にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 1-6

(もう1体モンスターを召喚していれば、そのまま勝てたかもしれないのに)
 通常召喚権を使わないままターンを終えた馬橋に対し、ミハエルは心中でため息を吐く。
 最も、そうなった場合は伏せカードを使ってダメージを防いだが。
 カードをドローし、手札に加える。
 現状では、<破滅の魔王ガーランドルフ>を打破する手段はない。
 幸い、今引いたカードは2枚目の<ガスタ・イグル>だ。このカードの効果でリクルートしつつ、しのぐしかないか……馬橋の言うとおりにするのは癪だが。
 そう思いつつも、ミハエルは<ガスタ・イグル>をセットしようとする。
 が。
「…………ッ!!」
 そこで、気付いてしまった。
 何気なく伏せた2枚のカード。このカードと<ガスタ・イグル>を使えば――ミハエルは勝つことができる。
(クソがッ……!)
 どうしようもなく腹が立った。
 こんな戦術を思いつく自分に。

 ――こんな戦術でしか勝てない自分自身に対して、だ。

「……伏せカードを使う。<ウィキッド・リボーン>。俺は800ポイントのライフを支払い、墓地のシンクロモンスター――<ダイガスタ・ガルドス>を特殊召喚する」

ウィキッド・リボーン>
永続罠
800ライフポイントを払い、自分の墓地に存在する
シンクロモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
このターン攻撃宣言をする事ができない。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、
そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


【ミハエルLP1400→600】

 魔王が起こした業火によって葬られた<ダイガスタ・ガルドス>が、再び空へ向けて飛翔する。しかし、その羽ばたきは弱々しい。
「残り少ないライフを減らすとは……まさか自滅する気じゃねえだろうな!」
「――黙ってろ。さらにもう1枚の伏せカード<リミット・リバース>を発動。攻撃力1000以下のモンスター、<ガスタ・イグル>を特殊召喚

<リミット・リバース>
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 喚く馬橋を一蹴し、ミハエルは墓地から<ガスタ・イグル>を蘇生させる。
 これで、駒は揃った。
 ――やめろ。
 どこからか声が聞こえた気がした。
 まだ、引き返せる。
 しかし、脳裏に浮かんだ光景――馬橋がカードを破り捨てた瞬間を思い出し、ミハエルは覚悟を固める。

(結局俺は、あの頃から何も変わっちゃいないんだ)

 だから、デュエルをするのは嫌いだ――声に出さずに呟く。
「……レベル5の<ダイガスタ・ガルドス>に、レベル1の<ガスタ・イグル>をチューニング」
 <ガスタ・イグル>がその姿を光球へと変え、<ダイガスタ・ガルドス>が緑の輪に包まれる。
「優しき風――有を生み出すその力で、我らを包みたまえ。シンクロ召喚
 光が、ミハエルのフィールドを駆け抜ける。
 その眩しさに目を細めながら――
「薫風の盾! <ダイガスタ・スフィアード>!」
 新たなシンクロモンスターを呼びだした。
 <ガスタの巫女 ウィンダ>や<ガスタの静寂 カーム>とよく似た、翡翠色の髪。しかし翡翠色に染まっているのは途中までで、毛先に向かうにつれてその色は果実を思わせる橙へと変化する。
 蒼の宝石を埋め込んだ額当て、胸当て、ベルトを纏った少女。杖を構えた<ダイガスタ・スフィアード>は、魔王を前にひるむことなく立つ。

<ダイガスタ・スフィアード>
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/サイキック族/攻2000/守1300
チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する「ガスタ」と名のついた
カード1枚を選択して手札に戻す事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上に表側表示で存在する
「ガスタ」と名のついたモンスターの戦闘によって
発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
また、このカードは戦闘では破壊されない。

「……で? <ガーランドルフ>よりも攻撃力の低いそいつでどうするんだ?」
 馬橋がニヤニヤと笑う。口が達者なのは、むしろミハエルよりも馬橋なのではないだろうか。
 ミハエルは両目を閉じて馬橋を視界から消すと、大きく深呼吸する。
「――やっぱお前を許すわけにはいかない。<ガスタ・イグル>を召喚」
 フィールドに現れた2体目の<ガスタ・イグル>は、ミハエルの意図を汲んだかのようにこちらに視線を向けてくる。
 その瞳は決意の光に満ちていたが、ミハエルはそれを見るのが辛くて、目を逸らした。
 馬橋にはミハエルがやろうとしていることが分からないようで、怪訝な表情を浮かべている。
「<ダイガスタ・スフィアード>の効果を教えてやるよ。こいつが表側表示で存在するとき、自分フィールド上の<ガスタ>と名のついたモンスターの戦闘によって発生する戦闘ダメージは、相手が受ける。言ってる意味が分かるか?」
 ミハエルの説明に対し、馬橋はポカンと口を開けるが、
「……まさかてめえ!!」
 ようやく<ガスタ・イグル>を召喚した意味に気付いたようで、焦りを顕わにする。
「バトルだ。<ガスタ・イグル>で<ガーランドルフ>に攻撃」
「待て! やめろ!!」
 馬橋は必死に叫ぶが、もう遅い。
 敵に向かって一直線に飛んだ<ガスタ・イグル>だったが、<破滅の魔王ガーランドルフ>が振るう黒の刃――「デモンズ・ブリンガー」の一撃を受け、無惨に羽を散らしながら地に墜ちる。
「<スフィアード>の効果発動。今の戦闘で発生した2400ポイントのダメージを受けてもらう。ソウル・ペイン!!」
 <ダイガスタ・スフィアード>の身につけていた蒼の宝石が一斉に輝きを増す。
 地に堕ちた<ガスタ・イグル>の魂を糧とし、<ダイガスタ・スフィアード>の杖から一筋の光弾が撃ち出された。
「ざけんな!! こんなの――」
 言い終わらないうちに、馬橋の体に光弾が直撃する。

【馬橋LP1800→0】

「大馬鹿野郎だ。お前も、俺もな」
 ミハエルの呟きは、馬橋には届かなかっただろう。