にわかオタクの雑記帳

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遊戯王 New stage 番外編 ジェムナイトは砕けない-12

「じゃ、始めるとするか。俺が先攻をもらうぜ」
 外に停車しているDホイールまで戻り、デュエルディスクを装着してきた神楽屋は、戻って来るや否やデュエルを開始する。すでに三隅の準備は整っており、余計な会話は必要ないと判断したためだ。
 5枚の初期手札に、最初のドローで1枚を加える。悪くない初手だ。迎撃・妨害用のカードは足りないものの、こちらの戦力を展開させるには十分なカードが揃っている。
「俺は<ジェムナイト・アレキサンド>を召喚する」

<ジェムナイト・アレキサンド>
効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1800/守1200
このカードをリリースして発動する。
自分のデッキから「ジェムナイト」と名のついた
通常モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 その中で神楽屋が選んだのは、やや青みがかった白色の甲冑を纏った騎士、<ジェムナイト・アレキサンド>。甲冑のそこかしこに赤や青、緑といった様々な色の宝玉が埋められており、光の当たる角度によって多種多様な輝きを見せている。
「<アレキサンド>の効果発動。このカードをリリースすることで、デッキから<ジェムナイト>と名のついた通常モンスター1体を特殊召喚するぜ」
 <ジェムナイト・アレキサンド>の体が光の粒子へと変化し、ディスクの墓地ゾーンに吸い込まれていく。
 普段なら、この効果で呼び出すモンスターは、攻撃力の高い<ジェムナイト・クリスタ>だ。蘇生も容易な上級モンスターを呼び出しておくことは、手札事故を回避することにも繋がる。
「……俺が選択するのは<ジェムナイト・ガネット>だ」
 だが、神楽屋は別のモンスターを特殊召喚する。

<ジェムナイト・ガネット>
通常モンスター
星4/地属性/炎族/攻1900/守   0
ガーネットの力を宿すジェムナイトの戦士。
炎の鉄拳はあらゆる敵を粉砕するぞ。

 <ジェムナイト・ガネット>は下級モンスターの中では高い攻撃力を持っているが、当然ながら<ジェムナイト・クリスタ>には及ばない。それを承知で炎の騎士を選択したのは、三隅の攻撃から身を守ることよりも、次のターンで素早く攻勢に転じることを優先した結果だった。
「カードを1枚伏せる。ターンエンドだ」
 落ち着いた堅実な滑り出し。自分にしては珍しいな、と内心自嘲しつつ、神楽屋は最初のターンを終了した。

【神楽屋LP4000】 手札4枚
場:ジェムナイト・ガネット(攻撃)、伏せ1枚
【三隅LP4000】 手札5枚
場:なし

「――俺のターン」
 ピッ、とまるでカードで人を斬るような鋭さで、三隅はカードをドローする。表に出さないように努めてはいるものの、内なる闘志――いや、殺気は抑えようがない、といった感じだ。
「……お前に見せてやる。ファントム・ハルパーの――ケイさんの強さの象徴を! 俺は<ヘルウェイ・パトロール>を召喚!」

<ヘルウェイ・パトロール>
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1200
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する。

 語気を荒げた三隅は、悪魔の顔と思われる仮面をボディ前部に装飾したバイクに乗り、自らも角の生えた兜を被ったライダーを召喚する。<ヘルウェイ・パトロール>……確か、セキュリティの中にも使用していたデュエリストがいたはずだが、彼らから奪ったものなのだろうか。それとも――
「さらに<二重召喚>を発動! 召喚権を増やし、<魔轟神クシャノ>を召喚!」

<二重召喚>
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

<魔轟神クシャノ>
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/悪魔族/攻1100/守 800
手札から「魔轟神クシャノ」以外の「魔轟神」
と名のついたモンスター1体を墓地へ捨てて発動する。
自分の墓地に存在するこのカードを手札に加える。

 神楽屋の考えがまとまらないうちに、三隅は続けてモンスターを召喚する。<魔轟神>といえば、かつて神楽屋が一時的に所属していたデュエルギャング、レボリューションのリーダー、レビン・ハウンツの使用していたモンスター群だ。
 2体のモンスターにあまりシナジーは感じられないが……悪魔族統一デッキと考えれば、多少納得はいく。
「行くぞ! レベル4の<ヘルウェイ・パトロール>に、レベル3の<魔轟神クシャノ>をチューニング!」
 <魔轟神クシャノ>の体が3つの光球へと変化し、<ヘルウェイ・パトロール>の中に吸い込まれていく。
(ま、当然そう来るよな)
 チューナーを含む2体のモンスターが並んだとすれば、狙いは明らかである。問題は、どんなシンクロモンスターを呼び出してくるか。
「希望を狩る鎌よ! 悪魔たちの魂を糧に、恐れる戦士を地獄へと誘え! シンクロ召喚ッ!」
 叫ぶと同時、三隅は目を閉じて右手を強く握りしめ、自らの胸に当てる。心の中に眠る誰かに、力を借りるかのように。
「狩り尽くせ! <天刑王ブラック・ハイランダー>!」
 闇が、神楽屋の視界を覆う。
 全ての光を消し去り、夜の世界へと引きずり込む闇――そう錯覚したそれは、王の纏う漆黒のマントだった。
 金に縁取られた黒の鎧に、凹凸の少ないフルヘルム。瞳は血に飢えた獣のように赤く光り、全身からは見るものを恐怖させるオーラが漂っている。
 その元凶は、手にした巨大な鎌。
 首を、命を、魂を――存在全てを狩り尽くすために、天刑王が手にした力の証。
 三隅は言った。このモンスターこそが、ファントム・ハルパーの強さの象徴だと。
 幻影の鎌。しかし、溢れ出る力と恐怖は、決して幻などではない。

<天刑王 ブラック・ハイランダー>
シンクロ・効果モンスター 
星7/闇属性/悪魔族/攻2800/守2300
悪魔族チューナー+チューナー以外の悪魔族モンスター1体以上
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いにシンクロ召喚をする事ができない。
1ターンに1度、装備カードを装備した相手モンスター1体を選択して発動する事ができる。
選択したモンスターに装備された装備カードを全て破壊し、
破壊した数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。

「ケイさんは……自分の力を見せることも出来ずに、お前に倒された。そして、メンバーの暴走を止められなかったことに責任を感じて、ファントム・ハルパーを解散させ、俺にこのカードを託した」
 三隅は憎悪の炎を瞳に宿し、神楽屋を睨みつける。
「今ここで、ケイさんの無念を晴らす! <ブラック・ハイランダー>で<ジェムナイト・ガネット>を攻撃!」
 攻撃宣言が下されると、<天刑王ブラック・ハイランダー>は、漆黒のマントで自らの体を覆い尽くす。バッと黒がはためくと、次の瞬間には天刑王の姿は消え失せていた。
「――――ッ!?」
 反射的に、神楽屋は消えたモンスターの姿を探す。
「――フューネラル・シックル
 ぞぶり。
 血をたっぷり含んだ肉を断つような、吐き気を催す音が響く。
 それを認識した瞬間、何もない空間から巨大な鎌が現れ、一直線に振るわれる。
 気付いたときには、<ジェムナイト・ガネット>の首が跳ね飛び、ゴトリと音を立てて地面に落ちているところだった。

【神楽屋LP4000→3100】

「……ハッ。やってくれんじゃねえか」
 実際に受けたダメージは多くないが、<天刑王ブラック・ハイランダー>の攻撃には鬼気迫るものがあった。再び三隅のフィールドに姿を現した悪魔の王の姿を見て、神楽屋は三隅の気迫の強さを知る。
「カードを伏せる。ターンエンドだ」
 それでも、負けてやるつもりなどない。
 これは、自分の憎しみを晴らすデュエルでもあるのだから。

【神楽屋LP3100】 手札4枚
場:伏せ1枚
【三隅LP4000】 手札2枚
場:天刑王ブラック・ハイランダー(攻撃)、伏せ1枚