オリジナルstage 【サイドM エピローグ】
旧サテライト地区からシティへと向かう定期バスの車内。
時刻は深夜0時を回ろうかというところ。窓の外に映る景色は闇に包まれており、等間隔で設置された街頭だけが、舗装された道路を照らし出している。
乗客は少なく、時間が時間なだけに大声で喋るものもおらず、車内は静かだった。
最後部の座席の右端に座った輝王は、デッキケースから取り出したカードを眺めていた。
1枚1枚慎重な手つきでめくり、効果を確認していく。
<ドラグニティ-ドゥクス>。
<ドラグニティナイト-ゲイボルグ>。
<ドラグニティナイト-バルーチャ>。
それは、異世界で高良の幻影から受け取った<AOJ>ではなく、彼から受け継いだ<ドラグニティ>デッキだった。
自らの可能性を高めるため、自らの限界を突破するため、あえて慣れ親しんだデッキを手放し、このデッキを回してきた。
数々の道筋を模索し、それゆえ迷うこともあったが――
「……フッ」
輝王は1枚のカードを見て、微笑を浮かべる。
<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>。
ある時は共に肩を並べて戦い、ある時は相対したデュエリスト――彼のデッキのキーモンスターともいうべきカードだ。
(あいつの戦い方は、真似しようと思ってもできるものではないな)
その独創的なプレイングは、きっと彼以外に行えるものではないのだろう。
時枝治輝。
砂神とのデュエルで彼の戦い方を見ていたからこそ、治輝とのデュエルではある程度の読みを行うことができた。もし、あの変則デュエルが治輝との初対決だったとしたら、いいようにやられたまま負けてしまったかもしれない。
(……同じ負けだとしても、ここまで清々しい気持ちにはなれなかったかもしれないな)
「何じゃ、随分うれしそうじゃの。輝王」
隣に座っていた着物姿のポニーテール少女、切がこちらを覗きこんでくる。
「そう見えるか?」
「うむ。異世界でよっぽどいいことがあったと見える」
「いいこと、か。確かにそうかもしれないな」
砂神があの異世界を作りださなければ、彼らには会えなかった。そう考えると、砂神には感謝するべきなのかもしれない。
おかげで、自分が進むべき道が見えたのだから。
「そう言うお前はどうなんだ? 俺とは違う場所に飛ばされていたようだが」
「うむ。すぐに創志と合流できたから、それほど大変ではなかったがな。今どき珍しい真っ直ぐな若者とも会えたし、いい経験になった」
「若者……」
お前も若者にカテゴライズされるだろう、というツッコミを飲みこみ、輝王は異世界での思い出に浸っている切を見る。
友永切――高良姫花だった少女は、兄である高良火乃と、本物の友永切、そして、かつて切が所属していた組織のリーダーの意志を継ぎ、弱者に手を差し伸べるための旅を続けているはずだ。きっとその旅の中で精神的に大きく成長したのだろう。
「あ、そういえば初めてカードの精霊というものを見たぞ! わしと同じような喋り方でな、思わず笑ってしまったのじゃ。あと、途中で食べたパンが絶品だったのう。あれだったら、毎日3食パンでも構わないくらいじゃ!」
……精神的に、大きく成長したのだろう。
切の話に耳を傾けながら、輝王は窓の外へと視線を流す。
治輝に敗北し、輝王は彼に感嘆を抱いた。
しかし、悔しさを全く感じなかったといえば、それは嘘になる。
時刻は深夜0時を回ろうかというところ。窓の外に映る景色は闇に包まれており、等間隔で設置された街頭だけが、舗装された道路を照らし出している。
乗客は少なく、時間が時間なだけに大声で喋るものもおらず、車内は静かだった。
最後部の座席の右端に座った輝王は、デッキケースから取り出したカードを眺めていた。
1枚1枚慎重な手つきでめくり、効果を確認していく。
<ドラグニティ-ドゥクス>。
<ドラグニティナイト-ゲイボルグ>。
<ドラグニティナイト-バルーチャ>。
それは、異世界で高良の幻影から受け取った<AOJ>ではなく、彼から受け継いだ<ドラグニティ>デッキだった。
自らの可能性を高めるため、自らの限界を突破するため、あえて慣れ親しんだデッキを手放し、このデッキを回してきた。
数々の道筋を模索し、それゆえ迷うこともあったが――
「……フッ」
輝王は1枚のカードを見て、微笑を浮かべる。
<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>。
ある時は共に肩を並べて戦い、ある時は相対したデュエリスト――彼のデッキのキーモンスターともいうべきカードだ。
(あいつの戦い方は、真似しようと思ってもできるものではないな)
その独創的なプレイングは、きっと彼以外に行えるものではないのだろう。
時枝治輝。
砂神とのデュエルで彼の戦い方を見ていたからこそ、治輝とのデュエルではある程度の読みを行うことができた。もし、あの変則デュエルが治輝との初対決だったとしたら、いいようにやられたまま負けてしまったかもしれない。
(……同じ負けだとしても、ここまで清々しい気持ちにはなれなかったかもしれないな)
「何じゃ、随分うれしそうじゃの。輝王」
隣に座っていた着物姿のポニーテール少女、切がこちらを覗きこんでくる。
「そう見えるか?」
「うむ。異世界でよっぽどいいことがあったと見える」
「いいこと、か。確かにそうかもしれないな」
砂神があの異世界を作りださなければ、彼らには会えなかった。そう考えると、砂神には感謝するべきなのかもしれない。
おかげで、自分が進むべき道が見えたのだから。
「そう言うお前はどうなんだ? 俺とは違う場所に飛ばされていたようだが」
「うむ。すぐに創志と合流できたから、それほど大変ではなかったがな。今どき珍しい真っ直ぐな若者とも会えたし、いい経験になった」
「若者……」
お前も若者にカテゴライズされるだろう、というツッコミを飲みこみ、輝王は異世界での思い出に浸っている切を見る。
友永切――高良姫花だった少女は、兄である高良火乃と、本物の友永切、そして、かつて切が所属していた組織のリーダーの意志を継ぎ、弱者に手を差し伸べるための旅を続けているはずだ。きっとその旅の中で精神的に大きく成長したのだろう。
「あ、そういえば初めてカードの精霊というものを見たぞ! わしと同じような喋り方でな、思わず笑ってしまったのじゃ。あと、途中で食べたパンが絶品だったのう。あれだったら、毎日3食パンでも構わないくらいじゃ!」
……精神的に、大きく成長したのだろう。
切の話に耳を傾けながら、輝王は窓の外へと視線を流す。
治輝に敗北し、輝王は彼に感嘆を抱いた。
しかし、悔しさを全く感じなかったといえば、それは嘘になる。
――絶対にまた、闘ろう!
時枝治輝が口にした再戦の誓いを反芻し、輝王は己の道を進んでいく。
自分だけの強さを手にするために。
自分だけの強さを手にするために。