にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 宝石を継ぐもの-12

「リソナのターン――ドロー」
 リソナの手札は、たった今ドローした1枚。<ライトロード・バリア>が破壊されない限り<ライトロード・ビースト ウォルフ>で篭城することはできるが、消極的な手段は敗北に直結しているように思えた。
 リソナの手札は、1枚。
「何となく、引ける予感がしてたです」
「奇遇だな。俺もだ」
 リソナが自分のカードを引き継いだなら、当然、そのカードも入っていて然るべきだ。
「魔法カード<魂の錬成>を使うです! デッキからカードを3枚ドロー!」

<魂の錬成>
通常魔法(オリジナルカード)
このカードは、手札がこのカードのみの時発動できる。
デッキからカードを3枚ドローする。
このカードを発動したターン特殊召喚を行わなかった場合、自分は4000ライフポイントを失う。

 墓地に<ジェムナイト・フュージョン>があるとはいえ、融合素材を引かなければ特殊召喚は行えないだろう。同じのカードの発動とはいえ、ギャンブル性は高い。
 だが、この場面で<魂の錬成>を引き当てたリソナのことだ。条件を満たせずに敗北、なんてヘマは犯すまい。
 カードを3枚ドローしたリソナは、逡巡のあとカードを1枚選び取る。
「――リソナの墓地には、4種類以上の<ライトロード>モンスターが存在するです」
(……そっちが来るか!)
 墓地に存在する<ライトロード>は確認できているのは2種類だけだが、効果によって墓地に送られたカードの中に<ライトロード>モンスターがいたのだろう。
「――<裁きの龍>を特殊召喚!」
 白の閃光がフィールドを埋め尽くす。
 罪を裁くために生まれたその龍の色は、一切の汚れがない純白。

<裁きの龍>
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の「ライトロード」と名のついた
モンスターが4種類以上の場合のみ特殊召喚できる。
1000ライフポイントを払う事で、
このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。
また、このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを4枚墓地へ送る

 <ライトロード>の切り札であり――神楽屋もそのカードは何度も目にしていたが、こうして実際にその姿を見るのは初めてかもしれない。立体映像とは思えないほどの圧力が、神楽屋に冷や汗を流させた。
「<裁きの龍>の効果発動! 1000ライフを支払い、このカード以外の全てのカードを破壊するです! リヒト・レクイエム!」

【リソナLP2000→1000】

 白き龍がいななき、その翼に無慈悲な裁きを与える破壊の光が収束していく。
 天上から降り注ぐ光を黙って見つめていれば、神楽屋に訪れるのはデュエルの敗北だ。
 ――それを許すわけにはいかない。
「リバースカードを使う! 罠カード発動!」
 神楽屋は伏せていた1枚の罠カードを起動させる。
「<デモンズ・チェーン>! <裁きの龍>の効果と攻撃を封印させてもらうぜ!」

<デモンズ・チェーン>
永続罠
フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 発動した永続罠カードは、<禁じられた聖杯>と同じく対象となったモンスターの効果を封じる。
 リソナの両目が見開かれる。白き龍に悪魔の鎖が絡みつき、動きを封じる。
「<デモンズ・チェーン>……ようやく使ってくれたですね、そのカード」
「使わせたのはお前だぜ。リソナ」
「……はいです」
 <ジェムナイト>は瞬間的な攻撃力は凄まじい反面、相手の攻撃を防ぐことに長けたカードは少ない。モンスターではバウンスができる<ジェムナイト・アクアマリナ>、魔法・罠カードではサクリファイスエスケープとしても活用できる<ジェム・エンハンス>くらいだ。ゆえに、その他の防御手段を用意しなければならない。
 相手の行動を縛ることを嫌う神楽屋だが、何の対策も無しにあらゆるデッキに勝てるほど甘い世界ではないことは承知している。攻撃を防いだり、相手の効果を阻害したりするカードをデッキに積んでいないわけではない。が、必要なときに必要なだけ使うプレイングを心がけているつもりだ。そのため、使う必要がないと判断したデュエルでは、伏せていても発動しないまま終わらせてしまうこともある。
 リソナとのデュエルは、その典型だった。
 だが、今は違う。
 <裁きの龍>の効果を封じることは、絶対に必要なことだ。
 神楽屋が、リソナに負けないためには。
「さあどうする? <裁きの龍>の効果と攻撃は封じた。<ウォルフ>じゃ<ジルコニア>を倒すことはできない。残り2枚の手札で俺を倒せるか?」
 仕掛けてくるだろうと思いつつも、神楽屋はあえて挑発じみた言葉を投げる。
 対し、リソナは2枚の手札を見つめ――逡巡している。その様子だけで、次の一手に<ジェムナイト>が関わっていることは容易に想像できた。
 先のターンのように発破をかけようとして、気付く。
 リソナの体は小刻みに震え、その瞳は手札ではなく先にある「何か」を見据えており、そのせいで不安に曇ってしまっている。
 何故、リソナは過去に戻ってまで神楽屋とのデュエルを望んだのか。
 神楽屋は深く息を吐いて気持ちを切り替えてから、切り出す。
「迷ってるのか?」
「……迷ってなんてないです。次に出すカードはもう決めて――」
「そういうことじゃねえよ」
 強い口調に、リソナがびくりと肩を震わせる。
(……そんな顔されたまま、未来に帰すわけにはいかねえな)
 彼女が迷いを抱えていることは明白だし、それが何なのかはある程度想像できる。
 それでも、神楽屋はそれを口に出さない。
「何を迷っているのかは聞かねえ。過去の人間に具体的な答えを求めるのは反則だと思うからな」
 リソナの口が開きかけるが、そこから声が漏れることはない。思いとどまったように口をつぐんだリソナは、胸の前で拳をキュッと握りながら、言葉の続きを待った。
「けど、お前は俺とのデュエルを望んでここに来た。俺とデュエルすれば、答えが見つかるんじゃないか――そう思ったんだろ?」
 彼女はデュエリストだ。
 なら、答えはデュエルの中で見つけるべき――神楽屋はそう思った。
「お前の全部をぶつけてこい。リソナ」
 そう言って、神楽屋は期待に満ちた笑顔を浮かべる。
 不安なことなんて何もない。全力でこのデュエルを楽しめ……そんな思いを込めて。
「――ありがとうです。テル」
 一度うつむいてから顔を上げたリソナの瞳には、迷いを払拭しようとする意志の光が宿っていた。神楽屋にはそう見えた。
「テルに<デモンズ・チェーン>を使わせた事実を全力で自慢することを決めつつ、リソナは遠慮なく行かせてもらうです! 罠カード<廃石融合>発動! 墓地の<ジルコニア>と<ライトロード・ハンター ライコウ>を除外!」

<廃石融合>
通常罠
自分の墓地から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
「ジェムナイト」と名のついたその融合モンスター1体を融合召喚扱いとして
エクストラデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 そんなにうれしかったのか……と呆れる神楽屋の前で、鋼と光が混じり合い、聖なる光をたたえた宝石を生み出す。
「<ジェムナイト・セラフィ>を特殊召喚!」
 その石を内側から破り、光の粒で構成された天使の羽が現出する。その羽を背中から生やすのは、<ライトロード>によく似た白金の鎧を纏った宝石の騎士――<ジェムナイト・セラフィ>。鎧は全体的に丸みを帯びており、細い体は女性であることを窺わせる。

<ジェムナイト・セラフィ>
融合・効果モンスター
星5/地属性/天使族/攻2300/守1400
「ジェムナイト」と名のついたモンスター+光属性モンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のメインフェイズ時に1度だけ、
自分は通常召喚に加えてモンスター1体を通常召喚できる。

「<セラフィ>を出してきたか……手札のモンスターを一気に召喚するつもりか?」
 <ジェムナイト・セラフィ>が表側表示で存在する限り、メインフェイズ時に1度だけ通常召喚に加えてモンスター1体を通常召喚できる。その効果を生かすならば、2体のモンスターを通常召喚してくるだろう。あるいは、アドバンス召喚か。
「外れです! 墓地の<オブシディア>を除外して<ジェムナイト・フュージョン>を手札に加えるです」
 <ライトロード>の効果によって墓地に落ちていた<ジェムナイト・オブシディア>を除外することで、可能性を秘めた魔法カードがリソナの手札に加わる。
(まさか、リソナは――)
 神楽屋の脳裏に、とあるモンスターの姿が浮かぶ。
「テル! 見るがいいです! これが、リソナの全力――<ジェムナイト・フュージョン>を発動!」
 <ジェムナイト・セラフィ>が宝石の形に戻ると同時、2つの宝石がフィールドに現れる。
「フィールドの<セラフィ>と、手札の<ラズリー>、<サフィア>を融合!」
 3つの宝石が重なり合い、眩い光を放つ。
 その光は、赤にも見え、橙にも見え、白にも見え、黄にも見え、水にも見え、青にも見え、紫にも見える。
 虹色の光が水面に反射し、ささやかに打ち寄せていた波が煌めく。
 七色の宝玉が埋め込まれた大剣が天から降り注ぎ、地面に突き刺さる。
 大剣の柄を、虹色に輝く宝玉から飛び出た手が掴む。
 そして、宝石が砕け散る。
 現れたのは、神楽屋が思い浮かべたモンスター。
「七つの光で未来を照らせ――融合召喚! <ジェムナイトマスター・ダイヤ>!」
 <ジェムナイト>の希望をつなぎ合わせて生まれた、宝石騎士の王。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>が、敵として神楽屋の前に君臨する。

<ジェムナイトマスター・ダイヤ>
融合・効果モンスター
星9/地属性/岩石族/攻2900/守2500
「ジェムナイト」と名のついたモンスター×3
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の「ジェム」と名のついた
モンスターの数×100ポイントアップする。
また、1ターンに1度、自分の墓地のレベル7以下の「ジェムナイト」と名のついた
融合モンスター1体をゲームから除外して発動できる。
エンドフェイズ時まで、このカードは除外したモンスターと同名カードとして扱い、
同じ効果を得る。