にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-08】

「神を殺す、だと? 面白い……やってみるといい」
「言われるまでもない。俺のターン、ドロー」
 砂神には、未だ<邪神アバター>を攻略することなど出来はしないという慢心があるはずだ。その隙を突かせてもらう。
 すでに――神を殺すカードは手中にあるのだから。
「――<AOJブラインド・サッカー>を召喚」
 輝王が呼びだしたのは、球体型のボディに、蜘蛛のような6本の足が装着された機械族モンスターだ。両の掌には赤黒い光を放つ吸盤があり、背中にはスピーカーにも似たビーム砲を背負っている。

<A・O・J ブラインド・サッカー>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守1200

「……何を考えている。輝王正義」
 砂神が訝しげな視線を向ける。まだ輝王の狙いに気付いていないようだ。
「そうか――そのモンスターなら!」
 代わりに、創志が顔を輝かせて指を鳴らす。
 そう。
 この<AOJブラインド・サッカー>なら、<邪神アバター>を「殺す」ことができる。
「バトルフェイズだ。<AOJブラインド・サッカー>で<邪神アバター>を攻撃!」
 背部のビーム砲が反転し、砲口から光の屑がまき散らされる。
 それによって得た推進力で、<AOJブラインド・サッカー>は、闇の塊である<邪神アバター>に向けて、飛ぶ。
「馬鹿が……塵にしろ、<アバター>! カオス・トライ・バスター!!」
 瞬時に砲撃ユニットを構えた<邪神アバター>が、混沌の奔流を撃ち放つ。
 <AOJブラインド・サッカー>が、その奔流に呑まれる。
「消し飛べ!」
「…………ッ!!」
 下半身が吹き飛ぶ。
 バイザーにヒビが入り、右半分が割れて内部が露出する。
 左手がもぎ取られ、そこから小規模な爆発が起こる。
 それでも。
 <AOJブラインド・サッカー>は止まらない。
「まだだッ……!」
 やがて、<邪神アバター>の放った奔流は輝王自身をも呑みこむ。
「輝王!」
 体中を針で刺されているような鋭い痛みと、まるで巨大な拳に握りつぶされているような圧迫感。2つの苦痛が、同時に輝王を襲う。
 <術式>での防御がなかったら、この程度では済まなかっただろう。それだけ砂神のサイコパワーが強力だということだ。
(まだだッ……!)
 輝王は、ボロボロになりながら進む<AOJブラインド・サッカー>の背中から、目を離さない。
 あと少し。
 あと少しで届く――
 ブースターとして使用していたビーム砲が、二門同時に折れ曲がり、砕ける。
 <AOJブラインド・サッカー>の体が押し戻される直前。
 その刹那に、右の掌が<邪神アバター>の体に触れた。
「ぐっ……!」
 <AOJブラインド・サッカー>が爆散し、散り散りになったパーツが弾け飛ぶ。
 破片の一つが輝王の頬を掠め、わずかに血が流れる。

【輝王LP4000→3000】

 <マシン・デベロッパー>によって<AOJブラインド・サッカー>の攻撃力は200ポイントアップしていたため、発生したダメージは1000ポイントだ。
「どうした? 神を殺すのではなかったのか? 自殺志願者の世迷言に付き合ってやるほど、俺様は心の広い人間では――」
 そこで、砂神の言葉は止まった。
 気付いたのだ。<邪神アバター>の異変に。
 邪神は、新たに攻撃力の高いモンスターが出てきたわけでもないのに、その姿を歪ませている。
 もがき苦しむように激しくうねった挙句――
 闇の塊は元の球体へと姿を変えた。
「何故だ……どうして<邪神アバター>の姿が元に戻っている!?」
 この事態には、さすがの砂神も動揺を顕わにする。ギリ、と歯ぎしりし、敵意を剥き出しにして輝王を睨みつけてくる。
「……<AOJブラインド・サッカー>と戦闘を行った光属性モンスターは、効果が無効になる。それは邪神であっても例外ではない」

<A・O・J ブラインド・サッカー>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守1200
このカードと戦闘を行った光属性モンスターの効果は無効化される。

「――貴様は、このために<エレメントチェンジ>を!」
 幻想の神は、死んだ。
 光の幻想を砕く右手によって。
 <AOJブラインド・サッカー>の効果によって<邪神アバター>の効果は無効となり、攻守の数値は0となる。
「……俺は、純粋な強さを求められるデュエリストに、確固たる自分の強さを持ったデュエリストに憧れていた。ここに来るまでは、自分の矛先をどこに向けたらいいのか……迷っていたからな」
 砂神の殺気を正面から受けとめ、輝王は語る。
 その脳裏には、己の力を信じ、決して揺るがなかったデュエリストが浮かんでいる。
 自分は、彼らの代わりにこの舞台に立っている。
 なら。
「力を求めるという点では、お前も同じだな。砂神緑雨」
 彼らの代わりに、否定しなければならない。

「だが……他人から奪った力など、自分の強さになりはしない」

 他のモンスターの力を真似ることによって、最強となる<邪神アバター>。
 言いかえれば、真似るべき相手が存在しなければ――ただの球体でしかないということだ。
 永洞戒斗は違う。
 高良火乃は違う。
 輝王が信じる力とは、いかなる状況であっても「自分」を貫き通せる強さだ。
「<ブラインド・サッカー>が戦闘破壊されたことによって<機甲部隊の最前線>の効果発動。デッキから<AOJレゾナンス・クリエイター>を守備表示で特殊召喚する」

<A・O・J レゾナンス・クリエイター>
チューナー(効果モンスター)(オリジナルカード)
星1/闇属性/機械族/攻300/守500
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に「A・O・J」と名のついたモンスターが2体以上存在しているとき、
手札から特殊召喚できる。

 いつか自分も彼らの立つ場所に辿りつくために――
「お前は言ったな。自分たちの立場を自覚しろ、と」
 輝王はゆっくりと息を吐き、言葉を選ぶようにしながら、告げる。
「その言葉を返すぞ、砂神。お前はただ力を奪うだけの卑しい略奪者だ」
 「芯」を持たない偽りの神に、屈するわけにはいかない。
「<ガラドホルグ>!」
 輝王がその名を叫ぶと、光の刃を構えた機械兵は待ちくたびれたと言わんばかりに跳躍する。
 背部のスラスターが稼動し、風が生まれる。
 一気に加速した<AOJガラドホルグ>は、アイレンズに紫の光を灯し、球体となった<邪神アバター>に肉薄する。
「――貴様ァ!! この俺様を愚弄するか!」
 両目を限界まで見開き、こめかみにいくつもの青筋を浮かべた砂神が、吠える。
 だが、敵を目前にしても、邪神は動かない。動けない。
 すでに、その力は死んでいるのだから。
「――受けてもらおう。プラズマソード・ツヴァイ!」
 光の刃が、闇の塊を斬る。
 十字に切り裂かれた<邪神アバター>は、球体の形すら維持できなくなり、まるで砂時計の砂が落ちるように粉となって消えた。

【砂神LP8000→6000】