にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-09】

「<AOJガラドホルグ>は、光属性モンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップの間攻撃力が200ポイントアップする。さらに、皆本創志が発動した<マシン・デベロッパー>の効果によって、さらに攻撃力が200上昇している」
「…………」
 <邪神アバター>を失った砂神からは、それまでの覇気が消え失せている。
 うつむき、黙って輝王の説明に耳を傾けているだけだ。――本当に聞いているのかどうかは怪しいところだが。
「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移行。俺はレベル4の<ガラドホルグ>にレベル1の<レゾナンス・クリエイター>をチューニングだ」
 役目を終えた<AOJガラドホルグ>の体に、光の玉となった<AOJレゾナンス・クリエイター>が入っていき、緑色のリングが機械兵の周囲に出現する。
「正義の軍団よ。眼前に立ちふさがる敵に、裁きの鉄槌を下せ――シンクロ召喚。粉砕せよ、<AOJカタストル>」
 リングの中心を光が駆け抜けると、白金の装甲を持つ四足歩行の兵器が姿を現した。

<A・O・J カタストル>
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 <AOJカタストル>――輝王の使う<AOJ>の中でも、特に強力な効果を持ったモンスターだ。<ハードアームドラゴン>をリリースして召喚された<邪神アバター>に対しては無力だったが、これから出てくるであろう後続のモンスターには大きな抑止力となるはずだ。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド」
 輝王がターン終了を宣言すると――砂神の肩がピクリと震えた。
「ふふ……ふふふふふ……」
 顔を上げないまま、不気味な笑い声を漏らしている。
「……『僕』は、エンドフェイズに<終焉の焔>を発動。黒焔トークンを2体守備表示で特殊召喚します」

<終焉の焔>
速攻魔法
このカードを発動するターン、
自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に「黒焔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは闇属性モンスター以外のアドバンス召喚のためにはリリースできない。

 砂神のリバースカードがオープンし、揺らめく黒い炎を纏ったトークンが、2体現れる。
「わずか1ターンで<邪神アバター>を倒すとは……僕の認識が甘かったようです。謝りますよ、貴方たちを『前菜』扱いしたことを。特に、輝王さん……貴方は強い。『メインディッシュ』として扱ってもいいくらいに」
 今までのような傲岸不遜さは消え、落ち着いた声で言葉を紡ぐ青年。
(……人格が変わった?)
 まるで別人になってしまったかのような、態度の豹変。
 デュエルが始まってから常に放たれていた荒々しい圧迫感が消える。そのせいなのか、夜の砂漠に吹く風も、凪のように穏やかだ。
「あいつ……もしかして二重人格なのか?」
「二重人格って、もう1人の自分がいるとか言うあれか? どこのデュエルチャンピオンだよ……」
 治輝が発した疑問に、創志が呻く。おそらく、治輝の推測は正しい。<邪神アバター>を倒したことによって、もう1つの人格が表に出てきたのだろう。
「貴方の強さを認めた上で、あえて言いましょうか」
 砂神が顔を上げると、心臓を握りつぶされてしまいそうな圧迫感を覚える。
 方向性は違えど、纏うプレッシャーの強さは同じだ。
 薄く笑った砂神は、両手を広げ、まるで天に祈りを捧げる信者のように、告げる。

「――僕の方が強い」


【砂神LP6000】 手札5枚
場:黒焔トークン2体(守備)、冥界の宝札
【輝王LP3000】 手札1枚
場:AOJカタストル(攻撃)、機甲部隊の最前線、エレメントチェンジ(光指定)、伏せ2枚
【治輝LP4000】 手札6枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【創志LP4000】 手札2枚
場:A・ジェネクストライフォース(攻撃)、裏守備モンスター、マシン・デベロッパー(カウンター4)


 <邪神アバター>の脅威は去った。
 それなのに、まとわりつく得体の知れない不安が濃くなっているのを、治輝は感じていた。
 <終焉の焔>によって呼び出されたトークンは2体。容易に上級モンスターを呼び出すことができる状況だ。
(――やれるか?)
 最初のターンで大幅な手札の交換を行った治輝だが、パーツは揃っているものの、肝心のキーカードが不足している。このまま守りを固めるべきか、リスクを冒してでも動くべきか……
「僕のターン、ドロー」
 考えがまとまらないうちに、砂神が動いた。
「墓地の<馬頭鬼>の効果を発動します。自身を除外することによって、墓地からアンデット族モンスター……<ピラミッド・タートル>を特殊召喚します」

<馬頭鬼>
効果モンスター(制限カード)
星4/地属性/アンデット族/攻1700/守 800
自分のメインフェイズ時、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する。

<ピラミッド・タートル>
効果モンスター
星4/地属性/アンデット族/攻1200/守1400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 現れたのは、甲羅の代わりにピラミッドを背負った亀だ。砂神の立つピラミッドと自分のそれを見比べてから、不服そうに首を引っ込める。随分愛嬌のある動作だと治輝は一瞬だけ和むが、すぐに気を引き締め直す。
 <馬頭鬼>と<ピラミッド・タートル>は、<邪神アバター>召喚の際にリリースされたのだろう。
 砂神の場には、前のターンと同じ、3体のモンスターが並んでいる。
 贄は、揃ったということだ。
「邪神は<アバター>だけではありません。見せてあげましょう。第二の邪神を――トークン2体と<ピラミッド・タートル>をリリース」
 2体の黒焔トークンと<ピラミッド・タートル>が、突如地面から出現した大きな手に握りつぶされる。
 3体の魂が地面へと溶け、腕の主であるモンスターが、徐々にその姿を顕わにする。
 骨の鎧に覆われた、悪魔の肉体。
 広がった黒の翼が、星の光を遮る。
 どこかで雷鳴が轟き、山羊の頭蓋を兜にした邪神の瞳が、鈍く光る。
 無意識のうちに、カードを持つ左手が震えていた。
 <邪神アバター>の召喚のときにも感じた、理性では抑え込むことのできない、根源的な恐怖。
 そう。邪神とは、人が抱く様々な恐怖の具現だ。
 <邪神アバター>は、己の醜さや愚かさから生まれる恐怖の形。
 そして――

「貴方たちは強い。けれど、僕の前ではどうしようもなく非力だ。それを実感して下さい――現界せよ、<邪神ドレッド・ルート>!!」

 <邪神ドレッド・ルート>は、強者を前にして、従うしかない無力さから生まれる恐怖の具現だ。
 新たなる邪神が、治輝たちの前に立ちふさがる。