にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 24

「さよなら、創志」
「さよなら、創志」
「さよなら、兄さん」
 暗闇の中、何度も繰り返される冷たい言葉。
 父親である、源治。
 母親である、めぐみ。
 弟である、信二。
 創志の目には、家族の背中しか映っていない。
 どんなに足を動かしても、その背中に追いつくことできなかった。
 前にも同じような光景を見たような気がする。
 ――俺は。
 最初のうちは「絶対に負けない」と燃えさかっていた闘志も、わき上がってくる後悔の念に押し潰されそうになっていた。
 光坂の狙い――創志の精神を砕き、戦う意志を消すことが目的であると分かっていても、耳に響く家族の声が罪悪感を膨らませる。
 この状態が続けば、間違いなく創志の心は闇に浸食され、二度と立ち上がることはできない。
 何とかしなければと思っても、具体的な解決方法が浮かばない。
「――俺は!」
 萎えかけた戦意を奮い立たせるため、創志は力一杯叫ぶ。
 すると、背中の向こう――暗闇の一点に、光が灯るのが見えた。
 創志はその光を注視する。
「――し」
 声が聞こえる。
 家族が発する別れの言葉ではない、別の声が。
 その声は、創志の耳に心地よい響きをもたらす。
 初めて聞いたのはつい最近だが、創志は声の主を知っていた。

「そうしっ!」

 瞬間、視界を覆っていた暗闇が取り払われていく。
 そうだ。
 俺はみんなのためにも、負けるわけにはいかない。
「聞こえたかよ……輝王!」
 創志は共に戦ってきたパートナーの名を呼ぶ。
「――ああ」
 返事はすぐに返ってきた。
「まだデュエルは終わっていない」
「諦めるもんかよッ!」











 <レアル・ジェネクス・ジエンド>の両手から吐き出されていた闇が止まり、再び手甲が装着される。
 闇が晴れたあと、そこにはうつぶせで倒れている創志と、片膝をついた輝王の姿があった。

【創志LP1400→400】

【輝王LP2800→1800】

 創志は両手を地面に押しつけると、徐々に体を起こしていく。
 隣では、両目を閉じたままの輝王が、静かに立ち上がっていた。
「……すごいね。あの攻撃を受けて、まだ立つのかい?」
 創志達の瞳が死んでいないことを確認したのだろう。光坂が、感嘆のため息を漏らす。
「……当たり前だ!」
「俺たちは、まだ負けていない」
 ふらつきながらも立ち上がった創志は、左腕に装着されたデュエルディスクを見る。
 デッキの枚数も、ライフも残されている。
 創志の信じるカードたちは、まだ十分に戦えるのだ。
「そうし……!」
「よく立ったぞ輝王!」
 創志たちを闇の淵から救ってくれた仲間たち――ティト、切、それにリソナを背負った神楽屋と、切の肩を借りているジェンスの姿が見えた。
「なら、君たちの足掻く様を見た後、正式なルールに則って勝つとしようか。カードを1枚セットして、ターンエンドだ」
 永遠に続くかと思われた光坂のターンが終了する。
 ここからが、最後の反撃だ。

【光坂LP800】 手札1枚
場:レアル・ジェネクス・ジエンド(攻撃・A・ジェネクストライフォース装備)、伏せ1枚
【創志LP400】 手札4枚
場:伏せ1枚
【レビンLP――】 手札0枚
デュエル続行不能
【輝王LP1800】 手札3枚
場:伏せ2枚