にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 1-4

「先攻は譲ってやるよ。テメエは『挑戦者』だからな」
 馬橋(まばし)と名乗った男は、余裕たっぷりに告げる。
「……俺の先攻。ドロー」
 挑発のつもりなら、安すぎる。馬橋の言葉を気にすることなくカードを引いたミハエルは、初手となった6枚に目を通す。悪くない手札だ。
 デュエルが始まると同時、カームは姿を消している。カードの中に戻ったのだろう。
「モンスターをセット。カードを2枚セットして、ターンエンドだ」
 ミハエルの場に合計3枚のセットカードが現れる。
「……チッ」
 何が不満なのか、馬橋がこれ見よがしに舌打ちをする。

【ミハエルLP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【馬橋LP4000】 手札5枚
場:なし

「俺のターンだ。俺は<儀式魔人プレサイダー>を召喚するぜ」
 馬橋が呼びだしたのは、藍色の装具を身につけた、緑色の悪魔だった。金色の盾と鍔が骨になっているレイピアを構えているが、その腹はでっぷりと膨らんでいる。

<儀式魔人プレサイダー>
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1400
儀式モンスターの儀式召喚を行う場合、
その儀式召喚に必要なレベル分のモンスター1体として、
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事ができる。
このカードを儀式召喚に使用した儀式モンスターが
戦闘によってモンスターを破壊した場合、
その儀式モンスターのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローする。

 <儀式魔人>を呼び出したということは、儀式モンスターを中心に据えたデッキと見て間違いないだろう。
 余計に腹が立った。
 シンクロや融合と比べると、使用者の少ない儀式モンスター。だからだろうか、儀式モンスターを使っている決闘者は、カードに対して並々ならぬ愛情を注いでいることが多い。これまでミハエルが出会った決闘者もそうだった。
 しかし、目の前に立つ男はいとも簡単にカードを破り捨てた。こんな男が儀式モンスターを使っていることに、怒りを感じずにはいられない。
「行くぜ! <プレサイダー>で伏せモンスターを攻撃!」
 <儀式魔人プレサイダー>のレイピアが、ミハエルのセットモンスターを貫く。
 色鮮やかな緑の羽が舞い散り、姿を現した鳥型のモンスターが甲高い鳴き声を上げる。
「破壊されたモンスターは<ガスタ・イグル>。こいつが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の<ガスタ>と名のついたモンスターを特殊召喚できる! 頼むぜ、<ガスタの巫女 ウィンダ>!」
 <ガスタ・イグル>の鳴き声に導かれ戦場に現れたのは、翡翠色の髪をポニーテールに結った、快活そうな少女だった。麻のローブを羽織り、その肩には<ガスタ・イグル>に似た小鳥がとまっている。

<ガスタ・イグル>
チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/鳥獣族/攻 200/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからチューナー以外のレベル4以下の
「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。


<ガスタの巫女 ウィンダ>
効果モンスター
星2/風属性/サイキック族/攻1000/守 400
このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから「ガスタ」と名のついたチューナー1体を特殊召喚する事ができる。

 カームの持つそれよりも幾分か小振りの杖を真正面に構え、<ガスタの巫女 ウィンダ>は防御姿勢を取る。
「ケッ! どんなモンスターを呼んでくるかと思えば、そいつもリクルーターかよ! ちまちまと時間稼ぎしようってか? ウゼェやつ」
「……おーおーさすがはチャンピオン殿だ。リクルーターを召喚しただけで俺の狙いが全部分かっちまうとは。そんで、バトルは終わったんだけど、まだやることあるんスかねえ?」
 大声で悪態を吐く馬橋に対し、ミハエルはわざとらしく肩をすくめ、煽るような声色で嫌味を吐き出す。
「てめえ!」
 顔を歪めた馬橋が挑発に乗ってくるが、ギャラリーから忍び笑いが漏れていることに気付くと、
「……ターンエンドだ。その弱小モンスターで何ができるのか、見せてもらおうじゃねえか」
 腕組みをし、胸を張って堂々と構えてみせる。
 が、所詮は振りだけ。口ばかりの生意気な野郎――ミハエルをどうやって倒してやろうかと苛立っているのが丸見えだ。

【ミハエルLP4000】 手札3枚
場:ガスタの巫女 ウィンダ(守備)、伏せ2枚
【馬橋LP4000】 手札5枚
場:儀式魔人プレサイダー(攻撃)

「俺のターン。ドローだ」
 ミハエルの使う<ガスタ>デッキには、リクルート効果を持つモンスターが多い。あえて馬橋の指摘通りにリクルートを続け、相手をイライラを加速させてやろうかとも思ったが、やめる。
(……まだ悪癖が抜けきってねえな。フィールドや手札だけでなく、精神的にもアドバンテージを取ろうとする。悪い癖だ)
 思考を切り替え、ミハエルは1枚のカードを選び取る。
「<ガスタ・ガルド>を召喚!」
 現れたのは、<ガスタ・イグル>と同じく鮮やかな緑色の羽毛を生やした、鷲によく似たモンスターだ。

<ガスタ・ガルド>
チューナー(効果モンスター)
星3/風属性/鳥獣族/攻 500/守 500
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキからレベル2以下の「ガスタ」と名のついた
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「レベル2の<ウィンダ>に、レベル3の<ガルド>をチューニング!」
 周囲のギャラリーからどよめきが沸き起こる。
 <ガスタ・ガルド>が力強く両翼を羽ばたかせ、その体を3つの光球に変える。
 杖を握りしめ、両目を閉じた<ガスタの巫女 ウィンダ>が3つの輪に囲まれ、その中心を光が貫く。
「聖なる風――我らを守護せしその力を、雷の牙へと変えよ! シンクロ召喚!」
 光が四散すると共に、ミハエルのフィールドに風が巻き起こる。
「薫風の矛、<ダイガスタ・ガルドス>!」
 生まれた気流に乗り空を舞うのは、成長し大きな体となった<ガスタ・ガルド>。
 その背には、手綱を持った<ガスタの巫女 ウィンダ>の姿がある。

<ダイガスタ・ガルドス>
シンクロ・効果モンスター
星5/風属性/サイキック族/攻2200/守 800
チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
「ガスタ」と名のついたモンスター2体をデッキに戻す事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

「チッ……シンクロ召喚なんて汚ねえぞ!」
 馬橋が悔しげに喚くが、ミハエルは無視する。
「<ダイガスタ・ガルドス>の効果を発動! 自分の墓地に存在する<ガスタ>と名のついたモンスター2枚をデッキに戻すことで、相手フィールドに表側表示で存在するモンスター1枚を破壊する! 俺は<ガルド>と<ウィンダ>をデッキに戻す」
 <ガスタの巫女 ウィンダ>が構えた杖の先に、魔力が集中する。
 収束した魔力は白の光を放つ雷へと変化し、パリパリと音を立てながら爆ぜる。
「標的は<儀式魔人プレサイダー>だ――行くぜ。ソウル・ヴォルト!」
 <ガスタの巫女 ウィンダ>が杖を振り下ろすと、白き雷が儀式魔人に向けて放たれる。
 金色の盾でそれを防ごうとするも、瞬く間に盾を砕かれ、<儀式魔人プレサイダー>は雷の直撃を受ける。
「攻撃力で上回ってるくせに、効果で破壊してきやがるなんて――!」
「バトルフェイズに入るぜ。<ガルドス>でダイレクトアタック! テンペスト・ジェイド!」
 成長した<ガスタ・ガルド>の羽ばたきによって生まれた豪風が、騎乗する<ガスタの巫女 ウィンダ>の唱える呪文により、収束し、竜巻と化す。
 巫女の両目が、穿つべき敵を見据える。
 そして、攻撃が放たれる。
「ぐっ……!」
 生まれた竜巻が馬橋に襲いかかり、その体を削る――とは言っても所詮は立体映像だ。デュエルディスクがデュエルの臨場感を煽るために、微弱な衝撃を与えているのだろう。

【馬橋LP4000→1800】

「舐めたプレイングしやがって……後悔するなよ!」
 ギロリと睨みつけてきた馬橋が、右腕を振り上げて怒りを顕わにする。ピキピキと顔面が歪む音が聞こえてきそうだった。
「――この程度で後悔してるようじゃ、安すぎるっての。ターンエンドだ!」
 前半部分は誰にも聞こえないように呟いてから、ミハエルは大声でターンの終了を告げた。

【ミハエルLP4000】 手札3枚
場:ダイガスタ・ガルドス(攻撃)、伏せ2枚
【馬橋LP1800】 手札5枚
場:なし