にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 氷点下の結び目-7

「わたしのターン――ドロー!」
 何故、ティトが<氷結界>のデッキを使うようになったのかは分からない。
 けれど、自分はこのデッキを信じている。それは確かだ。
 誰かが言っていた。信じれば、必ずデッキは応えてくれると。
「――<虎将の執念>を発動! 墓地の<氷結界の虎将グルナード>と<氷結界の武士>をゲームから除外することで、デッキから3枚のカードをドローする!」

<虎将の執念>
通常魔法(オリジナルカード)
自分の手札の枚数が、相手の手札の枚数よりも少ないときに発動できる。
自分の墓地に存在する「氷結界の虎将」と名のついたモンスター1体と、
「氷結界」と名のついたレベル4以下のモンスター1体をゲームから除外する。
その後、自分のデッキからカードを3枚ドローする。
このカードを発動したターン、自分は魔法・罠を発動することはできない。

「なっ!? そんなカードが……?」
「ただし、このターンわたしは魔法・罠を発動することはできない」
 3枚のドローに比べれば、魔法・罠カードの発動不可など軽すぎるリスクだ。
 一気に手札が補充され、目の前にいくつもの選択肢が広がっていく。
 その中で、勝利へと繋がる道はひとつ。
「わたしは<氷結界の翼竜>を召喚!」
 銀髪の少女が呼びだしたのは、鮮やかな水色の双翼を羽ばたかせる、灰色の瞳のワイバーンだ。

<氷結界の翼竜>
効果モンスター(オリジナルカード)
星4/水属性/ドラゴン族/攻1800/守1000
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する攻撃力500以下の「氷結界」と名のついたモンスター1体を
特殊召喚することができる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
このカードをシンクロ素材とする場合、
水属性モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

「<翼竜>が召喚に成功した時、墓地の攻撃力500以下の<氷結界>モンスター1体を特殊召喚できる。おいで、<氷結界の守護陣>!」
 ワイバーンの鳴き声に導かれて現れたのは、煌びやかな装具を身につけた狐のようなモンスター。<氷結界の守護陣>――レベル3のチューナーモンスターだ。<手札断殺>の効果で、<氷結界の虎将グルナード>と共に墓地に送っておいたのだ。

<氷結界の守護陣>
チューナー(効果モンスター)
星3/水属性/水族/攻 200/守1600
自分フィールド上にこのカード以外の
「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する限り、
このカードの守備力以上の攻撃力を持つ
相手モンスターは攻撃宣言をする事ができない。

「レベル4の<翼竜>に、レベル3の<守護陣>をチューニング――」
 2体のモンスターが光に包まれると、ティトの背後に巨大な氷山が出現する。
「――全てを貫く絶氷の槍」
 氷山に2つの光が吸いこまれ、内側から亀裂が走る。
 その中心には、鮮烈に輝く紅の光がある。

シンクロ召喚! 輝け……<氷結界の龍グングニール>!」

 咆哮が響き渡る。
 氷山が砕け散り、それは1つの像を為す。
 龍。
 紅の光を内側から輝かせる、氷の龍。
 ティトのエースモンスターだった。


<氷結界の龍グングニール>
シンクロ・効果モンスター
星7/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
手札を2枚まで墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールド上に存在する
カードを選択して発動する。選択したカードを破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。


◆◆◆

 <氷結界の龍グングニール>。
 氷の龍の美しさと存在感に、ビビアンはただただ圧倒されていた。
 このデュエルが始まってから初めて、ビビアンは自分と同じ「氷使い」のデュエリストを相手にしているのだと実感した。
 <氷結界の虎将グルナード>も十分強力なモンスターだったが……この龍は格が違う。ビビアンはその事実を肌で感じていた。
 ひゅう、とフィールドに寒風が吹き抜ける。
 いや、実際は普通の風が吹いただけなのだが、<氷結界の龍グングニール>の存在が、「その風は冷たい」と錯覚させたのだ。
 次の瞬間、ガラスの棒を打ち合わせたような音が響き渡る。
「え――?」
 見れば、いつの間にか<氷帝メビウス>と<コールド・エンチャンター>の体が、鋭く尖った氷柱に貫かれていた。
タービュランス……<グングニール>の効果だよ。手札を2枚まで捨てることで、フィールド上のカードを捨てた枚数だけ破壊できる」
 ポツリと呟くように、ティトが効果の説明をする。
(しまった……ブラフでもいいから、カードを伏せておくべきでしたわ)
 ビビアンは己のプレイングミスを悔やむ。現在ビビアンの手札に速攻魔法や罠カードは無いが、1枚でもカードをセットしておけば、それを警戒したティトが<氷結界の龍グングニール>の効果で伏せカードの方を破壊してきたかもしれない。
 自分の優位を驕った、明らかなミスだった。
「バトル。<グングニール>でダイレクトアタック……フリージング・ランサー」
 龍の体の中心を走る紅の光が輝きを増し、それとは対照的な蒼の光が龍の口へと収束していく。
 そして、その光が槍のように放たれる。
「きゃ……!」
 立体映像だと分かっていても、思わず悲鳴を上げてしまうほどの覇気を秘めた攻撃。

【ビビアンLP4000→1500】

 ビビアンにとってはこれが初ダメージだったが、一気に逆転されたような感覚があった。
(心で負けてはダメ……私の優位はまだ変わりませんわ!)
 ビビアンは自らを奮い立たせる。
 「氷帝」――彼のプレイングに魅せられ、少女はデュエリストになろうと決めた。
 彼のように美しく、彼のように華麗に、彼のように強くなりたいと願った。
 そのために、今まで人一倍努力してきたのだ。
 友達と遊ぶ暇もない位に。
 それに、このデュエルは自分から申し込んだ決闘だ。負けることなど絶対に許されない。
「わたしはカードを1枚伏せて、ターンエンド」
 勝つ。
 敗北に意味などないのだから。

【ビビアンLP1500】 手札4枚
場:なし
【ティトLP500】 手札0枚
場:氷結界の龍グングニール(攻撃)、伏せ1枚