にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 4-3

「お主、名は?」
 着物の袖の中をごそごそと漁りながら、切が男に問いかける。
「……金盛だ」
「よし。ならわしがコイントスをしよう。表が出たら輝王が先攻。裏が出たら金盛が先攻じゃ」
 そう言って、切は銅色のコインを見せる。現在は流通していない、古い10円玉だった。
「数字が書いてある方が表じゃ――行くぞ!」
 キーン、という甲高い金属音が鳴り、コインが空高く舞い上がる。つられて視線を上げれば、雲ひとつない青空が見えた。
「――っと」
 落下したコインが、切の手の甲に収まる。
「表じゃ。輝王の先攻じゃのう」
「……ちっ。イカサマじゃねーの?」
「なんじゃとう!」
 金盛が吐き捨てた愚痴に、いちいち反応する切。
「……始めるぞ。俺のターンからだな」
 それに構わず、輝王はデッキからカードを引く。
 カードの感触を確かめながら、輝王は自分の心が落ち着いていくのを感じた。
(――しかし、そう悠長にも構えていられないか)
 レボリューションの行方、大石たちの取り調べ、友永切の真実――処理しなければいけない懸念は山ほどある。眼前の男に割く時間はそう多くない。
 輝王は手札である6枚のカードを見る。
 あまりいい初手とは言えなかった。いくつか次の手に繋がるカードがあるが、ドロー次第では悪手になりかねない。
(ならば)
「俺は魔法カード<手札抹殺>を発動。互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分だけカードをドローする」
 見えていた可能性を、躊躇なく切り捨てる。

<手札抹殺>
通常魔法(制限カード)
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。

「あ、ありがてえな。俺もちょうど事故ってたところだぜ」
 そう言う金盛の目は、明らかに泳いでいた。
 互いに手札5枚を捨て、デッキからカードをドローする。
 ――やはり、<手札抹殺>を使って正解だったようだ。
「行くぞ。俺は<AOJアンカーナイト>を召喚」

<A・O・J アンカーナイト>
チューナー(効果モンスター)(オリジナルカード)
星3/闇属性/機械族/攻1200/守1000
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
レベル2以下の「A」と名のついたモンスターを1体表側守備表示で特殊召喚することができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。

 輝王のフィールドに現れたのは、流線型のフォルムを持つ、黒い機械兵だ。その細い体から戦闘用には見えないが、その右腕には小振りの銛が握られていた。
「<AOJアンカーナイト>の効果発動。このカードが召喚に成功したとき、墓地に存在するレベル2以下の「A」と名のついたモンスターを特殊召喚する」
 <AOJアンカーナイト>が地面に向かって銛を放つ。
 銛と腕をつなぐ鎖がジャラジャラと音を立て、銛がコンクリートの地面の中へ「沈む」。
 黒の機械兵が大きく右腕を振るうと、銛が捕らえた<A・ボム>が守備表示で特殊召喚された。
「レベル2<A・ボム>に、レベル3<AOJアンカーナイト>をチューニング。正義の軍団よ、眼前の敵に裁きの鉄槌を下せ! シンクロ召喚!」
 <A・ボム>が2つの星に姿を変え、眩い閃光が突き抜ける。
「粉砕せよ! <AOJカタストル>!」
 緑のモノアイが光り、モーターの駆動音がフィールドに響き渡る。

<A・O・J カタストル>
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 <AOJカタストル>は、事戦闘においては絶対的に有利な効果を持つ。相手の対策が整わないうちに、一気に攻勢をかける。
「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」

【輝王LP4000】 手札3枚
場:AOJカタストル(攻撃)、伏せ1枚
【金盛LP4000】 手札5枚
場:なし

「俺のターンだな! ドロー!!」
 自分を鼓舞するように、声高らかに宣言する金盛。
「……俺はこのままターンを終了する」
「なっ!?」
 声を上げたのは、観戦していた切だった。
「お、お主、それでいいのか? 伏せカードもなしでは、次のターンで負けてしまうかもしれんぞ?」
「うっせえな、外野は黙ってろ」
「なんじゃとう! 人がせっかくアドバイスしてやってるのに!」
 両腕をバタバタと振り回し憤慨する切を見ながら、輝王は金盛の意図を考える。

【輝王LP4000】 手札3枚
場:AOJカタストル(攻撃)、伏せ1枚
【金盛LP4000】 手札6枚
場:なし