なことなんてするはずないでしょ。真正面から完膚なきまでに負かしてあげる。じゃ、あたしの先攻ってことでいいわね」
「ちょっと待て! 何でそうなる!?」
「待たない! あたしのターン! ドロー!」
いきなりすぎる展開に慌てる朧を無視し、紫音は強引に先攻を取る。公式大会の試合というわけではないのだし、こういう場合は言ったもの勝ちだ。朧はまだ喚いていたが、聞く耳持たない。
最初にドローしたカードを手札に加え、戦略を組み立てる。下級モンスターは十分揃っているが、先鋒に適したカードはいない。相手の出方も未知数だし、ここは様子を見るべきだろう。
紫音は右端にあったカード――<リチュア・エリアル>に指を添える。
<リチュア・エリアル> 効果モンスター 星4/水属性/魔法使い族/攻1000/守1800 リバース:自分のデッキから 「リチュア」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。
「…………っ」
カードに触れた瞬間、心がざわつくのがはっきりと分かった。
紫音はこのカードが嫌いだった。
「今はいない」――紫音のたった一人の友達、<水霊使いエリア>。
<リチュア・エリアル>の容姿は、彼女にとてもよく似ている。
清らかな水色の髪と瞳を見ているだけで、彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。
だが、<リチュア・エリアル>は彼女ではない。
彼女のように笑わない。
彼女のように話さない。
彼女のように――紫音の友達になってくれない。
それなのに、<リチュア・エリアル>を見ているだけで、彼女を思い出してしまう。彼女の優しさを期待してしまう自分がたまらなく惨めで――だから、紫音はこのカードが嫌いだった。
「おい! 無理矢理先攻取ったくせに長考とかふざけてんのか!」
「ちっ、うるさいわね……モンスターをセット! カードを1枚伏せてターンエンドよ!」
朧の暴言で現実に引き戻された紫音は、<リチュア・エリアル>と1枚の罠カードを伏せてターンを終了する。
いつまでも手札に残しておくと、デュエルに集中できない。ここはさっさと役目を果たしてもらうとしよう。
カードに触れた瞬間、心がざわつくのがはっきりと分かった。
紫音はこのカードが嫌いだった。
「今はいない」――紫音のたった一人の友達、<水霊使いエリア>。
<リチュア・エリアル>の容姿は、彼女にとてもよく似ている。
清らかな水色の髪と瞳を見ているだけで、彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。
だが、<リチュア・エリアル>は彼女ではない。
彼女のように笑わない。
彼女のように話さない。
彼女のように――紫音の友達になってくれない。
それなのに、<リチュア・エリアル>を見ているだけで、彼女を思い出してしまう。彼女の優しさを期待してしまう自分がたまらなく惨めで――だから、紫音はこのカードが嫌いだった。
「おい! 無理矢理先攻取ったくせに長考とかふざけてんのか!」
「ちっ、うるさいわね……モンスターをセット! カードを1枚伏せてターンエンドよ!」
朧の暴言で現実に引き戻された紫音は、<リチュア・エリアル>と1枚の罠カードを伏せてターンを終了する。
いつまでも手札に残しておくと、デュエルに集中できない。ここはさっさと役目を果たしてもらうとしよう。
【紫音LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【朧LP4000】 手札5枚
場:なし
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【朧LP4000】 手札5枚
場:なし