にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 2-2

「……それで? あんたたちはどうなの? どうして光坂の情報を知りたがってたわけ?」
 自分の話はこれで終わりと言わんばかりに、紫音は朧に視線を向けながら問う。
 朧はちらりとフェイの様子を窺ってから、口を開いた。
「――お前の言う『大切なもの』なのが何かは知らないが、俺たちも光坂に大切なものを盗られたんだよ。<ヴァイロン>デッキに入っていたカード数枚だ。そいつを取り戻さない限り、俺のデッキは歯抜け状態のままなんだよ」
 朧は左腕に装着したデュエルディスクに触れる。確かに、さっきのデュエルではカードが足りないようなことを言っていた。
「へえ。あの光坂がねえ……」
「光坂のやつは自分の足跡を消すことがとんでもなく上手くてな……散々探し回ってようやく見つけた手がかりがお前なんだ」
「あたしと光坂が接触してることは知ってたんでしょ? どうしてアルカディアムーブメントの本社ビル跡を調べようとしなかったの?」
「調べたさ。フェイと2人で出来る限りの場所をな。だが、光坂の姿はおろかそこにいた痕跡さえ見つけられなかった。だから光坂を探すことを諦め、お前から情報を聞き出すことにしたんだ」
「ふうん……」
 朧の話を聞いた紫音は、眉根を寄せて首をひねる。納得のいかない様子だ。どうやら、朧と紫音では光坂という人物に対する印象が随分違うらしい。
「期待を裏切るようで悪いけど、あたしも光坂についてはあんまりよく知らないの。さっき言った情報屋から紹介してもらって、サイコパワーの制御方法を教わっただけ。あいつが過去に何をしていたかなんて知りたいとも思わなかったし」
「……本当か?」
「今さら嘘吐いてもしょうがないでしょ。信じる信じないはアンタの勝手だけど」
「そうか……安い挑発に乗ったのは失敗だったな。フェイの忠告を聞いておくべきだった……」
「安い挑発って何よそれ」
 紫音は身を乗り出して再び口論の構えに入るが、朧にその気はないようだ。深いため息を吐いて、がっくりとうなだれる。その顔には、濃い疲労の色が浮かんでいた。
「……えと。光坂を紹介してくれたっていう情報屋さんとコンタクトを取ることって可能ですか?」
 代わりに口を開いたのは、落ち着かない様子で視線を彷徨わせていたフェイだった。
 意外な人物の発言に、紫音は目を丸くしていたが、
「あいつもあいつで用心深いヤツだから、こちらからの呼び出しにはまず応じないわ。情報の交換なら電話やメールで事足りるしね。ただ――」
 スマートフォンをかざしながら、フェイに向かって告げる。
「重要な情報を伝えるときは、漏洩の危険を鑑みて直接コンタクトを取ってくるかもしれない。あくまであたしの予測だけど」
「そうですか」
 紫音の言葉を咀嚼するように何度も頷いたフェイは、うなだれる朧をじっと見つめる。
 朧はその視線に気づかないフリをしていたようだが、やがて大きなため息を吐くと、顔を上げた。
「1年以上探し回ってようやく見つけた手がかりだ……これ以上光坂の足取りを追っても、空振りに終わるのがオチだろうしな。こいつと行動を共にして、情報屋の接触を待った方がいい、って言いたいんだろう? フェイ」
 フェイはこくりと一度だけ頷く。その仕草は、小動物のようで可愛かった。
「あら。あたしと一緒にいるってことは、下僕としてこき使われることを了承した、ってことでいいのかな?」
 朧の発言に、紫音は目をキラキラと輝かせる。
「どうしてそうなる。……ま、『清浄の地』のメンバーを探すくらいなら手伝ってやろう。あんまり気乗りはしねえがな」
「代わりに、情報屋からの接触があった場合、あんたたちを立ち会わせる。ってことかしら? 交渉成立ね!」
 そう言ってソファから立ち上がった紫音は、自信に満ち溢れた笑顔を浮かべた。