にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-05】

「モンスターをセットして、俺様のターンは終了だ」
「……俺のターンだ。ドロー」
 ピラミッドの頂上で悠々とこちらを見下ろす砂神の態度に、輝王は舌打ちを漏らしそうになる。
(奴がどんなデッキを使ってくるかは分からないが、このターンで出来る限りの準備を整えておかなければならない)
 3ターンもの猶予があれば、大型モンスターの1体や2体を並べることなどたやすい。迎撃・妨害用の魔法・罠もふんだんに揃えられるだろうし、まさに万全といった体勢で初撃を加えてくるはずだ。
「モンスターをセット。カードを1枚伏せ、永続魔法<機甲部隊の最前線>を発動する」

<機甲部隊の最前線>
永続魔法
機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、
そのモンスターより攻撃力の低い、
同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「ほう? 壁を切らさないための保険か。つくづく死ぬのが怖いと見えるな」
「……ターンエンドだ」
 砂神の戯言を聞き流し、輝王はターンを終了する。
 <機甲部隊の最前線>は、機械族モンスターが戦闘で破壊された時、そのモンスターよりも攻撃力の低い同じ属性の機械族モンスターを特殊召喚できる永続魔法だ。
 カード効果による除去には対応していないが、こちらの攻撃が失敗し返り討ちにあった場合の保険としても機能する。
(相手の攻撃チャンスは俺たちよりも圧倒的に多いだろう。少ない反撃の機会を逃さないためにも、モンスターを切らさないことは重要だ)
 加えて、創志のターンが終了するまでは攻撃ができない。相手にプレッシャーをかけるような永続効果を持つようなモンスターがいないならば、わざわざ攻勢に出ることもない。
「なら、俺様のターン。モンスターをセットし、ターンを終了する」
 前のターンと同じく裏守備モンスターをセットした砂神は、そのままターンを終える。
「隙だらけの獲物が間抜け面で闊歩しているというのに、狩りを始められないとは……もどかしいものだな、デュエルモンスターズというのは」
「……テメエがこのデュエルのルールを決めたんじゃねえかよ」
「何か言ったか? 皆本創志。俺様に対して暴言を吐いたような気がしたのだが」
「いーや、何でも」
 ピラミッドの頂上にいる砂神とこちらの距離はかなり離れているはずだが、声はしっかりと聞こえているらしい。
「次は俺のターンだな」
 場を仕切り直すように言った治輝が、静かにカードをドローする。
「よく分からない手札って感じだけど……まずは<調和の宝札>を発動。手札の<ドラグニティ―ファランクス>を捨て、デッキからカードを2枚ドローする」

<調和の宝札>
通常魔法
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 治輝のプレイングに、輝王はピクリと反応する。
「……時枝のデッキは<ドラグニティ>か」
 それは、輝王の親友が使っていたデッキであり――つい先程まで自分が手にしていたデッキでもある。高良以外の人間が<ドラグニティ>を使っているのを見るのは、これが初めてだ。
「確かに<ドラグニティ>のカードは入っているけど、純粋な<ドラグニティ>とはちょっと違うかな。そっちのデッキとは連携が取り辛そうだ。悪い」
「気にするな。大した問題じゃない」
「……そっか。なら、遠慮なく行かせてもらうぜ! <超再生能力>を発動して――<魔法石の採掘>を発動! 手札を2枚捨てて、墓地から<超再生能力>を回収して、そのまま発動する! 手札から捨てたのは<デス・ヴォルストガルフ>と<洞窟に潜む竜>……両方ともドラゴン族モンスターだ」

<超再生能力>
速攻魔法
このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、
このターン自分が手札から捨てたドラゴン族モンスター、
及びこのターン自分が手札・フィールド上からリリースした
ドラゴン族モンスターの枚数分だけ、
自分のデッキからカードをドローする。

<魔法石の採掘>
通常魔法(準制限カード)
手札を2枚捨て、自分の墓地の魔法カード1枚を選択して発動する。
選択したカードを手札に加える。

 目まぐるしく動く治輝の場に、隣の創志が呆気に取られたようにポカンと口を開けて立っている。
「え、えっと。つまりどういうことなんだ?」
「時枝がこのターン手札から捨てたドラゴン族は3体。つまり、<超再生能力>2枚分の効果で、エンドフェイズに6枚のドローが確定しているということだ」
 「あくまで現時点ではな」と付け加えつつ輝王が説明を終えると、創志は目を丸くして、
「な、何だよそれ!? アドバンテージをバカにしてんのか!?」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。すぐに手札を切らす創志にとっては、6枚もドローできるカードがあることなど信じられないのだろう。
「……そのセリフ流行ってるのか? とりあえず、俺はモンスターをセット。カードを1枚伏せてターンを終了する。そして、エンドフェイズに<超再生能力>の効果で6枚のカードをドローだ」
 モンスターと伏せカードのセットで一旦はゼロになった治輝の手札だが、6枚のドローで瞬く間に補充される。加えて、墓地からの特殊召喚が容易な<ドラグニティ―ファランクス>を墓地に送っている。
(勝利への可能性は自らの手で引き寄せる、か。高良とは真逆のデュエリストだな)
 良くも悪くも、高良のデュエルは運頼みな部分が多かった。まあその運頼みなドローで逆転のカードを引いてしまうのだから、強さは本物だったのだが。
「随分張り切るな、時枝治輝」
「そう見えたならお生憎様だ。俺はいつも通りのデュエルをしてるつもりなんだけどな」
「……ほざけ。俺様はモンスターをセットしてターンエンドだ」
 これで、砂神の場に伏せモンスターが3体。魔法・罠カードの伏せはないが、不気味な雰囲気を漂わせている。
 それに触発されたのか、それとも治輝に対抗したのか――
「俺も最初から飛ばさせてもらうぜ! ドロー!」
 無駄に張りきった創志の姿を見て、輝王は嫌な予感がした。
「<ジェネクス・ニュートロン>を召喚だ!」
 このデュエルで始めて姿を現したモンスターは、漆黒の装甲を纏った人型のロボットだ。

<ジェネクス・ニュートロン>
効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200
このカードが召喚に成功した場合、
そのターンのエンドフェイズ時に自分のデッキから
機械族のチューナー1体を手札に加える事ができる。

「そして、<二重召喚>を発動! このターン、俺はもう一度だけ通常召喚を行うことができる! 頼むぜ、相棒! <ジェネクス・コントローラー>を召喚だ!」

<二重召喚>
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる

<ジェネクス・コントローラー>
チューナー(通常モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻1400/守1200
仲間達と心を通わせる事ができる、数少ないジェネクスのひとり。
様々なエレメントの力をコントロールできるぞ。

 息つく間もなく、創志が2体目のモンスター――<ジェネクス・コントローラー>を召喚する。
「行くぜ! レベル4の<ジェネクス・ニュートロン>にレベル3の<ジェネクス・コントローラー>をチューニング!」
「なっ……!?」
 光に包まれる2体の<ジェネクス>を見て、輝王は絶句する。
「おい! 何をやっている皆本創志!!」
 <ジェネクス・ニュートロン>は、召喚に成功したターンのエンドフェイズにデッキから機械族のチューナーモンスターを手札に加える効果を持つ。その効果は、召喚したターンのエンドフェイズまで<ジェネクス・ニュートロン>が表側表示で存在していることが発動条件だ。相手からの妨害が無いこの状況なら、発動させない理由はない。
 にも関わらず、創志はシンクロ召喚を行おうとしている。わざわざ<二重召喚>を消費してまで、このターンにシンクロモンスターを呼び出す理由は薄い。
「心配すんな輝王! 俺にだって考えくらいあるっての!」
 その考えとやらをここで洗いざらい吐いてほしかったが、自信満々な創志の笑顔を見ていると、反論を呑みこまざるを得なかった。
「残された結晶が、新たな力を呼び起こす! 集え、3つの魂よ! シンクロ召喚――その力を示せ! <A・ジェネクストライフォース>!」