遊戯王 New stage 番外編 宝石を継ぐもの-11
「これで場はがら空きです! <ウォルフ>!」
主人の命を待つまでもなく、臨戦態勢に入っていた<ライトロード・ビースト ウォルフ>は、阻む者のない戦場を疾駆し、右手甲に装着された爪を振るう。
鋭い刃が神楽屋の胸を抉るが、立体映像のため当然ながら傷はない。
主人の命を待つまでもなく、臨戦態勢に入っていた<ライトロード・ビースト ウォルフ>は、阻む者のない戦場を疾駆し、右手甲に装着された爪を振るう。
鋭い刃が神楽屋の胸を抉るが、立体映像のため当然ながら傷はない。
【神楽屋LP2750→650】
だが、このダイレクトアタックで神楽屋のライフは4桁を割り、危険域に達しようとしていた。
「……あと一手あれば、ここで勝てたです」
形成有利になったにもかかわらず、リソナの顔には悔しさが滲み出ている。彼女の言う通り、このターンの攻撃は一気にゲームエンドまで持って行ける可能性を秘めていた。
「情けない話だが、その一手がなかったのを喜ぶべきなのかね、俺は。散々カッコつけておいて、このターンで負けたら恥ずかしすぎて海に飛び込んじまいそうだ」
「それはそれでテルらしいです」
「おい、どういう意味だそりゃ」
神楽屋が半目でツッコミを入れると、リソナはくすくす笑いながら「冗談です」と呟いた。
「……カードを1枚伏せて、ターンエンドです」
エンドフェイズに入り、<廃石融合>の効果で特殊召喚された<ジェムナイト・ジルコニア>は破壊される。
かろうじて敗北を回避した神楽屋だが、状況は圧倒的に悪い。フィールドにカードはなく、手札は<ジェムナイト・ルマリン>1枚。
(――ハッ、いいシチュエーションじゃねえか)
リソナは、神楽屋の本気を求めて未来から来たのだ。このまま終わりで失望させるわけにはいかない。
絶望を覆す1枚。自分の本気を示すためにも、神楽屋は次のドローでそれを引くことを求められていた。
「……あと一手あれば、ここで勝てたです」
形成有利になったにもかかわらず、リソナの顔には悔しさが滲み出ている。彼女の言う通り、このターンの攻撃は一気にゲームエンドまで持って行ける可能性を秘めていた。
「情けない話だが、その一手がなかったのを喜ぶべきなのかね、俺は。散々カッコつけておいて、このターンで負けたら恥ずかしすぎて海に飛び込んじまいそうだ」
「それはそれでテルらしいです」
「おい、どういう意味だそりゃ」
神楽屋が半目でツッコミを入れると、リソナはくすくす笑いながら「冗談です」と呟いた。
「……カードを1枚伏せて、ターンエンドです」
エンドフェイズに入り、<廃石融合>の効果で特殊召喚された<ジェムナイト・ジルコニア>は破壊される。
かろうじて敗北を回避した神楽屋だが、状況は圧倒的に悪い。フィールドにカードはなく、手札は<ジェムナイト・ルマリン>1枚。
(――ハッ、いいシチュエーションじゃねえか)
リソナは、神楽屋の本気を求めて未来から来たのだ。このまま終わりで失望させるわけにはいかない。
絶望を覆す1枚。自分の本気を示すためにも、神楽屋は次のドローでそれを引くことを求められていた。
【リソナLP2400】 手札0枚
場:ライトロード・ビースト ウォルフ(攻撃)、ジェムナイト・ルビーズ(攻撃)、ライトロード・バリア、伏せ1枚
【神楽屋LP650】 手札1枚
場:なし
場:ライトロード・ビースト ウォルフ(攻撃)、ジェムナイト・ルビーズ(攻撃)、ライトロード・バリア、伏せ1枚
【神楽屋LP650】 手札1枚
場:なし
「俺のターン」
自然と、指先に力がこもった。
本音を言えば――リソナを相手に、これ以上カッコ悪いところを見せたくなかった。
彼女の前では、「いざというとき頼りになる兄貴」でいたい。安いプライドだが、簡単に譲りたくはない。
(散々デカイ口叩いたんだ。ここで引けなきゃ<ジェムナイト>使いの――デュエリストの名がすたれるってもんだぜ)
強い意志と共に、神楽屋はカードをドローする。
「……俺は<ジェムナイト・ルマリン>を召喚」
何の効果も持たず、下級モンスターとしてはそれほどステータスの高くない<ジェムナイト・ルマリン>を攻撃表示で召喚。勝負を投げ出して自棄になったのかと思われても仕方のないプレイングだ。
だが、リソナはそうは思わなかったらしく、
「これで手札は1枚ですか。テルがドローしたカードが何となく分かった気がするです」
警戒しつつも、神楽屋の行動に期待しているような眼差しを送ってくる。
なら、それに応えてみせるとしよう。
「魔法カード<魂の錬成>を発動! このカードは自分の手札がこのカードだけの時発動でき、カードを3枚ドローできる!」
「ただし、発動ターンに特殊召喚を行わなかった場合、4000ライフを失う。ですね?」
自然と、指先に力がこもった。
本音を言えば――リソナを相手に、これ以上カッコ悪いところを見せたくなかった。
彼女の前では、「いざというとき頼りになる兄貴」でいたい。安いプライドだが、簡単に譲りたくはない。
(散々デカイ口叩いたんだ。ここで引けなきゃ<ジェムナイト>使いの――デュエリストの名がすたれるってもんだぜ)
強い意志と共に、神楽屋はカードをドローする。
「……俺は<ジェムナイト・ルマリン>を召喚」
何の効果も持たず、下級モンスターとしてはそれほどステータスの高くない<ジェムナイト・ルマリン>を攻撃表示で召喚。勝負を投げ出して自棄になったのかと思われても仕方のないプレイングだ。
だが、リソナはそうは思わなかったらしく、
「これで手札は1枚ですか。テルがドローしたカードが何となく分かった気がするです」
警戒しつつも、神楽屋の行動に期待しているような眼差しを送ってくる。
なら、それに応えてみせるとしよう。
「魔法カード<魂の錬成>を発動! このカードは自分の手札がこのカードだけの時発動でき、カードを3枚ドローできる!」
「ただし、発動ターンに特殊召喚を行わなかった場合、4000ライフを失う。ですね?」
<魂の錬成> 通常魔法(オリジナルカード) このカードは、手札がこのカードのみの時発動できる。 デッキからカードを3枚ドローする。 このカードを発動したターン特殊召喚を行わなかった場合、自分は4000ライフポイントを失う。
リソナの確認に神楽屋は頷く。3枚のドローという破格の効果の代償は限りなく重いが――それを回避できる条件は比較的緩い。カードが出揃った中盤から終盤に発動すれば、条件を満たすことは容易い。
神楽屋の墓地には<ジェムナイト・フュージョン>が眠っている。1枚でも<ジェムナイト>モンスターをドローできれば、4000ライフポイントを失うことはない。
(……それで満足しているようじゃ、このデュエルは勝てないけどな)
自分が何を求めるかを明確化しつつ、神楽屋はデッキから3枚のカードをドローする。
手札に舞い込んだ3枚のカードは――
(……悪くない。が、望んでたものとは違うな)
神楽屋は思わず顔をしかめるが、贅沢は言っていられない。
「今度はテルの番ですよ。リソナに見せてください。テルの<ジェムナイト>を」
「……ああ」
今までの神楽屋とリソナのデュエルは、遊びの範疇を超えたことはなかった。
未来から来た彼女が求めているのは、本気のデュエル。
今、リソナの瞳に神楽屋がどう映っているかは分からないが――
(もう、とっくに本気だっての)
「本気にさせてみろ」と挑発じみた言葉を吐いたが、本来なら絶対あり得ることがない未来の人間とのデュエルだ。本気にならないほうがおかしい。
「墓地の<アレキサンド>を除外して<ジェムナイト・フュージョン>を手札に加える」
当然、加えるだけでは終わらない。
「――行くぜ。<ジェムナイト・フュージョン>発動! フィールドの<ルマリン>と手札の<ラズリー>を融合!」
「引いたのは2枚目の<ラズリー>ですか。となれば……」
「読みが当たったとしても、こいつを止められなきゃ意味はないぜ! 来い! <ジェムナイト・ジルコニア>!」
先のターンで神楽屋の<ジェムナイト・クリスタ>を粉砕した剛腕の騎士が、頼れる味方としてフィールドに再臨する。
「<ジルコニア>……むむむ」
「<ラズリー>の効果で墓地の<ジェムナイト・ガネット>を回収する。バトルだ!」
唸るリソナに理由を問いただすことはせず、そのままバトルフェイズに入る。
「<ジルコニア>で<ルビーズ>を攻撃!」
<ジェムナイト・ジルコニア>は、その巨体に似合わない機敏な動きで大地を蹴る。
跳躍はリソナの時と違い這うように低く、剛腕の騎士そのものが砲弾になったような勢いで標的に迫る。
真紅の騎士は槍を水平に構え、腹の部分で攻撃を受け止めようとするが、
「マイン――」
上体のひねりを加えた左拳の撃ち下ろしが槍に直撃し、バキリと音を立てて割れる。その衝撃に引きずられるように、真紅の騎士の体が前に傾いた。
「ハンマアアアアアアアアアアアアアアッ!」
その顎を狙って、真下からのアッパーカット。
甲冑の破片を撒き散らしながら天に向けて放り出された<ジェムナイト・ルビーズ>に力が戻ることはなく、受け身すら取れずに地面に叩きつけられ、戦場から脱落する。
神楽屋の墓地には<ジェムナイト・フュージョン>が眠っている。1枚でも<ジェムナイト>モンスターをドローできれば、4000ライフポイントを失うことはない。
(……それで満足しているようじゃ、このデュエルは勝てないけどな)
自分が何を求めるかを明確化しつつ、神楽屋はデッキから3枚のカードをドローする。
手札に舞い込んだ3枚のカードは――
(……悪くない。が、望んでたものとは違うな)
神楽屋は思わず顔をしかめるが、贅沢は言っていられない。
「今度はテルの番ですよ。リソナに見せてください。テルの<ジェムナイト>を」
「……ああ」
今までの神楽屋とリソナのデュエルは、遊びの範疇を超えたことはなかった。
未来から来た彼女が求めているのは、本気のデュエル。
今、リソナの瞳に神楽屋がどう映っているかは分からないが――
(もう、とっくに本気だっての)
「本気にさせてみろ」と挑発じみた言葉を吐いたが、本来なら絶対あり得ることがない未来の人間とのデュエルだ。本気にならないほうがおかしい。
「墓地の<アレキサンド>を除外して<ジェムナイト・フュージョン>を手札に加える」
当然、加えるだけでは終わらない。
「――行くぜ。<ジェムナイト・フュージョン>発動! フィールドの<ルマリン>と手札の<ラズリー>を融合!」
「引いたのは2枚目の<ラズリー>ですか。となれば……」
「読みが当たったとしても、こいつを止められなきゃ意味はないぜ! 来い! <ジェムナイト・ジルコニア>!」
先のターンで神楽屋の<ジェムナイト・クリスタ>を粉砕した剛腕の騎士が、頼れる味方としてフィールドに再臨する。
「<ジルコニア>……むむむ」
「<ラズリー>の効果で墓地の<ジェムナイト・ガネット>を回収する。バトルだ!」
唸るリソナに理由を問いただすことはせず、そのままバトルフェイズに入る。
「<ジルコニア>で<ルビーズ>を攻撃!」
<ジェムナイト・ジルコニア>は、その巨体に似合わない機敏な動きで大地を蹴る。
跳躍はリソナの時と違い這うように低く、剛腕の騎士そのものが砲弾になったような勢いで標的に迫る。
真紅の騎士は槍を水平に構え、腹の部分で攻撃を受け止めようとするが、
「マイン――」
上体のひねりを加えた左拳の撃ち下ろしが槍に直撃し、バキリと音を立てて割れる。その衝撃に引きずられるように、真紅の騎士の体が前に傾いた。
「ハンマアアアアアアアアアアアアアアッ!」
その顎を狙って、真下からのアッパーカット。
甲冑の破片を撒き散らしながら天に向けて放り出された<ジェムナイト・ルビーズ>に力が戻ることはなく、受け身すら取れずに地面に叩きつけられ、戦場から脱落する。
【リソナLP2400→2000】
「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ」
神楽屋の場に2枚のリバースカードが現れ、ターンが終了する。
「……これで終わりです?」
「そう思うんなら、トドメを刺しに来ればいい」
「……違いないです」
怪訝そうな表情を見せたリソナだったが、神楽屋の言葉を受けて挑戦的な眼差しを取り戻す。
勝負は次のターン。
その認識は、両者の間で共通していた。
神楽屋の場に2枚のリバースカードが現れ、ターンが終了する。
「……これで終わりです?」
「そう思うんなら、トドメを刺しに来ればいい」
「……違いないです」
怪訝そうな表情を見せたリソナだったが、神楽屋の言葉を受けて挑戦的な眼差しを取り戻す。
勝負は次のターン。
その認識は、両者の間で共通していた。