鉄血のオルフェンズ感想 破滅を義務付けられた少年たち
かくして悪魔は討たれ、散った命は歴史の闇に消える……
一期を見終えたときは、予想もしていなかった形での終幕。
終わらせ方も含め、「今までのガンダムにはなかった」要素を数多く含んだ作品。
それが鉄血のオルフェンズでした。
その新しさには賛否両方の意見が激しく飛び交い、
かくいう俺も、手放しで絶賛できる心境ではありませんでした。
最終回を視聴してからかなり時間が空いてしまいましたが、
個人的な感想をネタバレ全開で書いていきたいと思います。
今さらですが、未視聴の方は回れ右をお願いします。
今回は否定的な文章が並びますので、そういったものを読みたくない方もブラウザバックを。
一期を見終えたときにちゃんと感想を書いていれば、肯定的な感想が並んだと思うんですよ。
以前の感想記事にも書いた通り、盛り込まれた「新しさ」には、今までのガンダムと比べて、
いい意味で一味違う部分が多く、突っ込みたいマイナスを抑え込むだけのパワーがありました。
鉄華団唯一のバランサーだったビスケットの死、
上司殺しの不幸キャラではなく、ガエリオを成長させるキャラへ昇華したアインの行く末等、
シナリオも予想をプラス方向に裏切ってくれましたし。
戦闘シーンが少なく、中だるみ(コロニー騒乱)したパートもありましたが、
どれだけバルバトスをカッコよく無双させるかに特化した絵作りは、何度も興奮させられました。
一期二期共に、バルバトス最初の登場シーンは完璧。リピートが止まりませんでした。
考えていないようでしっかりと考えているし、過酷な環境で育ったが故の無慈悲さ・冷酷さ、
それでいて、オルガを筆頭とした仲間への情を併せ持った三日月のキャラクターは、
過去の戦闘マシーン系主人公(ヒイロや刹那)とはまた違った魅力を見せてくれました。
だから、最後の締めくくりは「二期も楽しみです!」だったと思います。
それが、二期に入って急激に失速してしまった。
最後まで見て、やりたかったことは分かるんですよ。
任侠映画における成り上がりと報い。
泥に塗れた社会から脱しようとして、その社会に翻弄されてしまった少年たち。
血で血を洗う道の終着点は、自らの死である……
ただ、それがエンターテイメントとして成立していたかは、また別問題でして。
鉄華団の崩壊は事前に決まっていたとどこかで見た気がしますが、
視聴者からすると、マクギリスと正式に結託した辺りから、急に転がり落ちたようにしか見えませんでした。
だって、一期ではあんなに黒幕臭漂わせてたマッキーが、
バエルを手に入れた以降、一気に無能になるのおかし過ぎるでしょう?
結局は古きを崩し革命を遂げようとしていた青年が、一番過去に囚われていたってことなんでしょうが、
いくらなんでも事後の策が何も用意されていないなんて……
頼みの綱であるガンダムバエルも、スタッフから「キマリスヴィダールのほうが強い」と言われてしまう始末。
マクギリスは三日月のライバルになるであろうキャラだと思っていたので、残念で仕方ありません。
無能で槍玉に挙げられるのが、鉄華団の団長であったオルガですが……
個人的に、オルガの描き方は一話を見たときからかなり不安でした。
MSで無双すればとりあえず活躍させられる、有能に見せられるパイロットと違って、
指揮官やリーダーの有能さや頼もしさを描くのは、下積みを含めとても難しいと思っています。
OOで戦術予報士なんて人がいましたが、あまり機能していなかった記憶がありますし。
策士として有能に見せるなら敵が陳腐過ぎてもいけない。
皆の心の支えになるなら、セリフがチープ過ぎてもいけないし、持ち上げ過ぎてもいけない。
そんな前提条件があったので、オルガをどう活躍させるかが鍵になるのかな、なんて思っていました。
これに関してはもう、全編通じてダメだったと言わざるを得ません。
一期での意思決定はほとんど三日月がしていたようなもんですし。オルガが代弁者にしかなっていなかった。
途中で「最後の決定を下し、全責任を背負うのが団長の仕事」と思い直し、
その点ではオルガはきっちり役割を果たせているのかな、と見方を変えたこともありましたが、
結局は味方にも敵にも振り回されたまま、終幕間近で退場という結果に。
専用機に乗ることもないまま、ヒットマンに殺されるという見せ場のないやられ方なのがまた何とも……
作中での評価と、視聴者からの評価が一番乖離したキャラになってしまいました。
難しいとは分かっていたものの、ここまで見所のない終わりを迎えてしまうとは……
あくまで個人的な評価ですが、マクギリスとオルガの無能っぷりが、二期終盤の評価を下げた大きな要因だと思っています。
相対的にユージンの株が上がるという……彼ならいいリーダーになれたと思うんだけどなぁ。
鉄華団内での脱オルガが、もっとあってもよかったのかもしれません。
鉄華団のメンバーたちも、オルガマンセーで思考停止、全ての判断を彼一人に委ねていたのは何だかなぁ。
一度ケチがつくと、他の部分までマイナスに見えてきてしまうというか。
「MAは何だったの?」「厄災戦って結局何?」「二期から登場した新メンバーって何だったの?」等、
寄り道だらけの割には取りこぼしの多さ。
終わりが見え始めようってころにジャスレイみたいな小物と戦っている構成。
決められてしまった破滅に向かって転がり落ちるだけの、終盤の盛り上がらなさ。
お馬鹿キャラから成長するのかと思いきや、最後はコロッと死んでしまったイオク様。
一矢も報いることの出来なかったシノの最後等……突っ込みを入れ始めればキリがありません。
一期ではまだ勢いで隠せていた粗が、噴出してしまったイメージです。
同時期に視聴していた仮面ライダーゴーストや遊戯王ARC-Vが同じコースだっただけに、ゲンナリ度がマシマシでした……
最後まで「オルガの忠犬」を守り抜いた三日月。
彼は成長するのではなく、すでに完結していたヒーロータイプの主人公でした。
三日月を脅かすパイロットが現れることはなく、最後もダインスレイブで狙撃されて半壊してからの撃墜。
これまた「そういうものだった」と考えれば理解はできるんですが、
あまりにも「三日月無双」「バルバトス無双」に寄りすぎてしまったために、
扱いきれなくなってしまった気がしないでもありません。
やはり三日月には絶対的なライバルが必要だったと思います。ジュリエッタではあまりにも役者不足。
マクギリスと対立し、バエルにもっと強大な力を持たせてくれれば全然違ったろうし、
ガエリオはカルタとアインを殺されているわけですから、敵討ちに来てほしかった。
ドラマパートなら、クーデリアが敵になってくれることを期待していたんですけどね……
まさか丸めこまれたままハーレムで終わってしまうとは……
MS戦に関しても、バルバトス以外にもっと活躍してほしかったですわ。
まともな活躍シーンがなかったフラウロスが不憫でならない……
ユーゴーのようなポッと出の量産機ならともかく、明らかに主役級なのに……
ガンダムのアニメはプラモを売るための販促でもあるので、そこが機能していたかどうかも首をかしげます。
一つのルートとしては納得できる。
しかし、何故このルートを選んだのか? 他に道はなかったのか?
ラスタル大勝利でクーデリアがほんのりいい感じにまとめれば感動が生まれると思ったのか?
ガエリオの動かし方は本当にあれが最善だったのか?
たくさんあったはずの良点を、暗雲で覆い隠してしまった鉄血のオルフェンズ。
少なくとも中盤までは楽しめていただけに、惜しいと感じた部分がたくさんあっただけに、
望んでいない結末を押しつけられてしまったことが、ただただ残念でした。
もし、次があるとするなら。
今度は、アカツキを主人公にして、痛快娯楽復讐劇でも見てみたいなー、なんて。