にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 宝石を継ぐもの-7

「先攻はリソナがもらうですよ! ドロー!」
「……相変わらず強引だな」
 わざわざ5年後の未来からお越しいただいたのだ。先攻は譲るつもりでいたが、有無も言わさずスタートされると愚痴の一つもこぼしたくなるものである。成長の欠片も見られなければ余計に。
 リソナは自分の手札とにらめっこしており、神楽屋の反応など見えていないようだ。
「……モンスターをセット。カードをセットしてターンエンドです」
 フィールドに2枚の伏せカードが現れ、リソナのターンが終了する。
「俺のターンか」
 デッキからカードをドローした神楽屋は、体だけは立派に成長した金髪の少女の様子を窺う。
 5年の歳月を経て彼女のデッキがどう変化したかは不明だ。<ライトロード>のままかもしれないし、別のデッキに変わっているかもしれない。向こうは当然神楽屋のデッキが<ジェムナイト>であることを知っているだろうし、事前情報のアドバンテージではかなり不利な状況に立たされていることになる。
(……なら、先制パンチを打ち込ませてもらうか)
 神楽屋は言わば挑戦を受ける立場だ。相手の攻めを待ってから攻撃の形を整えるのではなく、自分のスタイルを押し通すべきだ。
「<ジェムナイト・アレキサンド>を召喚!」
 最初に召喚したのは、白銀の甲冑を身に纏った騎士だ。丸みを帯びたデザインの甲冑は、光が当たる角度によって様々な色合いを映しだす。

<ジェムナイト・アレキサンド>
効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1800/守1200
このカードをリリースして発動できる。
デッキから「ジェムナイト」と名のついた
通常モンスター1体を特殊召喚する。

「<アレキサンド>の効果を使うぜ。こいつをリリースすることによって、デッキから<ジェムナイト>と名のついた通常モンスター1体を特殊召喚する」
「呼んでくるモンスターは……」
「予想はついてんだろ? 来い! <ジェムナイト・クリスタ>!」
 白銀の輝きによって導かれたのは、<ジェムナイト>歴戦の勇士――<ジェムナイト・クリスタ>だ。銀色の甲冑は度重なる戦いによって傷つき、くすんでしまっている。だが、その鈍い輝きこそが数多の戦場を駆け抜けた証であり、騎士の誇りを示していた。

<ジェムナイト・クリスタ>
通常モンスター
星7/地属性/岩石族/攻2450/守1950
クリスタルパワーを最適化し、戦闘力に変えて戦うジェムナイトの上級戦士。
その高い攻撃力で敵を圧倒するぞ。
しかし、その最適化には限界を感じる事も多く、仲間たちとの結束を大切にしている。

「むむ。事故要因が手札に来る前に処理したですか」
「おい失礼なこと言うな! <クリスタ>! あいつのモンスターをぶっ潰してやれ!」
 いわれのない侮辱を受けたせいか、いつも以上に闘志をみなぎらせたように見える<ジェムナイト>古参の騎士は、両拳を打ち合わせると、軽やかに跳躍する。そして、降下の勢いを利用しつつ打ち下ろしの一撃。リソナの場にあった伏せモンスターが一瞬だけ姿を現したあと、粉々に砕かれ光の破片へと変わる。
(……戦闘破壊耐性持ちなら話は別だが、<クリスタ>の攻撃は下級モンスターで凌げるような生易しいものじゃねえ)
 上級モンスターの攻撃がリソナにとって想定の範囲内だったか否か――
「ふふ、ご愁傷様ですよ。テル」
 答えは、「どちらでも構わない」だ。
 <ジェムナイト・クリスタ>の甲冑に光の破片が刃となって食いこみ、その動きを止めていた。銀色の騎士は糸が切れた操り人形のように倒れると、そのまま消えていく。
「破壊されたモンスターは<ライトロード・ハンター ライコウ>。このカードがリバースしたとき――」
「フィールド上のカードを1枚選択して破壊。自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る、だろ? 分かってるからわざわざ言わなくていいぞ」
「……むー! それくらいリソナに言わせてほしいです!」

<ライトロード・ハンター ライコウ>
効果モンスター
星2/光属性/獣族/攻 200/守 100
リバース:フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。

 リソナは不服そうに頬を膨らませるが、神楽屋にとっては何度も見たモンスターだ。わざわざ解説してもらわなくても効果を暗唱することなど容易い。
(それに、リソナの伏せモンスターって言ったら<ライコウ>か<ジェニス>の二択だからな)
 これで、リソナのデッキが<ライトロード>から変わっていないことがほぼ確定した。
 <ライトロード>モンスターのほとんどが持つ「エンドフェイズにデッキの上からカード○枚送る」という効果は、墓地を肥やすためになるべく発動したいところだろう。下級モンスターとしては十分なステータスを持つ<ライトロード・パラディン ジェイン>や<ライトロード・マジシャン ライラ>が手札にあれば、迷うことなく召喚していたはずだ。それをしなかったということは、攻撃表示で立たせておくには不安の残るモンスターしかいなかったか、リバース効果の発動を狙うか、だ。
「<ライコウ>の効果で<クリスタ>は破壊させてもらったです」
 同時に、リソナのデッキから3枚のカードが墓地に送られる。
「ん! <ウォルフ>が墓地に落ちたので特殊召喚するです!」
 うれしそうなリソナの声と共に現れたのは、狼の頭を持つ白毛の獣人だ。手にした矛槍を肩に担ぎ、右手甲の先に装着された3本の爪が獲物に飢えたように輝く。
 <ライトロード・ビースト ウォルフ>――デッキから墓地に送られた時、特殊召喚する効果を持つモンスターだ。

<ライトロード・ビースト ウォルフ>
効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守 300
このカードは通常召喚できない。
このカードがデッキから墓地へ送られた時、このカードを特殊召喚する。

 こちらのモンスターは破壊され、相手は半上級モンスター並みの攻撃力を持つ下級モンスターを特殊召喚……大きくアドバンテージを失ってしまったように錯覚するが、神楽屋に焦りはない。リソナの<ライトロード>相手ならこの展開はよくあることだ。
「……カードを1枚伏せる。ターンエンドだ」
 リカバリーの手段はある。リソナがそれを許してくれれば、だが。

【リソナLP4000】 手札4枚
場:ライトロード・ビースト ウォルフ(攻撃)、伏せ1枚
【神楽屋LP4000】 手札4枚
場:伏せ1枚