にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 1-1

 治安維持局本部。第3デュエル場。
 目立つ所に設置された大きめのデジタル時計は、午後8時を示していた。
 新人の訓練に使用されることの多いこのデュエル場には、ほとんど人影は残っていない。大体が訓練を終え寮や家に帰宅しているか、実地研修のため外に出ているかだ。
 現在、本来の目的でデュエル場を使用しているのは一組のみ。
「……そうね。ここはダメージを優先してみようかしら。バトルフェイズに入るわ!」
 そう宣言したのは、黒のスーツに身を包んだブロンド髪の女性だった。彼女のフィールドには、白い法衣に身を包んだ魔導師<アーカナイト・マジシャン>がいる。

<アーカナイト・マジシャン>
シンクロ・効果モンスター
星7/光属性/魔法使い族/攻 400/守1800
チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを2つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを1つ取り除く事で、
相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

「へえ。<アーカナイト・マジシャン>の効果を使わないんスか? 俺の場には2枚も伏せカードがありますけど」
 そう指摘したのは、女性のデュエルの相手である金髪の男だ。身長は180cmほどで、同年代の男と比べるとひょろりとした印象を受ける。セキュリティの制服を着ているものの、どうにも頼りない感じだ。
 彼の場には、言葉の通り2枚の伏せカード。加えて、緑髪の女性型モンスターがいる。淡い色のローブを羽織り、身の丈を遥かに超えた長さの杖を手にしている。
 <ガスタの静寂 カーム>と呼ばれるモンスターだった。

<ガスタの静寂 カーム>
効果モンスター
星4/風属性/サイキック族/攻1700/守1100
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
「ガスタ」と名のついたモンスター2体をデッキに戻す事で、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「あら。それは挑発のつもりなのかしら、ミハエル・サザーランド君?」
「そういうワケじゃないっスよ。ストラ・ロウマン先輩」
「悪いけど、もうバトルフェイズに入っちゃったし、<アーカナイト・マジシャン>の効果を使うのは後に回させてもらうわ。<アーカナイト>で<カーム>を攻撃!」
 ストラの宣言を受け、白の魔術師が杖の先に魔力を集中させる。
 実際、ストラの手札には<ミラクル・シンクロフュージョン>があった。仮に<アーカナイト・マジシャン>が破壊されたとしても、後続を呼ぶのは容易である。

<ミラクルシンクロフュージョン>
通常魔法
自分のフィールド上・墓地から、
融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
また、セットされたこのカードが
相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 ストラのライフは未だ4000。対し、ミハエルのライフは2400。<アーカナイト・マジシャン>のダイレクトアタックが通れば一撃だ。
「――っと! させるわけには行かねえっスね! 罠カード発動!」
 さすがにこの攻撃を安々と通すほど、甘い男ではないようだ。
 新人とはいえ、セキュリティ本部所属の捜査官なのだ。これくらいは避けてくれないと困る。
 ミハエルの指が動き、ストラから見て右側の伏せカードが起動する。

「<アストラルバリア>! このカードの効果で<アーカナイト>の攻撃対象を俺自身にして――俺のライフはゼロっス! お疲れさまでした!」


<アストラルバリア>
永続罠
相手モンスターが自分フィールド上モンスターを攻撃する場合、
その攻撃を自分ライフへの直接攻撃にする事ができる。


「は……?」
 ストラが呆気に取られているうちに、ミハエルはそそくさとデュエルを終了し、あっという間にデュエル場から出て行ってしまった。
「ちょ、ちょっとミハエル君!? なんなの今のプレイングはーっ!!」
 慌てて叫ぶが、ミハエルが戻ってくる気配はない。
「……はあ。WRGPの再開までもう時間がないっていうのに」
 突如起こった「事件」の影響で中断することになってしまった、ワールドライディングデュエルグランプリ。通称WRGP。
 二度とあんなことがないよう、治安維持局側も万全に万全を重ねたうえで決勝トーナメントを再開しなければならないわけだが……。
 新戦力があんな調子では、難しいかもしれない。

「――相変わらず手を焼いてるみたいね、ストラ」

 肩を落とすストラに、聞き覚えのある声がかけられた。